晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

『マンデラの名もなき看守』 80点

2010-08-25 14:56:36 | (欧州・アジア他) 2000~09

マンデラの名もなき看守

2007年/フランス=ドイツ=ベルギー=南アフリカ

差別することの罪の大きさ

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆80点

「ペレ」「愛の風景」のベルギー監督ビレ・アウグストが、南アフリカの刑務官が書いた手記「さよならバファナ」をもとに、長年マンデラの看守を務めた刑務官の心の変遷を描いたヒューマンドラマ。「マンデラ・・・」は邦題である。
子供の頃コーサ人の幼馴染バファナと遊んでいたジェームズ・グレゴリー(ジョセフ・ファインズ)。長じて刑務官となって妻グロリア(ダイアン・クルーガー)と子供2人とともにロベン島に赴任。任務は黒人テロリスト、ネルソン・マンデラ(デニス・ヘイスバート)の看守となる。
歴史的に悪評高いアパルトヘイトが公然と南アの正義として行われていた時代、白人であるグレゴリー夫妻は差別する側にいたので、子供たちにも当然のように正義として教える。子供の純粋な目は不平等だと映ってしまう。さすが文部省推薦映画だ。
物語はマンデラに触れるたびにその大きさを感じるジェームズがヒトとして当然行うべき思いやりが仕事上離反行為となり、地域の白人コミュニティから疎外される皮肉な現象をエピソードを交えながら進んでゆく。
このあたりは事実がもとなので、ドラマチックな2人の交流があったというより、マンデラのいうアフリカ民族会議の「自由憲章」に感化されたジェームズの心の変遷ぶりが中心となる。
ジェームズ役のJ・ファインズは久しぶりの好演で、良識ある刑務官として<傍観者ではなく歴史の1ページを飾る証人役>を果たした誠実な人柄がにじみでていた。
マンデラ役のD・ヘイスバートは「24」の大統領役や「エデンより彼方に」の黒人庭師でおなじみだが、今回は背中で人柄を示すような受け身の演技。実際のマンデラはむしろ「インビクタス・負けざる者たち」のモーガン・フリーマンのほうがイメージに近い。
ジェームズの妻を演じたD・クルーガーは美容師で夫の出世と子供たちの幸せを願う極めて通俗的な女から、差別される立場になると夫を支え、息子を亡くしても毅然としたふるまいなどある意味ではこの作品のキイになっている。何よりも若くて美しいのでどうしても点が甘くなる。