晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

『北国の帝王』 75点

2010-08-26 16:17:32 | 外国映画 1946~59

北国の帝王

1973年/アメリカ

単純明快な男と男の闘い

総合★★★★☆ 75

ストーリー ★★★★☆75点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★★☆75点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆75点

アクション映画の名匠、ロバート・アルドリッチ監督が得意とする男と男の意地のぶつかり合いを描いている。大恐慌時代オレゴン州でホーボーと呼ばれる浮浪者たちは移動手段はもっぱら無賃乗車。そのボスA・ナンバーワン(リー・マービン)は「北国の帝王」と呼ばれ一目おかれていた。19号車には無賃乗車を冷酷に排除する車掌シャック(アーネスト・ボーグナイン)がいた。ホーボーたちは帝王が無賃乗車をやり遂げるか?それともシャックが冷酷さを発揮して列車から振り落とすか?賭けを始める始末。
まさに単純明快な男と男の闘いである。これだけではいくら名優2人が死闘を繰り広げても1時間もかからないストーリー。ここで帝王の座を狙う若者シガレット(キース・キャラダイン)が絡んでくるが、硬骨漢R・アルドリッチはそれを枠に押し込め、妥協することなくクライマックスの2人の闘いへと持ってゆく。
大平原を疾走する蒸気機関車と20分のアクションを観るだけで興奮できるようなマニア向き映画である。観ているうちにR・アルドリッチは、岡本喜八監督を連想させA・ボーグナインは佐藤允を思わせた。


『マンデラの名もなき看守』 80点

2010-08-25 14:56:36 | (欧州・アジア他) 2000~09

マンデラの名もなき看守

2007年/フランス=ドイツ=ベルギー=南アフリカ

差別することの罪の大きさ

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆80点

「ペレ」「愛の風景」のベルギー監督ビレ・アウグストが、南アフリカの刑務官が書いた手記「さよならバファナ」をもとに、長年マンデラの看守を務めた刑務官の心の変遷を描いたヒューマンドラマ。「マンデラ・・・」は邦題である。
子供の頃コーサ人の幼馴染バファナと遊んでいたジェームズ・グレゴリー(ジョセフ・ファインズ)。長じて刑務官となって妻グロリア(ダイアン・クルーガー)と子供2人とともにロベン島に赴任。任務は黒人テロリスト、ネルソン・マンデラ(デニス・ヘイスバート)の看守となる。
歴史的に悪評高いアパルトヘイトが公然と南アの正義として行われていた時代、白人であるグレゴリー夫妻は差別する側にいたので、子供たちにも当然のように正義として教える。子供の純粋な目は不平等だと映ってしまう。さすが文部省推薦映画だ。
物語はマンデラに触れるたびにその大きさを感じるジェームズがヒトとして当然行うべき思いやりが仕事上離反行為となり、地域の白人コミュニティから疎外される皮肉な現象をエピソードを交えながら進んでゆく。
このあたりは事実がもとなので、ドラマチックな2人の交流があったというより、マンデラのいうアフリカ民族会議の「自由憲章」に感化されたジェームズの心の変遷ぶりが中心となる。
ジェームズ役のJ・ファインズは久しぶりの好演で、良識ある刑務官として<傍観者ではなく歴史の1ページを飾る証人役>を果たした誠実な人柄がにじみでていた。
マンデラ役のD・ヘイスバートは「24」の大統領役や「エデンより彼方に」の黒人庭師でおなじみだが、今回は背中で人柄を示すような受け身の演技。実際のマンデラはむしろ「インビクタス・負けざる者たち」のモーガン・フリーマンのほうがイメージに近い。
ジェームズの妻を演じたD・クルーガーは美容師で夫の出世と子供たちの幸せを願う極めて通俗的な女から、差別される立場になると夫を支え、息子を亡くしても毅然としたふるまいなどある意味ではこの作品のキイになっている。何よりも若くて美しいのでどうしても点が甘くなる。


