ブログ 「ごまめの歯軋り」

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米国金融危機 不良資産は100兆円を超えるそうだ

2008年09月21日 | 時事問題
asahi.com 2008年9月21日1時16分
米政府想定は最大75兆円 不良資産買い取り
 【ワシントン=西崎香】深刻化する金融危機対策で、ブッシュ米政権が打ち出した不良資産の買い取り制度は、買い取り額を総額最大約7千億ドル(約75兆円)と極めて巨額な規模を想定していることが20日、明らかになった。
 住宅ローンや商業不動産関連の債権などを検討しているほか、住宅ローン担保証券(MBS)や将来的に学生ローンなど幅広い資産を想定している。米メディアが同日に伝えた。
 昨年夏以来の金融危機で金融機関は総額4千億ドル(約43兆円)の損失をすでに決算に計上しているが、最終的には1兆ドル(約107兆円)を突破するとの見方もある。 米政府が財政需要を満たすために国債発行などで市場から借りることが出来る限度額も、現行の10.6兆ドル(約1140兆円)から11.3兆ドル(約1200兆円)に引き上げることを議会に求める方針だ。

米国のサブプライムローンの不良資産は日本のバブル崩壊の不良資産とは桁が違う。さすが金融超大国だけに負債も大きい。日銀が助けられる範囲ではない。この10年間の米国金融資本の一人勝ちの真相はこういうからくりによる金融工学の失敗だったのだ。アメリカの将来は危ない。

政治問題  砂田一郎著 「アメリカ大統領の権力」 中公新書

2008年09月21日 | 書評
クリントン、ブッシュJr大統領とリーダーシップの低下 第13回
大統領制と云う組織 (2)

 ワシントンの建国時には国務、財務、軍事の三部門しかなく、政策会議での大統領裁量が圧倒的であった時に較べると、2000年には行政府は289万人となった。1939年ローズベルトは行政補佐官をおいて現代の大統領府を創設した。大統領府を真に制度化したのがアイゼンハウアー大統領であった。首席補佐官や特別補佐官をおいた。組織を重要視する共和党大統領のホワイトハウスでは首席補佐官の権限が強すぎ、大統領の運営に障害になる場合も生じた。ニクソン大統領に対するキッシンジャー補佐官、カーター大統領に対するブジジンスキー補佐官の影響力の強さは語り草である。民主党大統領の場合も首席補佐官制度を利用している。ニクソン大統領は全体としては組織重視姿勢であるが特定の課題(中国政策など)では個人的な独断専行となった異色の大統領であった。ブッシュJrでは宗教的な保守主義むき出しの政策が突如として噴出した。中絶問題、京都議定書離脱、一国単独行動主義、エネルギー政策などである。大統領が政治的に任命する官職は約600あり、重要な官職は約300といわれる。ブッシュJrはこの官職任命において党派的イデオロギー基準を下の官職にも適用した。裁判官の判事レベルにも党派性を要求したのである。


経済問題  神田秀樹著 「会社法入門」 岩波新書

2008年09月21日 | 書評
21世紀の「会社法」はIT革命と資本市場への対応をめざすもの 第13回
会社法の展望

 2005年の2月から3月にかけてのニッポン放送株をめぐるライブドアーとフジテレビの攻防は新聞で華々しく報じられて、国民に「新株予約券発行」という言葉が浸透した。新株予約権が行使されると、ライブドアーの保有割合は42%から約17%に低下し、フジテレビは約59%に上昇するものであった。新株予約権とは株式のコール・オプションである。日本ではインセンティブ報酬として取り締まりや従業員に賦与するとか、資金調達(新株予約権月社債)、株主優待として株主に発行するとか買収防衛策に使用するためである。今回の場合は勿論最後の買収防衛策の使用された。結局高裁は差止の決定をした。最近の株式の「敵対的買収」が持つ特徴を以下にまとめると

