晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
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『フローズン・リバー』 85点

2010-02-20 15:47:56 | (米国) 2000~09 

フローズン・リバー

2008年/アメリカ

社会から見捨てられがちな人々にこそドラマがある。

総合★★★★☆ 85

ストーリー ★★★★☆85点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆85点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆80点

アメリカNY州最北端の町に起こる2人の母親の子供への愛を描いたコートニー・ハント監督の長編デビュー作。08サンダンス映画祭のグランプリを受賞したにもかかわらず、1年遅れでようやく公開となった。映画の宿命である興業面からみると配給会社が躊躇するのも無理はないが、公開にこぎつけてくれた映画館(シネマライズ)に拍手を送りたい。
いきなりやつれた中年女性がアップになり溜息と一粒の涙で始まるこのドラマは、97分を息をのむスリリングな展開で観客を惹きつけ釘づけにしてしまう。彼女は15歳と5歳の息子を持つトレーラー・ハウスに住む白人女性レイ(メリッサ・レオ)で、その原因は新しいハウスの購入資金を夫に持ち逃げされたのが原因と分かる。
もうひとりの女性は死んだ夫の母親に赤ん坊を奪われたモホーク族保留地に住んでいるライラ(ミスティ・アップハム)。
交流のないはずの2人が出会い、それぞれの理由から凍ったセントローレンス川を車で渡りアジアの不法移民を密入国させ報酬を受けることに。そこには貧困・人種問題・家族の破壊など現代社会が抱えるさまざまな問題が見え隠れする。そして子供のためなら自分を犠牲にすることをいとわない母性愛という普遍的なテーマをドラマチックに描いて共感を呼ぶ。
「21グラム」で好演したM・レオに短編シナリオを渡し快諾してもらって以来4年越しで実現した本作は、監督自身の生い立ちが関与している。生まれは南部だがシングル・マザーに育てられ、人種差別は未だに解決していない。15歳の息子TJ(チャーリー・マクダーモット)に蒸発した父親を慕うセリフが何故か痛々しい。
それでも必要以上に悲惨さを盛り上げることなくときには微笑ましく感じるのは、子役たちの素直さと無邪気な演技。とくにTJのキャラクターに救われる想いでこんな素直な少年に育ったことに将来への希望が溢れている気がした。
いま話題の「アバター」とは両極にある作品だが、是非ひとりでも多くの人に見て欲しい映画である。



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