オルガ ベルンハルト・シュリンク(著)2020年4月発行
19世紀末から第一次世界大戦、ナチの台頭、ドイツ敗戦後の社会の混乱、
そんな欧州の激動の時代、過酷な環境にあり、たった一人で小さな幸せを求め、
信念を持って毅然と生き抜いたポーランド系ドイツ人女性「オルガ」の人生
が淡々と語られ、彼女の知られることのなかった謎が解かれていく。
三部構成からなり、一部は、オルガの生い立ち(孤児となってドイツの祖母に
引き取られるも、愛情を受けることなく寂しく育つ)。
貧しくも必死に勉強し自力で教員となり、祖母から離れ自立する。
幼い頃からの知り合いで農園主の息子ヘルベルトと恋に落ちるも、
彼の親の許しは得られず結婚はできなかった。
世の中(ドイツ社会)は徐々に変化し、彼女は発熱の後遺症で耳が聞こえなく
なり教員をクビになってしまう。が、その後、聾学校へ通い、裁縫や子守を
しながら生計を立て生きていく。・・・
とにかく、不幸な生い立ちや困難にもめげることなく、正義と信念をもち
毅然と生きるオルガが、彼女とは対称的に、広大な地、冒険を求め夢想し、
旅に出るヘルベルトを愛し、彼を想い、信じ、帰りを待ち続ける、
その姿には感動。
彼女は、北極ルートを開拓すべく、探検に出かけ音信不通になってしまう
ヘルベルト宛に、ノルウエーのトロムソの郵便局留めで手紙を送っていた
ことが20世紀後半になってわかり、彼女が可愛がったフェルディナンドに
行動より、その手紙の束が発見される。
三部では、それらの手紙の内容から、彼女が生涯語ることのなかった驚きの
事実も明らかになる。
どうみても、苦労ばかりの苦難の人生を生きたようにしか見えないオルガだが、
自分を信じ、小さな幸せを感じる力に優れている女性だったんだなあ、、、と思う。
(それでも、息子アイクと理解しあえずに終わったのは悲しい)
著者の作品『朗読者』より、個人的には本書の方が惹きこまれました。
わがまま母
「オルガ」案内文転記
— 19世紀末、ベレスラウ(現ポーランド)の貧しい家に生まれ、ドイツ東北部
に住む祖母に引き取られたオルガは、誰にも媚びない性格を気に入られて
農園主の息子ヘルベルトと恋仲になる。だが結婚は許されず、行き場のない
ヘルベルトは北極圏への冒険に出たまま消息を絶った。僻地への赴任、ナチス
の台頭、身体の変調、戦災からの逃避・・・・。
数々の苦難を乗り越えたオルガは、人生の最後に途方もない行動に出る。
一人の女性の毅然とした生き方を描いて話題となった最新長編。
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