・ T・ライト、R・ミッチャム共演による西部劇サスペンス。
「ミニヴァー夫人」(42)、「打撃王」(42)、「我等の生涯の最良の日」(46)で清純派女優として人気が高かったテレサ・ライトと当時新鋭俳優だったロバート・ミッチャムとの共演で、異色のサスペンス風愛憎西部劇。
監督はジョン・ウェインデビュー作「ビッグ・トレイル」(30)や「南部の反逆者」(57)のラオール・ウォルシュ。撮影は名手ジェームズ・ウォン・ホー、音楽はマックス・スタイナー。
20世紀初頭のニューメキシコ。馬を走らせ廃屋にやってきたソーリー(T・ライト)と、そこに隠れていたジェブ(R・ミッチャム)が現れ再会するシーンから始まるこのドラマは、ジェブの少年時代に孤児となったトラウマの回想に繋がっていく。
ジェブはキャラム家の未亡人メドラ(ジュデス・アンダーソン)に育てられ成長するが、息子のアダムとはソリが合わず、娘のソーリーとは愛を育んでいく・・・。
ソーリーとの恋の変遷、アダムとの確執、街の顔役・グラントに執拗につきまとわれるジェブ。彼は幼い頃廃屋でメドラに抱かれ看た銀の拍車と黒いブーツの記憶が鮮烈に残って過去との決別ができず孤独感に苛まれる。
その絵解きが終盤まで謎のままエンディングまで牽引して勧善懲悪の西部劇とはひと味違うストーリー。
R・ミッチャムはアクションシーンは少ないもののボクサー出身の精悍さと堂々とした体躯で孤独な男を演じている。劇中「ロンドンデリーの歌」まで披露するが、恋に悩む優男ではなく如何にも西部の男がお似合いだ。
出世作でもある同年の「過去を逃れて」とともに主演を果たし、途中マリファナ容疑の冤罪などを乗り越え役柄も幅広い個性的なスターへの道を歩んで行く。
タイトルでは最初に名前が出るT・ライトは人気絶頂期を過ぎようとしていて、本作以降代表作には恵まれなかったが晩年まで画面に登場していた。「レインメーカー」(97)が遺作となった。
未亡人メドラに扮したJ・アンダーソンは「レベッカ」(40)でダンヴァース夫人を演じ強烈な印象を残した舞台女優の名脇役。本作でもエンディングまで目を離してはいけない。
異色西部劇をさせたのは支えたのはJ・ウォン・ホーの映像。馬上の男の近影から遙か遠景の男やそそり立つ岩山のアングルは西部の雄大さを一望に映し出し、ランプの灯りがほのかに見える夜間の情景などなど。
100本以上のR・ウォッシュ作品のなかでも異色作で彼のベスト5に入る作品といえる。
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