『瞳の奥の秘密』 90点

2010-08-22 11:35:35 | (欧州・アジア他) 2000~09

瞳の奥の秘密

2009年/スペイン=アルゼンチン

ミステリー風味で、大人のラブ・ストーリー

総合★★★★☆ 90

ストーリー ★★★★☆90点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆90点

ビジュアル ★★★★☆90点

音楽 ★★★★☆85点

アルゼンチンの第1人者ファン・ホセ・カンパネラ監督の快心作。ブエノスアイレス裁判所の事務官ベンハミン(リカルド・ダリン)が、定年退職を機に25年前に起きた新妻惨殺事件を小説にすることを思いつく。愛するヒトを失う夫モラレス(パブロ・ラゴ)の無念さを思う気持ちに区切りをつけ、自分自身の再スタートを目指そうとする。それは長年封印していた自分の心の内を決着させるためでもあった。アカデミー最優秀外国語映画賞受賞作品らしく、ミステリー風味で大人の愛を真摯に取り組んだ味わい深い作品に仕上がっている。
物語はイザベル・ペロン大統領が就任した軍事独裁政権時の’74と00年を対比しながら進んでゆく。司法の独立が保障されていなかった国家における犯罪に対する怒り・憎悪を背景に、トキを経て熟成されたワインのような大人のラブストーリーが重なって見えてくる。
駅での別れのファースト・シーンは、あたかもヨーロッパ映画のラスト・シーンのよう。それが、ベンハミンとその上司・判事補のイレーネ(ソレダ・ビジャル)だと分かるのは、次のシーンで定年退職後ベンハミンが検事で2児の母になっている彼女と再会してから。事件を担当したベンハミンは、警察によって逮捕された2人の職人が拷問による自白だと知る。同僚パブロ(ギレルモ・ハンチェラ)の協力もあり容疑者を拘束するが、政権協力を条件に釈放となり、逆に命を狙われてしまう。
カンパネラ監督はひとの怒りや恐怖、情熱や悲哀をきめ細やかに描くかと思えば、サッカー場の上空からスタンドの人込みにいるベンハミン・パブロと容疑者の追跡劇を長回しで圧倒したり、映画ならでは魅力をちりばめて楽しませてくれる。25年の年齢差を同一人物が演ずるのは多少とも無理があるものだが、ヘヤー・メイクなども達者で不自然さは感じなかった。
主演のR・ダリンはアルゼンチンのトップ・スターらしく強さと脆さや学歴・身分のコンプレックスを秘めた男を巧みに表現。S・ビジャミルの目の表情で心の揺れを見事に演じていて素晴らしい。ユーモアセンスがあってちょっぴり哀しいアル中事務官パブロ役のG・フランチェラの巧みさが際立ってこの映画の深みを増しているように感じた。
<Aが出ないタイプライター>をイレーネがベンハミンにプレゼントする。ベンハミンはTEMO(怖い)という字にAを手書きしてTEAMO(愛している)に変えることができるのだろうか?


『暗黒街のふたり』 80点

2010-08-21 10:14:34 | 外国映画 1960~79

暗黒街のふたり

1973年/フランス イタリア

J・ギャバン、A・ドロン最後の共演

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆90点

演出 ★★★★☆85点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆80点

暗黒街に身を置き投獄経験があり、大統領恩赦で死刑を免れたという驚くべき経歴の監督・ジョゼ・ジョヴァンニのオリジナル。ジャン・ギャバンの遺作でしかもアラン・ドロンと3度目の共演でもある。
銀行強盗の首班として服役したジーノ(A・ドロン)は保護監察司ジェルマン(J・ギャバン)の尽力もあり2年早く仮出所した。更生した彼は幸せな生活を始めた矢先に、突然不幸が訪れる。
原題は「街のふたり」で、邦題は共演した前2作(「地下室のメロディ」「シシリアン」)2人のイメージを利用した興行上の理由だろう。
ストーリーは偏見による理不尽な運命に翻弄された前科者の社会復帰の難しさと、当時フランスの死刑制度と17世紀の遺物として残されるギロチンによる処刑制度への批判が込められている。したがって観終わってすっきりしないし、後味も良くない。それでもJ・ジョバンニはどうしても映画化したかったので大物俳優2人を口説いて実現した。その甲斐あって2人は最高の演技をしたと思う。
J・ギャバンは法の大切さを信じながらそれを超えた男らしい優しさと寛大さを持つふところの大きい保護司役をこなしている。もう少し長生きして映画界に足跡を残して欲しかった。A・ドロンは、幸せを掴もうと這い上がってあともう一歩というところで突き落とされるというはまり役。年齢的にも脂が乗り切っていて目の演技が冴えていた。ゴワトロー警部役のミシェル・ブーケの「犯罪者は必ず再犯を繰り返す」という信念の執拗さは、A・ドロンの女性ファンにとって許せない敵役。皮肉にも一般社会は警察官を庶民を守る正義の人と観るのが妥当であること。
日本でも始まった裁判員制度と死刑是非問題が、この作品を身近なテーマとして浮かび上がらせている。