①真に経営参加の意志がないにもかかわらず、株価を吊り上げて高値で会社に引き取らせる目的でおこなういわゆる「グリーンメイラー」である買収
②買収した会社の情報,知的財産、顧客や取引先を奪うなどいわゆる「焦土化経営」が目的の買収
③買収した会社の財産を、買収グループの会社の担保や原資にする買収
④買収した会社の不動産や有価証券を売却してその処分利益でもって高配当にまわしたり、株価上昇の機会を狙って高値売る逃げを図る買収
など買収された会社を経営する意図はなく、食い物にするだけが目的の買収を「「敵対的買収」と呼ぶ。ライブドアーの真意は①にあったことは結果的に判明している。村上ファンドの動きなどは①のグリーンメイラー型であろう。支配権を有するほど買い付け資金がない場合、「発言する株主」とかいってメディアへの話題提供だけで株価が上昇することを狙った火事場泥棒である。買収防衛策としてライブドアーで有名になった時間外取引を規制する「立会外取引規制」が直ちに実施された。買収者以外への新株予約権発行による買収者の議決権比率を低下させる方法や友好的な企業に拒否権付き株式(いわゆる黄金株)を保有させる方法とかが出来るようになった。買収騒ぎの原因は規制緩和の隙を狙ったものである。今後会社法で検討すべき課題である。

文藝散歩 五味文彦著 「源義経」 岩波新書

2008年09月21日 | 書評
源平合戦の英雄「源義経」像を文献・史料から探る  第12回
4)奥州藤原氏と源頼朝挙兵、義仲追討ー「平家物語」より (2)

河原合戦
宇治川・瀬田の合戦で敗れた木曽殿は最後の合戦に出るつもりで、公卿の女房の屋敷に暇乞いに行きなかなか出てこない。家来の越後中太家光は主人を諌めるためにわで切腹した。ようやく未練を捨てた木曽殿は那波太朗広純ら百騎ばかりで六条河原に出ると、義経軍に囲まれて六条から三条まで河原を走り抜けた。木曽殿は瀬田で闘っている竹馬の昔からの乳母兄弟今井四郎を求めて、三条から粟田口に出た頃には主従七騎にまで減っていた。一方義経は残党狩りは任せて、安田三郎、畠山庄司次郎、梶原源太、佐々木四郎、渋谷右馬重資と、法皇のいる六条御所に駆けつけた。一万余騎で守護した。

木曽最後
木曽殿に追従した七騎のなかには木曽殿の愛妾巴御前という一騎当千の兵がいた。木曽殿は大津の濱で今井四郎に合えた。残党をかき集め三百騎程になって一軍しようと、甲斐の一条次郎六千余騎のなかへ突っ込んで反対側へ出たときには五十騎ばかりになり、土肥次郎実平二千余騎のなかへ分け入って出てくると主従五騎になった。この五騎のなかにも巴御前は残っていた。義仲は巴を生かして逃がそうとした、巴は東国へ落ちのびたという。木曽義仲は今井四郎と云う義兄弟と主従二騎になったが、木曽殿は疲れた様子なので不覚を取らないよう今井は粟津の松原で自害をするよう薦めた。今井四郎三十三歳にて討ち死に。木曽義仲は三浦の石田次郎為久の手にかかり首をとられたと云う。

樋口被斬
今井四郎の兄樋口次郎兼光は淀のあたりで、今井四郎と義仲が討たれたことを知り、五百騎で都へ上がって討ち死にするつもりで鳥羽口につくころには二十余騎まで減っていた。降人となった樋口次郎兼光は木曽殿四天王といわれた今井、樋口、楯、根井の名を慕う者がとりなして命乞いをしたが法皇許さず、二十五日遂に斬られた。その頃平家は讃岐の屋島を出て摂津国難波に上がり、西は一の谷に城をつくり東は生田の森を大手門とした。14カ国を従え軍兵十万余騎と聞こえた。