晴れ、ときどき映画三昧

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「海峡」(82・日)70点

2015-11-12 16:45:58 | 日本映画 1980~99(昭和55~平成11) 

 ・ 海底トンネル一筋の男を演じた昭和の男・高倉健。

                   

 八甲田山(77)、「動乱」(81)と東映ヤクザ映画から脱皮した高倉健が、青函トンネル開通工事に従事する技術調査員に扮し、四半世紀に亘って難工事に挑んだ男を描いたドラマ。豪華キャストによる東宝創立50周年記念作品。

 54年(昭和29年)青函連絡船「洞爺丸」転覆事件は多数の犠牲者を出した。その直前に<青函トンネル技術調査団>が調査開始されていて、その重要性を実感した。

 トンネル技師・阿久津(高倉健)は、青森側から船で海底の石を採掘してトンネルが可能かを見極める国鉄建設線課・津軽調査所へ着任し、57(昭和32)年に可能であると答申する。

 以来明石海峡調査の辞令で故郷岡山へ着任した7年間を除いて82(昭和57)年・貫通まで終始青函トンネルに従事している。

 まさに<ミスター海底トンネル>と呼ばれるに相応しい昭和の男。幾多の苦難に挑む阿久津役の高倉健はイメージぴったり。同類では「黒部の太陽」(68)があるが、まさに<プロジェクトX>のよう。

 竜飛岬で身投げしようとして阿久津らに助けられた多恵に吉永小百合が扮し、仄かな恋慕の情を持ちながら阿久津を見守るという、献身的な女が登場する。許嫁・佳代子(大谷直子)と結婚した阿久津を絶えず竜飛で支えた健気な女で、こういった男のドラマには必要不可欠だったのだろう。

 メロドラマ風な人間模様はドラマに厚みを増したともいえるが、その設定には微妙な気もする。2人のシーンにはスター俳優同士の清々しさを感じたが・・・。

 吉永同様、大御所・森繁久彌もこの大作ならではの役で登場している。僅か25名でスタートした鉄建公団で、トキにはぶつかりながら阿久津を支えるベテラン坑夫・岩田源助役だ。戦争で逃亡中娘を亡くして埋めた土地と同じ北緯41度で、10万年前マンモスが通った道を通すというロマンに共感した男。

 他では洞爺丸で両親を失った成瀬仙太が、鉄建公団一期生として入社し14年後の貫通で想いを果たすという悲話もあって、若手の三浦友和が演じているが3人の演技と比べるには可哀相。

 結局のところ、健さんと吉永、健さんと森繁、森繁と吉永のシーンが最大の見所の映画となっている。

 国鉄(JR)の重要プロジェクトだった青函トンネル。殉職者34名を出したこのトンネルを新幹線が通過するのが間近となった今、改めて先人の苦労を知る意味では貴重な作品だ。

 


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