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晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

「ヴィーナス」(06・英) 70点

2015-03-30 12:19:25 | (欧州・アジア他) 2000~09

 ・ こんな老人は、幸せなのかも・・・。

                   
 「ノッティグヒルの恋人」のロジャー・ミッシェル監督、ハニス・クレイシ脚本で、ピーター・オトゥール主演のシニカルなコメディ。

 老俳優のモーリス(P・オトゥール)は、親友イアン(レスリー・フィリップ)の姪の娘・ジェシー(ジョディ・ウィッテカー)が田舎からロンドンへ手伝いに来るのを知り興味を持つ。本来の女好きで、寂しくなると元妻ヴァレリー(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)のもとへ訪れ、縁が切れない。

 一見、谷崎潤一郎の世界で、もとは脚本のH・クレイシのオリジナルだが、名優P・オトゥールの実話ではないかと思われるほど。あの若き日の「アラビアのロレンス」の偉丈夫振りをかなぐり捨て、忍び寄る老いとの闘いを見事に演じ切った。

 モーリスは、仕事・親友・元妻に恵まれ自由奔放に生きていて、何と幸せな老後なんだろうと想いつつ、孤独な死を恐れている。「誰も永遠に生きられない」というモーリスだからこそ、下品で無作法なジェシーを<ヴィーナス>と呼び、生き甲斐としたのだろう。

 この映画を観る世代によって評価が分かれそうなテーマだが、自分の数年後を想うと、とてもマネをできそうもない。音楽がオーバーラップしながら画面転換するところがなかなかお洒落で、ユリーヌ・ベイリー・レイの挿入曲も印象深い。    

「クジラの島の少女」(ニュージーランド=独) 65点

2015-03-27 07:53:02 | (欧州・アジア他) 2000~09

 ・ ニキ・カーロ監督の優しい眼差し。
                                                                 

 ウィティ・イヒマエラ原作「ザ・ホエール・ライダー」をニキ・カーロによる監督・脚本で映画化。クジラに乗ってきたニュージーランド、マリオ族の勇者伝説がテーマとなっている。

 02トロントを始め、国際映画祭で観客賞を受賞し、主演のケイシャ・キャッスル=ヒューズが13歳で史上最年少オスカー主演女優賞候補になり話題となった。

 マリオ族の長・コロ(ラウリ・パラティーン)は後継者がいないことが悩み。長男のポロランギ(クリフ・カーティス)は娘・パイケアを残しドイツへ。パイケアが12歳のときクジラが浜へ打ち上げられる。みんなで海へ戻そうとするが・・・。

 マイノリティ賛歌の映画は数多くあるが、少女の視点で捉えたところが異質だ。美しい海に囲まれた別世界のメルヘンを、N・カーロは優しい眼差しで描き、伝統文化の大切さを訴えていて好感が持てる。

 ただ、少女がナレーションまですることで、ストーリーは分かり易くなった半面、想像の膨らみを持てなくなってしまったのは残念。

 この映画とは無関係ながらクジラを御馳走として幼少期を過ごした筆者には、いまひとつ付いて行けないストーリーでもあった。

「エリザベス:ゴールデンエージ」(07・英) 70点

2015-03-25 07:53:52 | (欧州・アジア他) 2000~09

 ・ 絢爛豪華な衣装でK・ブランシェットが熱演。

                   

 前作「エリザベス」(98)以来、9年振りにシェカール・カプール監督、ケイト・ブランシェット主演による続編。即位後27年を経た1858年、イングランド女王として国内紛争、スペイン艦隊との戦いを乗り越え「黄金時代」を迎えるまでを描いている。

 絢爛豪華な衣装で登場するエリザベス1世を演じたK・ブランシェットの熱演が目立ち、共演者を圧倒している。歴史的な事実を踏まえながら、女王の内面の孤独感を描いているが、意外にも盛り上がりに欠けてしまった。

 このドラマのメインテーマである禁断の恋の相手・航海士ウォルター・ローリー(クライヴ・オーウェン)を侍女のベス(Aビー・コーニィッシュ)に身代わりさせる経緯に不自然さが目立つ。聡明で勇気を持ち合わせ、大国の基礎を築いた女王の内面の葛藤を描きたかったのだろうが成功したとはいえない。前回同様K・ブランシェットがオスカー候補になりながら逃してしまったのは、その不自然さのせいか?

