ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

医療問題:デンマークのホームドクター制の問題

2010年02月12日 | 時事問題
JMMデンマークたより 第86回(2010年2月11日)「医療体制の一長一短」  高田ケラー有子 造形作家 在デンマーク より

 高田さんのお子さんが骨折をして公立病院にかかった経験から、デンマークの無料のホームドクター制度(総合医 ジェネラリスト)の問題点を考えて国民性の違いを実感したというお話である。デンマークのホームドクター制度は、一応どんな患者でも受け入れてまずそこで初期診断がなされ、振り分けを行い必要に応じて専門医へと進んでゆくシステムである。そして公立病院では無料が基本である。大変優れたシステムのようであるが、今回高田さんが受けた緊急外来でのことに多くの疑問を感じたという。息子さんが足首を剥離骨折をしてX線を受けたがギプスもなく2週間様子を見た。親の訴えでようやく2週間後にギプスをしてもらい、6週間後にギプスを外された。そして1ヵ月後激痛が走り足首が紫色に腫れたため緊急外来にいったところ、X線では骨折は直っているので別の病気が疑われるということで、病院から2週間後に連絡するということになった。ここから振り分けが始まったのである。足が紫色に腫れているので、2週間も待てないので私立の病院に受診したところ、MRIを撮り小さな新たな骨折が見つかった。今後のリハビリの事もあるので再度公立病院に行って無料のリハビリを受けることが出来た。無料である公立病院ではまず経費を使わないことが暗黙の了解になっており、絶対にMRIなどは撮ってくれない。何をしても次は2週間後ということで、急変した場合電話ではどうしょうもない。とにかく医者の判断が遅いのである。ジェネラリスト制度が玄関口にいて患者を振り分けるのであるが、その振り分け方がいつも正しいとは限らないし、患者側にはジェネラリストであるホームドクターを飛ばして外科を受診するというアクセス権がない(無料の公立病院では)。金のある人は私立病院へ流れるのは当然かもしれない。2009年7月に施行された待ち時間に関する規定では、治療方針の振り分けにかかる日数は2週間、そこから治療に入るまでの待ち時間は1ヶ月以内となった。もちろん無料である。デンマーク国民は「無料なんだから待つのは当たり前」という至極のんびりした国民性である。

日本では医療は無料ではなく、官僚制のはびこる日本でホームドクターが患者の仕分けをうまく出来なかったら、最悪の事態になる。今の患者側にアクセス権(どこの病院・医者にかかるかの自由)があるほうがいい。患者を病院から遠ざけることは医療費の削減を図る官僚の考えること。イギリスのように病院での診察が1年待ちの状態こそ医療崩壊である。デンマークではまだ待ち時間は短い(無料だし)のでましなほうだが、医者が振り分けを誤った時の官僚的態度が目に見えるようだ。

産業対策と雇用問題は裏表

2010年02月12日 | 時事問題
朝日新聞 2010年2月12日3時3分
生活保護予算、地方自治体の財政圧迫 補正総額4倍に
 生活保護の受給者が急増し、各地の自治体が生活保護費(扶助費)を確保するため、補正予算の編成に追われている。朝日新聞が県庁所在市や指定市、東京特別区の計73自治体を取材したところ、受給者総数はこの約1年間に8万世帯、10万人以上も増え、69自治体が今年度中に生活保護関連で補正予算を組んだ(予定を含む)。総額は前年度の約4.2倍の1384億円に上る。今後も受給者増を予想する自治体は多く、生活保護費の負担が厳しい地方財政に重くのしかかる。

日本の大企業は殆どアメリカと中国の企業になっている。国外へ活路を求めるグローバル企業は日本に雇用を求めていないなら、日本の経済対策と雇用対策は矛盾の極み。小泉元首相以来税制面での優遇措置のため税収入は激減している。どうせグローバル企業は日本から逃げるのだから、税制面の優遇を止め国家収入を増やして、社会保障費に回すべきではないか。産業対策と社会保障はいつもトータルで考えないと。そしてあたらしい日本の経済を立て直そう。

巨人の高橋尚 フリーエージェントでメッツへ

2010年02月12日 | 時事問題
朝日新聞 2010年2月12日7時29分
高橋尚がメッツ入りへ 入団で基本合意
 プロ野球の巨人からフリーエージェントになり大リーグ移籍を希望していた高橋尚成投手(34)がメッツへの入団で基本合意に達した。11日、大リーグの公式ホームページなどが伝えた。

ここ数年故障ばかりで殆ど働いていない高橋尚 本当に大リーグで活躍できるのか?

