ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

読書ノート 町田徹著 「日本郵政ー解き放たれた巨人」 日経新聞社

2013年07月04日 | 書評
私的独占企業体「郵政」を生んだ小泉首相・竹中大臣の功罪 第5回

1)郵政公社を巡る攻防 (1)
 2005年5月日本郵政公社の民営化に向けた助走が開始された。コンビニ業界で全国6300店舗を持つ「サンクス」、「サークスK」が宅配便サービスを「クロネコヤマト」から、公社の「ゆうパック」に切り替えると発表した。これでローソン、ミニトップ、am/pm、デイリーヤマサキについで五社目となりゆうパック陣営は1万9400店舗にふくらみ、業界ガリバーのヤマト陣営(セヴンイレブンとファミリーマート)の取り扱いコンビニ店舗数1万7400店舗を店舗数だけからは抜いたことになる。時は小泉首相が衆議院「郵政解散」に踏み切ったばかりであった。情勢は混沌としていたが、国会郵政族や全国特定郵便局長会、全逓労組の民営化反対をよそに、郵政公社は民営化への舵を切っていたのである。ゆうパックのシェアは業界の6%程度の赤字続きで公社の最大のお荷物であった。それを強化使用としたのが初代総裁の生田(商船三井出身)であった。生田は攻めの公社に変えた立役者であった。生田がまずやったことはヤマトへの攻撃である。9月ヤマトは公社をローソンとの取り引きが「不公正な取り引き」に当たるとし、ゆうパックの料金が「不当廉売」にあたるとして提訴した。たしかに郵政公社には政府融資や法人税の免除措置があり、駐車禁止区域に駐車できる特権などがあり、誰が見ても公平な競争ではなかった。2005年9月に成立した「郵政民営化関連6法」のポイントをみると、第1に公社は2007年10月に「日本郵政株式会社」に移行することである。日本郵政株式会社の株は10年をかけて(2017年までに)2/3を市場で売却して(政府は1/3の株は保有し影響力を持つ)「完全民営化」することになっている。実質的に日本郵政株式会社は永久に日本政府の庇護を受ける約束が出来ている。これは政府の「特殊会社」であって民営化といえるかどうか疑問だ。組織は上の図に示したように傘下に四つの事業会社を100%子会社として従える。郵便事業会社と窓口ネットワーク会社の2社は国営事業だった郵便事業を「私的独占」することを認められた。これは小泉郵政民営化の最大にして致命的な欠陥の一つである。
(つづく)

文芸散歩 大畑末吉訳 「アンデルセン童話集」 岩波文庫

2013年07月04日 | 書評
デンマークの童話の父が語る創作童話集 156話 第55回

113) カタツムリとバラの茂み
バラの花はこの世を謳歌して楽しく過ごしています。カタツムリは自分の殻に閉じこもり没世間で、自分の内面的発展にのみ賭けているようですが、外から見ると何もしていません。

114) 鬼火が町にと沼のばあさんがそう言った
この話はストーリーがあるわけではなく、アンデルセンの独り言です。昔は次から次と話の着想がひらめいて、おとぎ話がアンデルセンの方へやってきたものだが、最近おとぎ話が枯渇してきたので、おとぎ話のネタを求める旅という設定である。アンデルセンを沼のおばあさんに、鬼火をおとぎ話と見立てればおとぎ話は出来上がります。

115) 風車
オランダと風車は海辺の風景として欠かせないものです。その風車の機械にガタがきて古くなっていよいよ取り壊しの日がきました。故意かどうかは知りませんが風車が火事になって跡形もなくなり、そこに新しく素晴らしい性能を持つ風車がやってきた。古いものが役目を終えると、つぎにはさらに優れたものがやってくるという、進歩思想に置き換えて読むこともできます。
(つづく)