ジャイアンツ
1956年/アメリカ
移りゆくテキサスと一家族の叙事詩
shinakamさん
男性
総合
80点
ストーリー
80点
キャスト
85点
演出
80点
ビジュアル
85点
音楽
80点
「陽のあたる場所」「シェーン」のジョージ・スティーヴンスが監督し、2度目のオスカーを獲得。原作はエドナ・ファーバーのベストセラーで一大叙事詩をどのように映像化したかが見所でスティーヴンス監督は職人的手腕で纏めたがそれでも3時間20分の長編となった。
テキサスの広大な牧場主ベネディクト家の3代目ビックと東部育ちレスリーの出会いから夫婦として過ごした30年間を移りゆく情景と時代の変遷を切り取っている。
20年代のベネディクト家は59万エーカーの大牧場を経営する名家で駅名にもその名があるほど。ビックは姉の不慮の死で事実上の牧場主となる。テキサスは米社会の保守的伝統的な象徴で男女、階級、人種の差別偏見は当たり前。リベラルな文化で育ったレスリーには戸惑うことばかりで、トキには夫婦仲もの微妙になるが自分を貫きとおす。
ここで時代の変革を背負った若者が牧童だったジェット。レスリーに片想いを抱きながら大金を掴むことを夢見て油田掘りに賭ける。序盤はレスリーを巡ってビックとジェットの男としての競い合いが主軸となっている。演じたのがロック・ハドソン、エリザベス・テイラーに今回3作目で遺作となった伝説のスター、ジェームズ・ディーン。壮大なテキサスの情景をバックに悠々と流れるウィリアム・C・メラーの映像とディミトリ・ティオムキンの音楽はまさにエピックそのもの。
トキは流れ一家には1男2女が生まれ、牧場には石油採掘のやぐらが林立する中をカウボーイが牛を追う情景となり、やがて駅は空港が交通の主役へと変遷する。石油王となったジェットは自分の名がついた空港へ凱旋しホテルの祝賀パーティでの演説がラジオで放送されるという名士扱いへ。誰もいなくなった祝賀会場で酔いつぶれながらレスリーへの想いをつぶやくジェットは、J・ディーンのアドリブが採用されたが、台詞が聞き取れなく吹き替えになったという曰くつき。それでも彼の一世一代の名演といわれるのは撮影終了1週間後事故死したからかもしれない。
時代が変わっても人種偏見は根強く、白人のメキシコ人への扱いはアフリカ系アメリカ人へのそれと同じだ。こちこちのテキサス男のビックの一人息子ジョーダン(デニス・ホッパー)がメキシコ人医師の娘と結婚しジェットのホテルで冷遇を受けたのがこの映画のハイライト。そしてレストランでの食事のシークエンスはまさにオバマ大統領が幼少時に受けた処遇と同じ。今でも続くアメリカの暗部がこの映画最大のハイライトであることが40年以上前の作品でありながら現在を映し出している。
主役の3人はともに20代だった頃の老け役で、朝ドラや大河ドラマでの若いタレントを連想させ無理があるが、3人とも役に成りきった熱演で好感が持て、ドラマの足を引っ張るほどの弱点にはならない。
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