読書ノート 五十嵐敬喜・小川昭雄著 「道路をどうするか」 岩波新書

2010年02月12日 | 書評
道路利権集団による日本国食いつぶしを阻止する 第1回

 五十嵐敬喜氏と小川昭雄氏の共著になる「公共事業(土建国家)の問題をどうにかしなければ、国民の生活は末代まで塗炭の苦しみを味わう事になる」という一連のシリーズものの最新版である。岩波新書で発行された共著8冊を以下に列記する。
1)「都市計画-利権の構図を超えて」 1993年
2)「議会-官僚支配を超えて」 1995年
3)「公共事業をどうするか」 1997年
4)「市民版 行政改革」 1999年
5)「公共事業は止まるか」 2001年
6)「都市再生を問う」 2003年
7)「建築紛争」 2006年
8)「道路をどうするか」 2008年
私はこの岩波新書シリーズの中で、「公共事業をどうするか」(1997年)、「公共事業は止まるか」(2001年)、「都市再生を問う」(2003年)を読み、そして今回「道路をどうするか」(2008年)を読んだ。著者の一人五十嵐敬喜氏のプロフィールを示す。早稲田大学法学部在学中に21歳で司法試験に合格し司法修習(20期)を経て、弁護士として不当な建築や都市計画による被害者の弁護活動に携わる一方、これまでの公共事業のあり方を批判し、「美の条例」(神奈川県真鶴町)制定に尽力するなど、美しい都市を創る権利の確立を訴えている。また日本において「日照権」という権利を初めて生み出したことで知られている。公共事業のチェック機構や都市計画の専門家として数多くの研究があり、近年は「市民の憲法研究会」を主宰して、国民主権の原理に立つ憲法の新たなあり方を提唱している。著書『市民の憲法』においては、大統領制を導入した効率的な小さな政府の実現という立場から、「市民の立場での改憲」を提唱している。2007年の東京都知事選挙では上原公子・細川佳代子らとともに浅野史郎に立候補を要請したが、現知事の石原氏に敗れる。現在は法政大学教授で弁護士活動を続けている。五十嵐氏は公共事業のなかでも都市計画を専門とされる弁護士(住環境関係の訴訟が多いためか)であるようだが、今回の著書では公共事業の本丸である道路に手を染められた。その論点が期待される。
(つづく)

読書ノート 蓮池薫著 「半島へふたたび」 新潮社

2010年02月12日 | 書評
北朝鮮拉致被害者の蓮池薫さんが翻訳者として自立するまで 第3回

 若宮氏が描く北朝鮮拉致被害者子息の奪還交渉は、2002年6月の韓国金泳三大統領宅での拉致家族会と亡命北朝鮮労働党書紀黄長氏との面談会に始まる。1990年に金丸信自民党副総裁の訪朝にも関係し、拿捕船長帰還と見返りに50万トンの食糧援助が行われた。そして2002年9月電撃的に(小泉首相の好きなテクニック)小泉首相が訪朝して、金正日は平壌宣言において拉致問題の存在を認めて謝罪し、拉致被害者五名の帰国がなった。そして日朝国交正常化に向けた外交交渉が開始されるかに見えた。しかし外務省の北朝鮮との交渉は遅々として進まず、拉致被害者蓮池。地村氏の子息らと、曽我氏の夫と子息の帰還は暗礁に乗り上げたまま放置されたかのようであった。そこから本書の描く帰還交渉が開始されるのである。2003年9月自民党平沢議員と若宮氏、北朝鮮との窓口吉田氏の間で秘密裏に帰還計画が練られることになった。それがついに2003年12月20・21日北京会談につながる(第1次交渉)。場所は北京日航系ホテル京倫飯店、出席者は日本側は平沢議員、オブザーバーに「救う会」の西岡議員、民社党の松原議員、若宮氏、吉田氏、北朝鮮側は鄭泰和日朝担当大使、宗日昊外務省副局長、魯正秀副大臣補、通訳許成晢、安熙晢であった。最初はけんか腰の原則論で物別れだったようだが、翌日朝一番で宗日昊と平沢議員の交渉で打開の糸口が見つかった。宗日昊は「北朝鮮の面子が立つなら五名の子息を帰還させることは保証する」といったらしい。北朝鮮は核を切り札に国際社会から援助を引き出そうとしている。援助物質が尽きる度にのるかそるかの瀬戸際外交をやらなければならない。北朝鮮が本当に欲しがっているのは日本との国交正常化による安定した経済援助である。
(つづく)