晴れ、ときどき映画三昧

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「拳銃王」(50・米)80点

2020-09-10 15:48:01 | 外国映画 1946~59


 ・ 西部劇へ新風を送ったH・キング監督G・ペック主演によるリンゴ伝説。


 伝説の早撃ちガンマン、ジョニー・リンゴをモデルにグレゴリー・ペックが主演した西部劇。監督は「頭上の敵機」(49)でコンビを組んだヘンリー・キング。

 35歳になったジミー・リンゴは穏やかな生活を送りたいと妻と息子のいるカイエンへ戻ってくる。途中酒場で絡んできた若者エディ(リチャード・ジャッケル)をやむなく倒したため、三兄弟に追われる身となっていた。
 町は早撃ちガンマンを観ようと子供たちが酒場を取り囲み、婦人会は保安官に町を出て行くよう陳情にくるなど騒然とする。
 悪評が一人歩きする伝説のガンマンの平穏な暮らしを願う苦悩を描いた西部劇は、G・ペックのイメージと相俟ってガンマンの決闘シーンが最大の見せ場という従来作品とは違って、男の孤独に苦悩する姿を描いている。

「駅馬車」(39)で若きリンゴを演じていてたジョン・ウェインが出演を望んでいたが実現しなかった。G・ペックが演じることで、見かけは強そうに見えないどこにでもいそうな男が早撃ちガンマンであるというギャップが本作の魅力となった。
 無法者には見えない悪役は似合わない良い意味で彼の大根役者ぶりが効を通した感じで「35歳で時計を持ていない」流れ者の哀しみが伝わってくる。

 キング演出は当時の西部はこんな感じだったのでは?と思わせるリアルな描写で観客を惹き込んで行く。

 共演者には元ワル仲間で保安官マークを演じたミラード・ミッチェル、昔なじみの酒場の主人マックにカール・マルデンが扮し、それぞれ個性溢れる名脇役ぶりを発揮している。
 女優陣では今は学校の教師となっている元妻のヘレン・ウェスコットが無難な演技、戦前のスターであるジーン・パーカーが酒場の歌手で出演して話題を呼んだ。

 ジミーは酒場で出会ったある農夫が嬉しいことがあったので女房に断って一杯だけ飲んで行くという日常に憧れたが流れ者のガンマンにはナイモノネダリだった。
 銃による撃ち合いは冒頭だけという斬新な西部劇はラストシーンも異色で、後ろ姿のガンマンは町のチンピラ、ハントだった。評論家川本三郎はリンゴでは?という新設を説いて西部劇ファンが論議する事態となったが、うがち過ぎでは?
 
 主人公と時間の絡みがハラハラ・ドキドキさせる「真昼の決闘」(52)同様、緊迫感を味わえる西部劇の良作である。 


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