ポセイドン・アドベンチャー(1972)
1972年/アメリカ
パニックに陥った人間の心情を的確に表現した元祖パニックムービー
shinakamさん
男性
総合
80点
ストーリー
85点
キャスト
80点
演出
80点
ビジュアル
80点
音楽
80点
ポール・ギャリコの原作をロナルド・ニーム監督、ジーン・ハックマン主演で映画化したパニックムービーの傑作。低予算(500万ドル)ながら同年封切りの「ゴッド・ファーザー」なみの大ヒットとなり、2年後の大作「タワーリング・インフェルノ」に繋がった。NYからアテネに向かう豪華客船ポセイドンが巨大津波に遭って転覆、パニック状態のなか脱出を試みる牧師たち10人の友情と愛の再発見ストーリー。
アカデミー特撮賞、挿入歌(モーリス・マクバガンの「モーニング・アフター」)歌曲賞を受賞しているが、最大の成功要因はスターリング・シリファント、ウェンデル・メイズの脚本だろう。運命共同体となった10人のキャラクターを見事に織り込みながら、どのような行動をとったかが、臨場感をもって観客に迫ってくる。パニック映画の元祖と言われる由縁だろう。
リーダーのスコット(G・ハックマン)は牧師だが、<神の言葉より、自らの運命を切り開く>という信念の持ち主。アメリカ人らしい個人の意思を尊重する精神を大切にする思想に合致している。船に残った老牧師(アーサー・オコンネル)の「君の考えは強いものの考え方だ。信仰は弱い者を救わなければならない」という言動は結果的に裏目となった。東北大震災での津波災害に遭った今、とても考えさせられる設定だ。
文句ばかり言っていたマイク・ロゴ警部(アーネット・ボーグナイン)も特異なキャラクター。若い妻・リンダ(ステラ・スティーヴンス)は元売春婦で熱愛の末結婚したという変わり種だが、ここで夫婦愛を再確認。もうひと組の夫婦はローゼン夫妻で孫に会うための旅だった。ローゼン夫人(シェリー・ウィンタース)は元水泳選手で、潜水してスコットの危機を救い自分は犠牲となる。この映画のハイライトのひとつだが、最初はローゼン夫人が先に潜水しスコットを助けるという設定だった。G・ハックマンの提案で入れ替えたのが見事にハマって、S・ウィンタースの名演を引き立てている。ちなみに彼女は「陽のあたる場所」で溺死、「狩人の旅」で湖底での死など水難の相があった。
ほかにも中年独身男で雑貨商のジェームス(レッド・バトンズ)と足手まといの歌手ノニー(キャロル・リンレイ)のロマンス、17歳のスーザン・10歳のロビンの姉弟愛もあって、決死のサバイバルは緊張連続の目が放せない117分だった。
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