晴れ、ときどき映画三昧

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「終電車」(80・仏)80点

2020-03-07 13:52:46 | (欧州・アジア他)1980~99 

・C・ドヌーヴの美しさが際立つトリュフォー最大のヒット作。
 ゴダールと並んでヌーヴェルヴァーグを代表するフランソワ・トリュフォー監督晩年の作。
ナチ占領下のパリで、モンマルトル劇場の支配人・演出家の夫に代わって劇場を守る妻の女優マリオンを巡る物語。主演はカトリーヌ・ドヌーヴ、若い俳優ベルナールにジェラール・ドパルデュー、夫ルカはハインツ・ベンネントが扮している。
 題名は夜間外出を禁止され地下鉄の終電車に殺到する混乱の時代を象徴した邦題で、ヒロインを巡る三角関係を描きながらも「逢びき」(45)のリメイクでデシーカ監督の「終着駅」(53)を連想させるような切ないメロ・ドラマとは一線を画している。筆者は、夫がベルナールとの初対面で「妻は君に夢中だ」という台詞を聴くまで女好きのベルナールの片想いだと思っていたほど。
 トリュフォーはかつての愛人・ドヌーヴの美しさを引き出すことはお手のモンで、髪型や真っ赤な口紅やマニキュアと脚線美は勿論、彼女にとってその多面性が抑制された表情とともに<元祖クールビューティ>に相応しい歴代最高の演技となった。
 マリオンは実在人物ではないが、ユダヤ人だったため地下に隠れていたルカ、単なる女好きではなかったまだスマートだったドパルデュー扮するベルナール、親独派演劇評論家ダグシア役のジャン=ルイ・リシャールのリアルな人物像もモデルがいたようだ。
 オープニングでの「サンジャンの私の恋人」はじめ「素敵なあなた」など随所に流れるシャンソンが時代を感じさせ、当時のパリの雰囲気が醸し出されていたのもこのドラマに相応しい。
 なによりオシャレだなと感じたのはマドンナを中心にルカとマドレーヌが手を繋いだ幕切れは如何にもトリュフォーらしい。エンディングに流れるキャスティング紹介は、フランス映画の伝統を引き継いだ役柄映像によるものでファンにはとても嬉しい手法だ。




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