晴れ、ときどき映画三昧

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『瞳の奥の秘密』 90点

2010-08-22 11:35:35 | (欧州・アジア他) 2000~09

瞳の奥の秘密

2009年/スペイン=アルゼンチン

ミステリー風味で、大人のラブ・ストーリー

総合★★★★☆ 90

ストーリー ★★★★☆90点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆90点

ビジュアル ★★★★☆90点

音楽 ★★★★☆85点

アルゼンチンの第1人者ファン・ホセ・カンパネラ監督の快心作。ブエノスアイレス裁判所の事務官ベンハミン(リカルド・ダリン)が、定年退職を機に25年前に起きた新妻惨殺事件を小説にすることを思いつく。愛するヒトを失う夫モラレス(パブロ・ラゴ)の無念さを思う気持ちに区切りをつけ、自分自身の再スタートを目指そうとする。それは長年封印していた自分の心の内を決着させるためでもあった。アカデミー最優秀外国語映画賞受賞作品らしく、ミステリー風味で大人の愛を真摯に取り組んだ味わい深い作品に仕上がっている。
物語はイザベル・ペロン大統領が就任した軍事独裁政権時の’74と00年を対比しながら進んでゆく。司法の独立が保障されていなかった国家における犯罪に対する怒り・憎悪を背景に、トキを経て熟成されたワインのような大人のラブストーリーが重なって見えてくる。
駅での別れのファースト・シーンは、あたかもヨーロッパ映画のラスト・シーンのよう。それが、ベンハミンとその上司・判事補のイレーネ(ソレダ・ビジャル)だと分かるのは、次のシーンで定年退職後ベンハミンが検事で2児の母になっている彼女と再会してから。事件を担当したベンハミンは、警察によって逮捕された2人の職人が拷問による自白だと知る。同僚パブロ(ギレルモ・ハンチェラ)の協力もあり容疑者を拘束するが、政権協力を条件に釈放となり、逆に命を狙われてしまう。
カンパネラ監督はひとの怒りや恐怖、情熱や悲哀をきめ細やかに描くかと思えば、サッカー場の上空からスタンドの人込みにいるベンハミン・パブロと容疑者の追跡劇を長回しで圧倒したり、映画ならでは魅力をちりばめて楽しませてくれる。25年の年齢差を同一人物が演ずるのは多少とも無理があるものだが、ヘヤー・メイクなども達者で不自然さは感じなかった。
主演のR・ダリンはアルゼンチンのトップ・スターらしく強さと脆さや学歴・身分のコンプレックスを秘めた男を巧みに表現。S・ビジャミルの目の表情で心の揺れを見事に演じていて素晴らしい。ユーモアセンスがあってちょっぴり哀しいアル中事務官パブロ役のG・フランチェラの巧みさが際立ってこの映画の深みを増しているように感じた。
<Aが出ないタイプライター>をイレーネがベンハミンにプレゼントする。ベンハミンはTEMO(怖い)という字にAを手書きしてTEAMO(愛している)に変えることができるのだろうか?



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