晴れ、ときどき映画三昧

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「鉄道員(ぽっぽや)」(99・日)70点

2022-01-19 12:09:19 | 日本映画 1980~99(昭和55~平成11) 

 
・ 高倉健 晩年の代表作のひとつとなったファンタジー。

 浅田次郎の直木賞受賞作品の短編を降旗康男監督、高倉健主演、木村大作撮影のゴールデントリオで映画化。「四十七人の刺客」以来5年ぶりに映画出演した高倉健20世紀最後の作品で、晩年の代表作といえる。

 北海道・幌舞線終着駅の駅長が定年間近の冬に訪れた小さな奇蹟を描いた人情ドラマで、本人は乗り気で無かったが東映スタッフの願いや監督の熱心な口説きに心を動かされ、19年ぶりの東映作品が実現した。

 イタリア映画往年の名作(P・ジェルミ監督・主演)と同じ題名で定年間近の愚直な鉄道員人生を描いているが、本作は家族に先立たれた孤独な主人公。
 生後2ヶ月で一人娘を亡くし、テネシーワルツを口ずさむ最愛の妻・静江(大竹しのぶ)にも先立たれながら駅に立ち続ける佐藤乙松(高倉健)は、まもなく定年を迎える。
 蒸気機関車時代からの同期・杉山仙次(小林稔侍)は系列のホテルに再就職が決まっているが乙松は何も決まっていない。
 そんな冬のある日、人形を手にした小さな女の子が駅に現れる...。

 感想は雪国の駅に立つ凜とした制服姿が絵になる<健さんの映画>に尽きる。製作の東映社長・高岩淡がカチンコを握り「網走番外地」シリーズのスタッフたちの懸命に働く姿が目に浮かぶ。
 共演したのは東映大部屋出身の小林稔侍を始め、芸達者な大竹しのぶ・奈良岡朋子・田中好子・石橋蓮司に吉岡秀隆・平田満・板東英二・本田博太郎など多士済々。
 さらに人気絶頂の広末涼子が終盤重要な役柄で登場し、健さんの希望で映画初出演で唯一の映画出演となってしまった志村けんが印象に残るシーンまであった。

 鉄道ファンにはD51やキハ12を改造した40-764ディーゼル車やロケ地・幾寅駅も懐かしく、木村大作のダイナミックな映像は感動を呼び、白と黒の世界に旗やベストにマフラー、ランドセルなど随所に配色した赤も計算し尽くしたもの。時代を遡るセピア色の画面も詩情をを誘う。

 筆者の幼少時代はテレビも無く少年少女向け東映時代劇隆盛期で「紅孔雀」や「笛吹き童子」に目を輝かせていたが、東京・大泉で現代劇も作るようになる。「米」(57・今井正監督)のような名作も生まれたが、添えもの的に二本立てが作られていて東映ニューフェイスとして高倉健が登場する。
 以来見続けている健さんには耐える男が当たり役となった<任侠もの>や<過ちを犯し愛妻と別れた男の悲哀を描いたドラマ>などを経て「ひたすら忠実に仕事一筋で働く昭和の男」のイメージがついて回る。
 本作はその集大成ともいえる。
 21世紀になっても「ホタル」(01)そして遺作「あなたへ」(12)まで時代に取り残されながら懸命に生きてきた男を演じきっている。

 この2月にシネマコンーサトの予定があるがコロナ禍で無事開催されるだろうか?鬼籍に入られた健さん・志村けん・田中好子・高岩淡元社長を偲ぶためにも是非開催して欲しい。

 
  
 


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