ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

経済問題 春山昇華著 「サブプライム問題とは何かーアメリカ帝国の終焉」  宝島社新書

2008年09月05日 | 書評
米国の住宅バブル、略奪的貸付、証券化金融技術、世界資本市場からサブプライム問題を解明 第10回
第4章 住宅ローン債権の証券化 (1)

FRBの公定金利引き下げでひとまず終息したかのようであるが、サブプライムローンを借りていた者の地獄はこれからが本番である。アメリカの今回の住宅バブルの特徴は、個人所得が増えていない状況での住宅価格の値上がりである。住宅価格指数は約2倍近い。所得は増えないのに住宅価格が値上がりして「今買わないともう買えなくなる」と云う焦りに近い心理が働いたようだ。住宅ローンのタイプには健全所得者向けのプライムローンに対して低所得者向けサブプライムローンのほうが多くなった。不健全なローンを組む人が多数を占めた。住宅産業の低迷はリストラとなるだろう。住宅を追い出された人々の間では離婚、暴力、精神病が蔓延しそうである。

医療問題 真野俊樹著 「入門 医療経済学」 中公新書

2008年09月05日 | 書評
医療制度を考える上で、医療経済学的視点は欠かせない 第21回
医療の仕組みを経済学で分析する (4)

医療機関への報酬の支払い方式まさに医療経済学の中心課題である。公的経営や介入の多いイギリスやフランス、ドイツでは開業医に対する人口に相当した「人頭払い」や「予算配分方式」(包括払い)がとられている。日本では「出来高払い」である。出来高払いのメリットは医療関係者が費用を気にしないで適切な治療を行える点である。「包括払い」のメリットは国や健康保険組合が医療費を管理することができるのである。日本では2003年に特定機能病院82病院に対してDPC(一日当りの疾患別定額払い)と云う支払い方式が始まった。DPCでは診療報酬算定式は基礎償還点数×診断群分類別係数×医療機関別係数になる。包括払いと質の保証がセットになった点がユニークである。DPCのもとの経営では在院日数の短縮、薬剤の管理といった原価管理が重要になって来る。アメリカではICD(国際疾病分類)に基づいた1万種の病気に対して500程度の病名グループ別に医療費を設定するDRG(診断群別分類)方式である。病気がコストによって分類されたことである。DRG/PPSという疾患別支払額定額制度である。

環境問題 丸山茂徳著 「科学者の9割は地球温暖化炭酸ガス犯人説はウソだと知っている」  宝島社新書

2008年09月05日 | 書評
地球は寒冷期を迎え、人口爆発で石油は枯渇する事態こそ文明の最大危機だ 第12回

第1章「地球温暖化」炭酸ガス犯人説のウソと「寒冷化」の予兆 (8)

さらに③火山活動である。雲が太陽光を反射して気温に影響するなら、火山活動によるエアロゾルの変化も考慮すべきだ。しかし中国の大気汚染による黒い粒子は太陽熱を吸収するので、どっちに転がるかは難しい予測になる。1991年のピナツボ火山噴火で硫酸200エアロゾルが増加して気温が4年間低下したことは記憶に新しい。しかし火山エアロゾルが成層圏まで達する事が必要で、こんな大きな火山爆発の予測は出来ない。

④のミランコビッチの周期も予測は難しい。公転軌道の揺らぎによって太陽との距離が増減して、10万年周期と40万年周期の周期的な日射量の変化が生じる。これをミランコビッチの周期という。また歳差運動(独楽運動の自転軸の変動)によって陸の多い北半球と海の多い南半球への日射量の比率が4万年周期で変化する。こんな長い周期の変化はICPPの予測計算に組み入れる事は不可能である。ティーデマンらは1990年に、過去40万年間の深海堆積物の有孔虫化石の酸素同位体比分析から予測される気温変化を報告した。10万年周期で現在の気温をゼロとすると+4℃から-8℃まで変化していた。21世紀は最高の気温状態から既に気温低下期に入っているようだ。

自作漢詩 「秋夜登樓」

2008年09月05日 | 漢詩・自由詩


早秋已冷獨登     早秋已に冷え 獨り樓に登る

深巷眼前燈火     深巷眼前に 燈火は幽に

満目銀河光耿耿     満目銀河 光耿耿たり
     
蛩聲喞喞響啾     蛩聲喞喞 響啾啾たり

●○●●●○◎
○●●○○●◎
●●○○○●●
○○●●●○◎
(赤い字は韻:十一尤 七言絶句平起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)

CD 今日の一枚 バッハ「平均律クラヴィーア曲集Ⅱ」

2008年09月05日 | 音楽
バッハ「平均律クラヴィーア曲集Ⅱ」
ピアノ:アンドラス・シフ 
DDD 1987 DECCA

本来はチェンバロ演奏なのでしょうが、ピアノ演奏もいいものです。チェンバロは本来通奏低音楽器で音階中心の色彩の世界である。それに対しピアノはソロ楽器でパワーの強弱で表現するモノクロの世界です。ピアノで静かに聞き込むとバッハ平均律曲集が又すばらしいものに聞こえてきます。なおDECCAとはLONDONを引き継いだレーベルです。