『シシリアン(1969)』 80点

2010-08-18 10:53:10 | 外国映画 1960~79

シシリアン(1969)

1969年/フランス

アメリカの風を受けたフランス・ノワール

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆80点

ジャン・ギャバン、アラン・ドロン、リノ・バンチュラの3大スターの競演と聴いただけでファン心理をくすぐるフランス・フィルム・ノワール。
監督はアンリ・ヴェルヌイユ、撮影アンリ・ドカエ、音楽エンリオ・モリコーネ、脚本ジョゼ・ジョヴァンニとスタッフも豪華。
パリのマフィア・ビットリオ(J・ギャバン)は刑務所入りのサルテ(A・ドロン)を救ったお礼に宝石強奪のハナシを持ちかけられる。生まれ故郷のシシリー島を買い占めて余生を送るつもりの彼にとって最後の大仕事。サルテに逃げられたパリ警察のル・コブ警部(L・バンチュラ)は執拗にサルテを追う。
いかにも、フランス映画らしい設定だが、ジョゼ・ジョヴァンニの脚本が全体に活かされていない。これは20世紀FOXというアメリカ資本の影響をヴェルヌイユ監督が意識したせいかもしれない。
当時65歳のJ・ギャバンの貫録が目立ち、A・ドロンが単なるチンピラに見えてしまった。対するL・ヴァンチュラは渋さも加わり仕事一筋の警部で2人を喰うほどの好演。禁煙をしていたのに犯行を防げなかったとき思わずタバコを吸うシーンなど何気ないところがなかなかである。
サルテ(A・ドロン)が隠れている部屋の壁には「サムライ」で共演したヴァレリー役の黒人ピアニスト・カティ・ロジェのポスターが貼ってあったり、サルテ(A・ドロン)とビットリオ(J・ギャバン)ファミリーで唯一のフランス人である義娘のジャンヌ(イリーナ・デミック)の不倫がばれるキッカケとなったTVの映画がエルケ・ソマーの「甘い暴力」だったり、マニアが喜びそうなシーンもある。
ハイジャックで宝石を強奪するという奇想天外なストーリーも、40年後のいまではあながちあり得ないことではないのが不思議。
ラスト・シーンはフランス映画らしいシャレたエンディングでここだけは台詞を吟味して欲しい。


『フロム・ヘル』 75点

2010-08-08 15:38:44 | (米国) 2000~09 

フロム・ヘル

2001年/アメリカ

ヴィクトリア末期の時代背景を満喫できる

総合★★★★☆ 75

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★★☆75点

ビジュアル ★★★★☆75点

音楽 ★★★★☆75点

切り裂きジャック事件として歴史に残る娼婦連続殺人をアランムーア・作、アレンヒューズ・画でノベル化した原作をもとに、アルバートとアレン兄弟が監督。事件とは、5人の娼婦が殺され新聞で連日報道されたが迷宮入りしている実在の事件。
主演はジョニー・デップで、妻子を亡くした悲しみをアヘンで紛らわしながら予知能力と冷静な洞察力をもつ警部に扮している。時代はヴィクトリア末期の英国、繁栄を極めながら貧富の差が広がり社会的矛盾もあった頃で、映像から時代背景が滲み出ていた。
上流社会の秘密結社・フリー・メイソンにはアーサー・コナン・ドイルやエレファント・マン(ジョン・メリック)が登場し、近代科学技術と魔術が同居した社会であったことを教えてくれる。かたや「テン・ベルズ」バーは娼婦たちの溜まり場があり、ロンドン病院・簡易宿泊所・救貧院など貧しさの描写にはこと欠かない場所が沢山出てくる。
事件は誰が何のためにやったのかが最大の山場だが意外にあっさりと分かってしまう。ミステリー好きには物足りない。それよりこれが事実だったら英国王室最大のスキャンダル。
J・デップは憂いを秘めた眼差しで、娼婦メアリー(ヘザー・グラハム)とのラヴ・ロマンスも披露して女性ファンを魅了している。警部の部下ピーター巡査部長にロビー・コルトレーンが扮し、大きな体型と独特の風貌でいい味を出していた。


