晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

『ヒア アフター』 85点

2011-03-01 11:54:12 | (米国) 2010~15

ヒア アフター

2010年/アメリカ

エンディングの心地良さにイーストウッドの美学を堪能

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 85

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★★☆85点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆85点

S・スピルバーグがピーター・モーガンの脚本を見せC・イーストウッドを監督にと口説いた作品。死に直面した3人を題材に、生きることの大切さを改めて考えさせてくれる。
パリのジャーナリスト・マリー(セシル・ドゥ・フランス)はヴァカンス中に東南アジアで津波に遭い臨死体験をする。シスコのジョージ(マット・デイモン)は霊能力者という特異な能力が災いし孤独感を味わう。ロンドンのマーカス(フランキー・マクラレン)は双子の兄ジェイソンが突然事故死し、自分の分身でもある兄との再会を一途に願う。いかにもスピルバーグが好みそうなテーマである。
誰でも遭遇しそうな天災と事故で死と向き合い大切なヒトと心ならずも別れる2人。他人の死に介入し願いを叶えるたびに普通の生活から疎外されるジョージ。ジョージが何故霊能力を持つようになったかは本人が料理教室でであったメラニーに語っているが、その信ぴょう性を疑うとドラマは進まない。何の関わりもない筈の3人が終盤で上手く絡んでゆく脚本は「クイーン」「フロスト×ニクソン」同様心理描写が丁寧だ。
冒頭の大津波のシーンはCGを駆使した大迫力で水中でのリアル感は息苦しくなるほど。ロンドンの地下鉄の爆発といい最新の映像に挑む姿勢は若手なら当たり前かもしれないが80歳のイーストウッドが見せてくれただけで感動もの。とはいえときには物足りないほどの余韻を残した独自の美学を貫いている。淡々としながら枯れていないみずみずしい空間は、ジワリと観客の心に沁み入ってくる。エンディングの音楽まで担当したイーストウッド。来世をテーマにしながら「人生は贈り物。人は与えられた生を精一杯謳歌すべき」という人生哲学を映像化してくれた。