 とはいえ、ウェストミンスター大聖堂を始め、歴史的建造物や海岸でのロケは時代物には欠かせない本物感がある。側近役のジェフリー・ラッシュの重厚な演技やA・コーニッシュの美しさが目立った。

 サマンサ・モートンは育ちの良さと儚さを併せ持つメアリー女王を好演しているが、悲劇のヒロインの割に出番が少なく、添えモノ的存在になってしまった。

 2時間足らずの長さは時代物には物足りなさも感じたが、このストーリーなら娯楽時代劇として相応しい長さともいえる。

「潜水服は蝶の夢を見る」(07・仏=米) 70点

2015-03-23 08:24:17 | (欧州・アジア他) 2000~09

 ・ 斬新な映像で生きる喜びを描いたシュナーベル。

                  

 ELLEの編集長ジャン=ドミニク・ボビー(マチュー・アマルリック)が目覚めると、そこは病院で医師や看護士が覗き込んでいる。

 意識はハッキリしているのに、身体が身動きできず言葉が通じない。動くのは左眼だけという深刻な状況であるにも関わらず、言語療法士アンリエット(マリ=ジョゼ・クローズ)や理学療法士(オラツ・ロペス・ヘルメンディア)の美しさを独白するユーモアを忘れないのが如何にも彼の性格を現している。

 瞬きだけでコミュニケーションする方法で、最初に伝えた言葉は「死にたい」だった。内縁の妻セリーヌ(エマニュエル・ヤニエ)や3人の子供たちに囲まれて人生を謳歌していたこと、父親(マックス・フォン・シド)との会話、元恋人ジョセフィーヌ(マリナ・ハンズ)との別れ・・・、次々と記憶が蘇る。

 現代美術作家のジュリアン・シュナーベルが、ロックド・イン・シンドローム(閉じ込め症候群)という病気で不自由な体でありながら、自伝を出版した男の実話をもとに映画化したヒューマン・ドラマ。カンヌ国際映画祭、監督・高等技術賞を受賞している。

 カメラは、通称ジャン・ドーの左目になって撮られていて視点が定まらない。封切り時は、前から4番目の席で観たため臨場感溢れる映像で観られたのは不幸中の幸い?だった。

 脚本は「戦場のピアニスト」のロナルド・ハーウッド、撮影はスピルバーグ作品の常連、ヤヌス・カミンスキー。2人の連携がこの映像を生んで 、潜水服を着たような主人公を具現化した。中盤以降、大空を自由に飛び回る蝶になった想像の世界が、テーマを必要以上暗くならないものにしてくれた。

 シュナーベル監督は、この愛と感動の物語を必要以上盛り上げることなく<生きることの意義>を静かに訴えている。その分物足りないと感じる人もいるかもしれない。シャルル・トレネの「ラ・メール」が主人公の気持ちを代弁していて、効果的に使われていたのが印象に残った。

「ラスト、コーション」(07・米=中国=台湾=香港) 70点

2015-03-22 07:59:01 | (欧州・アジア他) 2000~09

 ・ A・リーが描きたかった、人間の哀しみ。

                 

 ’42年の上海、ひとりの女(タン・ウェイ)がカフェで人待ち風。カウンターでの電話や周りへの視線に緊張感が漂う。
 
 その3年前、香港の大学生だったワン・チアチーは、演劇部の抗日活動家クァン(ワン・リーホン)に誘われて舞台に立つ。その高揚感とクァンへの片想いで、王傀儡政権の高官イー(トニー・レオン)暗殺を狙うスパイとなって行く。