『ボローニャの夕暮れ』 80点

2010-08-07 14:37:59 | (欧州・アジア他) 2000~09

ボローニャの夕暮れ

2008年/イタリア

久々、イタリア映画らしい家族の物語

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆80点

イタリア映画の名匠プーピ・アヴァーティが、故郷ボローニャを舞台に、第2次世界大戦をはさんだ家族の物語を創りあげた。
美術教師のミケーレ(シルヴィオ・オルランド)は内気で劣等感に苛まれた娘ジョヴァンナ(アルバ・ロルヴァケル)を溺愛している。妻のデリア(フランチェスカ・ネリ)は、夫と娘を愛そうとしながらも上手くゆかず密かに隣人の警察官セルジオに想いを寄せている。一家の微妙なバランスはある事件が発端で思わぬ方向へ。想定外の結末はほっとするか唐突だと感じるか微妙である。
イタリア映画の伝統である偉大なマンマの家族愛ではなく、父親が娘を盲目的に愛するストーリーは珍しい。美しく闊達な妻に引け目を感じながら、純粋で精神的にアンバランスな娘を何処までも盲目的に守り抜こうとする。内面の葛藤をヒタ隠し、穏やかな表情で乗り越えようとする複雑な役柄が高評価を得てヴェネチア国際映画祭主演男優賞を受賞した。
娘のジョヴァンナを演じたA・ロルヴァケルは、実年齢より10歳以上下の多感な17歳を好演してイタリアのオスカーを獲るなど注目され、決して美形ではないがこれからの活躍が期待される。
母のF・ネリは、時代に翻弄されながら逞しく生き抜く女。その不可解な言動で評価は芳しくないが、筆者はリアルで最も人間らしい生き方に共感させられた。


『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』 75点

2010-08-05 13:01:43 | (米国) 2000~09 

スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師

2007年/アメリカ

バートン・デップの6度目コンビはスプラッター・ミュージカル

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総合★★★★☆ 75

ストーリー ★★★★☆75点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★☆☆70点

ビジュアル ★★★★☆75点

音楽 ★★★★☆75点

スティーヴン・ソンドハイムのミュージカルをティム・バートン、ジョニー・デップの名コンビで映画化。19世紀ロンドンで起きた猟奇殺人事件をもとにしたスプラッター・ムービー。
タイトル・バックのモノトーンに流れる赤い帯が血であることが分かるまでそれほど時間が掛からない。愛する妻を奪われ無実の罪で追放された理髪師ベンジャミン・バーカー(J・デップ)はスウィニー・トッドと名前を変え15年振りにロンドン・フリート街へ戻ってくる。目的は自分を無実の罪に陥れたターピン判事(アラン・リックマン)への復讐である。
ミュージカルなのでJ・デップをはじめ共演のヘレナ・ボナム=カーター、A・リックマンなど本格的な歌が披露されるが、本職の歌手とは違って語るような歌い方がかえってこのおどろおどろししたストーリーを和らげてくれる緩衝材となっている。
復讐の鬼と化す殺人鬼を演じたJ・デップは、デフォルメされた特殊メイクで強調されていて、手に持ったカミソリが光るたび背筋がぞくぞくする。
バートン夫人でもあるH・B=カーターも、同じようなメイクによってスウィートニーを一途に愛するあまり善悪の境を亡くしてしまう哀れな悪女を好演。怪しげなこのドラマをさらに盛り上げてくれる。
血を見るのが苦手なヒトにはお薦めできないが、ひとことで言うなら哀しい物語だった。


