ブギウギ 坂東真砂子(著)2010年3月発行
かなり面白いミステリーだった。
戦争末期から終戦にかけての箱根と東京を舞台に、日本、ドイツ、アメリカ各国
の思惑が交錯し、スリリングな展開をみせるサスペンス。
日本の敗戦色濃い時期、アルゼンチンへと向う途中、ドイツのUボートが東京湾に
立ち寄ったところ米軍の攻撃で沈没。助かった乗り組み員が箱根の旅館に隔離
されていた。
Uボートの船長ネッツバンドは、第三帝国復興に鍵を握る最新兵器の設計図の
マイクロフィルムをアルゼンチンのナチ党員に届けるという極秘命令をを受けて
いたのだ。しかし、彼は箱根の湖で水死体となり発見される。
これは自殺か、他殺なのか?他殺であれば誰が、理由は?
この事件を検証するため海軍の要請で通訳として調査に同行することになる
主人公「北城」は、ドイツ留学経験のある心理学者。
もう一人の主人公となるのが、箱根の旅館に住み込みで働いていて、
死体の発見者となった「リツ」。
「リツ」は、ドイツの潜水艦乗組員パウルと親しくなり、旅館の女将に声のよさ
を褒められ、後に歌手を目指し上京することになる。
事件を調査するうちに「北城」は、他殺と考えるが、ドイツ軍医シュルツェは
自殺と断言する。なにやらナチの陰謀の匂いがしてくる。
そして事件は、海軍から陸軍、憲兵の手に渡り、敗戦を迎え、「北城」も
アメリカ軍の占領のもと、いよいよ底知れぬ「夜と霧」の世界に迷い込むことに。
一人のドイツ艦長の死を巡り、敗戦国、戦勝国、戦争の暗部が
あぶりだされていく。
激動の時代、「女は『愛』と呼ぶものによって動き、男は権力によって動く」と
いう著者の鋭い捉え方が、ミステリーをより深く味わわせてくれる。
個性的な登場人物、歴史認識、サスペンス、男女関係、と沢山の魅力満載で
一気読みの大満足な一冊でした。
わがまま母