 ワンは貿易商の若夫人マイを装い、イー邸で夫人(ジョアン・チェン)との麻雀で、頻繁に出入りするようになる。

「ブロークバック・マウンテン」のアン・リー監督が、再び禁断の愛を描いた当時の話題作。ヴェネチア国際映画祭グランプリ受賞作品。「インファナル・ア・フェア」のT・レオンと新人タン・ウェイの主演。

 3シーンで合計20分ほど、想像を遥かに上回る過激な性描写が独り歩きして話題を醸し出したが、緻密な必然性を持っている。極限の世界にいる2人が、最初は暴力的に、次に戸惑い、最後に情愛をこめて、そのシーンは変化して行くのだ。

 もうひとつの見せ場は、女たちの麻雀シーン。混迷時で外出も儘ならない女にとって、たまの買い物と麻雀だけが楽しみ。その優雅な手つきウラハラな会話が女の戦いそのものである。

 結局、香港大学生たちは反日上層部のコマでしかなく、純粋だったクァンも3年後は愚かな活動家となってチアチーを利用しようとする。チアチーにとって敵であるはずのイーは、孤独な哀しさが漂って逢うたびに愛おしさが募って行く。

 当時の複雑な時代背景=抗日・中国内戦状況を想うと、単なるラブ・ストーリーではなく、台湾出身である中国人監督の<心の襞を覗き観るような気分>になる。

 ポスト、チャン・ツィイーとも第二のコン・リーともいわれたタン・ウェイは、相田翔子に似た愛くるしい風貌で、その体当たり的な演技はモデル出身のせいか豊満さや卑猥な感じがしない。微妙な女の変化を、その視線で見事に演じ切っている。

 T・レオンは今までの甘さを捨て、誰も信じない冷酷さと不安な気持ちを漂わせた名演技で、彼の代表作と言えるだろう。

 本作での日本は蔑視される個所が随所に窺える。日本人として居た堪れない気分もあるが、ここはフィクションの世界だと割り切るほかない。

 

「かつて、ノルマンディーで」(07・仏) 70点

2015-03-21 07:43:22 | (欧州・アジア他) 2000~09

 ・ フィリベール監督の、思い入れたっぷりのドキュメンタリー。

               

 仏のドキュメンタリー監督、ニコラ・フィリベールが、ノルマンディの農村で30年前映画出演した人々へのインタビュー構成で、自身の原点を探る映画。

 ’76年ルネ・アリオ監督「私ピエール・リヴイエールは母と妹と弟を殺害した」という映画の助監督で、キャスティングを担当したN・フィリベール。資金不足のなか主人公を始め出演者を地元の人から探し、無事完成させた。

 映画は19世紀の実話がもとで、哲学者ミッシェル・・フーコー原作の悲惨な殺人事件でありながら、出演した人々は30年前のことをまるで昨日のように楽しげに語っていた。なかには、娘の病を機に辛い想い出になってしまった人も。

 ブタの飼育、シードル作りが昔ながらに行われている素朴な生活。冒頭、子ブタの誕生と、中盤ブタのト殺シーンが丹念に映されインパクトがある以外静かな映像が続く。村は何も変わっていないように見えて、核問題を抱えていたりする。

 その人々が映画にどのように関わり、今どのように思っているかが分かってくるが、肝心の主人公を演じたクロード・エベールの行方が分からない。そして感動の再会。

 いわば、30年前のメイキングだがそこにフィリベールの思い入れがたっぷり入っている。それは、父とも仰ぐルネ・アリオ監督への畏敬と出演者のそれぞれの人生賛歌がひしひしと伝わってくる。