『ネバーランド』 80点

2010-08-03 11:13:30 | (米国) 2000~09 

ネバーランド

2004年/イギリス=アメリカ

ケレンミを抑えたジョニー・デップ

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆85点

「チョコレート」のマーク・フォースター監督がアラン・ニーの「ピーターパンだった男」をもとに劇作家ジェームズ・バリがピーターという少年との交流をもとに「ピーター・パン」を上演することになった経緯を描いたヒューマン・ドラマ。「ピーターパン」初演から100年目を記念して豪華キャストで映画化されている。
繊細で子供のようにイマジネーションゆたかなジェームズに、女性人気NO.1のジョニー・デップがケレン味を抑えて演じている。ピーターの母で4人の息子の未亡人シルヴィアにケイト・ウィンスレット。英国の正統派女優らしい品のある演技で、タイタニックからのイメージ脱却をようやく果たした。2人の悲恋物語を背景に父の死で信じることをせず、疑い深い病んだ心のピーター。徐々に心が打ち解けてゆくサマをフレディ・ハイモアが見事に演じ、名子役の名を欲しいままにした作品でもある。ほかにも妻のメアリーにラダ・ミッチェル、ピーターの祖母にジュリー・クリスティ、プロデューサー・チャールズにダスティ・ホフマンなど豪華な芸達者が顔を揃えている。
それぞれ見せ場はあるがあくまで脇役に域を超えない演技振りはベテランならではと感心する。ただR・ミッチェルは敵役なので可哀そうな役廻りとなってしまった。
ジェームズにシルヴィアとの交流が世間の噂になっていると伝えたのはアーサー・コナン・ドイル(イアン・ハート)。彼こそ「名探偵・シャーロック・ホームズ」の生みの親である。
上映時間100分は短いが無理に長くする必要はなく、美しい音楽と100年前の緑豊かな英国の風景とともにピーターパン誕生秘話を楽しむことができた。


『大誘拐 RAINBOW KIDS』 80点

2010-08-01 12:42:30 | 日本映画 1980~99(昭和55~平成11) 

大誘拐 RAINBOW KIDS

1991年/日本

痛快でシニカルな犯罪コメディ

プロフィール画像

shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆85点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆80点

’79日本推理作家協会賞を受賞した天藤真の原作を痛快アクション監督・岡本喜八が心血を注いだ晩年の作品。不良青年3人組・虹の童子が和歌山の山林王・柳川とし子を誘拐する事件を巡って、痛快でちょっぴりシニカルな犯罪コメディである。
何より犯人が根は善良な男達で、犯罪事件でありながら犠牲者が誰も出ないのがいい。誘拐されるのは稀代の老婆名女優、北林谷栄でこの年の主演女優賞を総なめにしている。対する捜査する警察の代表・井狩本部長に緒方拳。井狩はとし子に世話になり恩人として敬愛するひと。「獅子の風格、狐の抜け目なさ、そして何故かパンダの親しさを持つ」性格まで熟思している。この2人の関係が絶妙で、最後まで<ほど良い謎解き解明の興味>を持たせてくれる。5000万の身代金が100億となり廻りが振り回されるサマがこの物語の核心。100億は大金だが、戦闘機は2台しか買えないという、さりげない戦争批判。相続税は70億で国家権力批判でもある。
誘拐犯のリーダーは風間トオル。関西弁はたどたどしく達者とはいえないが、どこか人の良さそうないまどきの青年を演じている。3人組のおぼつかなさをカバーして余りあるベテランたち。樹木希林の存在感は特筆もの。ほかにも神山繁・天本英世・竜雷太・常田富士男・中谷一郎・嶋田久作・岸部一徳など一度観たら忘れられない個性派ばかり。おまけに山藤章二・景山民夫のカメオ出演があったりする。女優陣では水野久美・田村奈己などなつかしい顔ぶれ。監督・北林・緒方と故人となったいま改めて20年の歳月を感じるが、貴重な娯楽映画として猛暑を忘れ楽しめた。