晴れ、ときどき映画三昧

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『暗黒街のふたり』 80点

2010-08-21 10:14:34 | 外国映画 1960~79

暗黒街のふたり

1973年/フランス イタリア

J・ギャバン、A・ドロン最後の共演

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆90点

演出 ★★★★☆85点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆80点

暗黒街に身を置き投獄経験があり、大統領恩赦で死刑を免れたという驚くべき経歴の監督・ジョゼ・ジョヴァンニのオリジナル。ジャン・ギャバンの遺作でしかもアラン・ドロンと3度目の共演でもある。
銀行強盗の首班として服役したジーノ(A・ドロン)は保護監察司ジェルマン(J・ギャバン)の尽力もあり2年早く仮出所した。更生した彼は幸せな生活を始めた矢先に、突然不幸が訪れる。
原題は「街のふたり」で、邦題は共演した前2作(「地下室のメロディ」「シシリアン」)2人のイメージを利用した興行上の理由だろう。
ストーリーは偏見による理不尽な運命に翻弄された前科者の社会復帰の難しさと、当時フランスの死刑制度と17世紀の遺物として残されるギロチンによる処刑制度への批判が込められている。したがって観終わってすっきりしないし、後味も良くない。それでもJ・ジョバンニはどうしても映画化したかったので大物俳優2人を口説いて実現した。その甲斐あって2人は最高の演技をしたと思う。
J・ギャバンは法の大切さを信じながらそれを超えた男らしい優しさと寛大さを持つふところの大きい保護司役をこなしている。もう少し長生きして映画界に足跡を残して欲しかった。A・ドロンは、幸せを掴もうと這い上がってあともう一歩というところで突き落とされるというはまり役。年齢的にも脂が乗り切っていて目の演技が冴えていた。ゴワトロー警部役のミシェル・ブーケの「犯罪者は必ず再犯を繰り返す」という信念の執拗さは、A・ドロンの女性ファンにとって許せない敵役。皮肉にも一般社会は警察官を庶民を守る正義の人と観るのが妥当であること。
日本でも始まった裁判員制度と死刑是非問題が、この作品を身近なテーマとして浮かび上がらせている。