 なかでも豚の飼育をしているロジェがとてもイイ味を出している。彼は映画では出演シーンをカットされていたが、結婚式を挙げる今回は主役級だ。

 同じジャンルのマイケル・ムーアとは両極にいるフィリベール。心の奥に沁み入るようなヒトとヒトとの絆を訴えている。

「君の涙 ドナウに流れ ハンガリー1956」(06・ハンガリー) 80点

2015-03-10 08:07:52 | (欧州・アジア他) 2000~09

 ・史実とフィクションが上手く融合した佳作。




水球の花形選手カルチ(イヴァーン・フェニエー)はハンガリー独立学生連盟の幹部でもある美しい女子学生ヴィキ(カタ・ドボー)に一目惚れ。オリンピックを間近に控えながら運動に参加する。ソ連の衛星国であるという現実を改めて知り愛国心に目覚め、水球を捨て銃を持つ。

 アンドリュー・G・ヴァイナが、祖国「ハンガリーの失われた革命」をテーマにした念願のプロパガンダ作品。同時期に起こったオリンピックでの「メルボルンの流血」をもとに、クリスティナ・ゴタ監督が哀しいラブ・ロマンスへと仕上げた。

 「ハンガリー動乱」と呼ばれた’56年の革命失敗は、ポーランドを始めとする東欧諸国のソ連からの独立運動で、沢山の血が流れ25万人もの亡命者がいる。製作したA・G・ヴァイナも12歳で国を出ている。その熱い思いが画面を通してヒシヒシと伝わってくる。

 2つの史実をもとにカルチとヴィキの恋愛ドラマが上手く融合した感動の物語となった。ソ連が悪で独立運動が正義という類型的な作りが気になるが、<市民の切実な願いが日々の平穏であること>が的確に描かれている。

 カルチの親友ティビは女好きの普通の水球選手だし、学生連盟の幹部は最後で保身を図るなどでバランスを取っている。さらに、秘密警察と独立運動家の仲介をしようとした神父が、命の大切さ訴えながら銃殺され命を絶つ場面は、悲惨で深く心に刻まれるシーンだった。

 映像はかなりリアルで、戦車が登場する戦闘場面や水球のゲームは手抜きは一切なく、迫力充分!さらにハンガリー国家が感動を誘う。

 


「サンジャックへの道」(06・仏) 75点

2015-03-09 10:47:31 | (欧州・アジア他) 2000~09

 ・ 9人の男女が織りなす、自分探しの旅。

                    
 コリーヌ・セロー監督が、巡礼の旅を通して人種や地位を超えた視点で描くヒューマン・ドラマ。

 3人の兄妹、会社経営者でストレスをクスリで紛らわすピエール(アルチュス・ド・パンゲルン)、頑固な高校教師クララ(ミュリエル・ロバン)、アルコール中毒が原因で孤独な文無しクロード(ジャン・ピエール・ダルッサン)は、母の遺言による遺産相続が目的の不本意な旅に出る。

 仏ル・ピュイからスペインのサンディアゴ・デ・コンポステーラ1500Kmを旅するあいだ、男女9人の織りなすさまざまな人間模様が面白い。

 亡くなった母親は、3人の仲が悪いのを心配してこの遺言を残したのが分かる。動機は不純でも、美しくときには過酷な自然・母なる大地に包まれ、3人の心が打ち解けて思いやりのある絆を大切にする人間になって行く。

 ガイドのギイ、物静かな女性マチルド、楽しい山歩きと勘違いした女高生・エルザとカミーユ、アラブ系で従兄弟同士ノサイッドとラムジーも、新生活を再発見するキッカケの旅となる。

 観終わって、心温まる作品だが、もしも続編があれば、また新しい悩みが予見できそうなエンディングである。

 アントワーヌ・フォンテーヌの幻想的な美術、電子音とバロック・ハウスミュージックをフンダンに取り入れたユーグ・ル・バーグの音楽が、9人の心の変化を巧く捉えられていて、より効果を生んでいる。

