・史実とフィクションが上手く融合した佳作。
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水球の花形選手カルチ(イヴァーン・フェニエー)はハンガリー独立学生連盟の幹部でもある美しい女子学生ヴィキ(カタ・ドボー)に一目惚れ。オリンピックを間近に控えながら運動に参加する。ソ連の衛星国であるという現実を改めて知り愛国心に目覚め、水球を捨て銃を持つ。
アンドリュー・G・ヴァイナが、祖国「ハンガリーの失われた革命」をテーマにした念願のプロパガンダ作品。同時期に起こったオリンピックでの「メルボルンの流血」をもとに、クリスティナ・ゴタ監督が哀しいラブ・ロマンスへと仕上げた。
「ハンガリー動乱」と呼ばれた’56年の革命失敗は、ポーランドを始めとする東欧諸国のソ連からの独立運動で、沢山の血が流れ25万人もの亡命者がいる。製作したA・G・ヴァイナも12歳で国を出ている。その熱い思いが画面を通してヒシヒシと伝わってくる。
2つの史実をもとにカルチとヴィキの恋愛ドラマが上手く融合した感動の物語となった。ソ連が悪で独立運動が正義という類型的な作りが気になるが、<市民の切実な願いが日々の平穏であること>が的確に描かれている。
カルチの親友ティビは女好きの普通の水球選手だし、学生連盟の幹部は最後で保身を図るなどでバランスを取っている。さらに、秘密警察と独立運動家の仲介をしようとした神父が、命の大切さ訴えながら銃殺され命を絶つ場面は、悲惨で深く心に刻まれるシーンだった。
映像はかなりリアルで、戦車が登場する戦闘場面や水球のゲームは手抜きは一切なく、迫力充分!さらにハンガリー国家が感動を誘う。