遊び人親子の日記

親子で綴る気まぐれ日記です。

影の王

2023年10月07日 18時17分16秒 | 読書

          影の王      マアザ・メンギステ(著)2023年2月発行

  体調不良中だったせいもあってか、なかなか理解するのが難しかった。

  イタリア軍が占領しようと進軍攻撃してくるさなか、未だに古典的と思えるエチオピアの

  王や家族制、身分格差、頑迷な男尊女卑社会の世界が描かれており、エチオピアの歴史の

  一端、社会風土を舞台として語られてる小説で、珍しいし、貴重。

  エチオピアの虐げられていた女性が、さっさと亡命した王に代わって銃を手に

  イタリア軍と戦い、同時に、当時のエチオピア社会における身分の差、自国の男とも戦う、、、

  あらゆることに立ち向かわなければならないという境遇の凄まじさに圧倒される。

  様々な逆境に苛まれながらも、底知れぬように湧き出てくる強さはどこからくるのだろうか。

  エチオピアの歴史、風土、慣習、小説の構成など、理解するのはなかなか難しいが、

  新たな世界の歴史の一面、知らなかった風土、文化を知ることができる素晴らしい小説。

  (蛇足だが、ハイレ・セラシエ王やキダネの行動に『エチオピアの男って・・・』

  と、つい怒りが爆発するし、情けなさ過ぎで。。。あまりに弱すぎ腹立たしい。)

      わがまま母

■あらすじ
1935年、エチオピア。
孤児の少女ヒルトは、貴族のキダネとアステル夫妻の家で使用人になる。
ムッソリーニ率いるイタリア軍のエチオピア侵攻の足音が近づくなか、キダネは皇帝ハイレ・セラシエの軍隊を率いる指揮官となるが、皇帝は早々と亡命してしまう。

希望を失ったエチオピアの兵士たちを鼓舞するため、皇帝にそっくりな男が皇帝のふりをする。彼の護衛についたヒルトは、自らも武器を手にして祖国エチオピアのために闘うことを選ぶが……。

 

「影の王」書評 冷徹にして叙情豊かな人間讃歌

評者: 澤田瞳子 / 朝⽇新聞掲載:2023年04月22日
 

1935年。ムッソリーニ率いるイタリア軍のエチオピア侵攻の足音が近づく中、皇帝は亡命してしまう。兵士たちを鼓舞するため、皇帝そっくりな男が皇帝のふりをする。

「影の王」 [著]マアザ・メンギステ

 時は1935年、エチオピア。紀元前より他国の支配を拒み続けてきたこの国に、イタリア首相・ムッソリーニは侵略を仕掛ける。本作は第2次エチオピア戦争と呼ばれるこの戦争を背景に、混乱のただ中に錯綜(さくそう)する数多(あまた)の生と死を冷徹に――しかし叙情豊かに織りなした歴史小説である。
 周囲から搾取され続けてきた孤児の少女・ヒルト。ヒルトと共にエチオピア王の影武者を護衛する貴族の妻・アステル、2人を様々な形で虐げるアステルの夫・キダネ。故国防衛という共通目的を持ちつつも、彼らの関係は身分差や性差によって歪(ゆが)められ、マグマにも似た激情を糧にぶつかり合う。また侵略者の一員として戦場を訪れる写真家、イタリア軍将軍とその愛人、彼らに雇われる料理人など、個々に憂憤を抱えた登場人物たちの姿はみな痛々しく、それゆえ時に読み手を怯(ひる)ませるほどの喜怒哀楽を剝(む)き出しにする。
 「合唱」として挿入される情景や心情、「写真」の乾いた描写といった特徴的な構造が、物語を多角的に彩る。ヴェルディのオペラ「アイーダ」の響き、早逝(そうせい)した王女の幻影、何者でもない「影の王」など、歴史と時間の渦にのみ込まれた数々までをも描く筆致は乾き、だからこそ長きに亘(わた)って伝えられた叙事詩にも似た眩(まばゆ)い光を放つ。
 とはいえ同胞同士の信頼や敵味方を越えた友情、はたまた劇的な救出などのヒロイックな感動はここにはない。ヒルトとアステルを結ぶ感情は屈折的で、料理人は捕虜の安らかな死のために奔走する。女たちは犯され、亡命者たる王は故国から切り離されて孤独に苛(さいな)まれる。描かれるのは泥濘(でいねい)を思わせる混沌(こんとん)と悲劇であり、それでもなお足掻(あが)き続ける血まみれの生、そして倒れていった無数の人々への大いなる讃歌(さんか)だ。
 歴史と人間の難解さを直視し、膨大な取材をもとに、確かに生きた者たちの軌跡を漏らさず描かんとした圧倒的な物語である。
    ◇
Maaza Mengiste 1971年、エチオピア生まれ。作家。7歳で単身渡米。2作目の本書はブッカー賞最終候補に。

 

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