「アフター・ウェディング」(06・デンマーク) 80点

2015-03-08 08:05:19 | (欧州・アジア他) 2000~09

 ・ スサンネ・ビネの巧みな人間描写が光る。

               
 デンマークの才女、スザンネ・ビネ監督が「しあわせな孤独」「ある愛の風景」に続く<生きることとは?>をみつめた珠玉の’07オスカー外国語映画賞ノミネート作品。

 インドで孤児救済に生き甲斐を見つけているヤコブ(マッツ・ミケルセン)は、デンマークの実業家ヨルゲン(ロルフ・ラッセゴード)の資金援助条件に面談するためコペンハーゲンにやってきた。

 ヨルゲンの娘アナ(スティーネ・フィッシャー・クリステンセン)の結婚式に立ち会い、思いがけなく元恋人でその母・ヘレネ(シセ・パベット・クヌッセン)と20年振りに再会する。

 物語は、一見良くあるメロドラマのような展開を見せるが、ヨルゲンが何故多大な寄付をしてまでヤコブを呼び寄せたかが分かるにつれて、サマ変わりしてくる。

 脚本のアナス・トーマス・イエンセンの上手さもさることながら、S・ビネ監督の人間描写の見事さがヒトキワ光っている。ハンディカメラでの映像、目や顔のアップ、自然光のリアルさを駆使して惹きつけて行く。

 M・ミケルセンは「007カジノロワイヤル」での悪役・ル・シッフルでお馴染みだが、孤独な男に潜む、家族の絆を求める難しいを好演。特筆べきはR・ラッセゴードで、傲慢ななかにひたすら家族を想う男の切なさを演じて見せた。

 いまや豊かな国に変貌しようとしているインド。厳然としてある貧富の差とともに、ヤコブとヨゲルセンの慈善行為は複雑で、必ずしも動機は純粋なモノではない。だが、アナの夫以外、登場人物は間違いなく家族愛に満ちていて、そこに救いがある。

 冒頭とラストシーンに流れるシガー・ロスのテーマ曲が温かく、現実の矛盾を癒してくれる。

「ある愛の風景」(04・デンマーク) 80点

2015-03-06 17:04:32 | (欧州・アジア他) 2000~09

 ・ 過酷な境遇を克服できるのは、究極の愛。

                    
 美しい妻・サラ(コニー・ニールセン)と2人の娘に囲まれ、幸せなミカエル(ウルリッヒ・トムセン)は、アフガニスタンに赴任することに。出所する弟・ヤニック(ニコライ・リー・コス)を迎えに行き、両親を交え久しぶりに一家が揃う。善き夫で父であったミカエルは、戦地で過酷な境遇に遭い捕虜になってしまうが、留守家族には戦死の訃報が伝わる。

 死んだと思ったミカエルが帰って、弟・ヤニックが心の支えになった家族の微妙な変化と戸惑い。そして、別人のように変わってしまったミカエルは、妻にもいえない秘密を抱えてしまっていた。

 「ドッグヴィル」「マンダレイ」のデンマーク人プロデューサー、ペーター・オルべック・イエンセンが製作、女流監督スサンネ・ビアが「幸せな孤独」に続いて<究極の愛>をテーマにした物語。

 S・ビアはワンカットも無駄にしない繊細な描写で、心の揺れを丁寧に描いて実に見事な演出。また、アナス・トーマス・イエンセンの脚本は、人間描写の切り口がとてもしっかりしていて、揺るぎないドラマに仕上がっている。

 ネタ不足のハリウッドが放って置く筈もなく、ジム・シェリダン監督、ナタリー・ポートマン主演でリメイク(「マイブラザー」・09)された。この頃のS・ビア監督は次回作「アフター・ウェディング」(06)でオスカー外国語作品賞にノミネートされ、「未来を生きる君たちへ」(10)で受賞するなど勢いが止まらない。

 「グラディエーター」でその名を知られ、祖国で初主演した女優C・ニールセンは、期待に応える凛とした演技でヒトキワ光っていた。

 最後に心の救いを得ることでこの映画は終わる。優秀な職業軍人であるミカエルが戦地で受けた過酷さは悲惨で、万が一我が身に置き換えたらと思うと迷路に入って確かな答えが見出せない。