ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

読書ノート 矢野絢也著 「黒い手帳-創価学会日本占領計画の全記録」 講談社

2010年02月25日 | 書評
創価学会の公明党支配とその政治目的の全貌 第1回

 矢野潤也氏は黒い手帳シリーズとして2冊の本を上刊されている。本書「黒い手帳-創価学会日本占領計画の全記録」講談社(2009年2月)と 「黒い手帳ー裁判全記録」講談社(2009年7月)である。「黒い手帳ー裁判全記録」は手帖奪取事件の経過と裁判記録を高裁判決勝訴(2009年3月27日)まで記したものであり、本書「黒い手帳-創価学会日本占領計画の全記録」より内容的には狭いが、時間的には新しい。したがって本書は手帳奪取事件については重複しているが、高裁判決結果は出ていない段階の書である。矢野氏は2005年5月の公明党OB3名による矢野宅における手帖奪取事件後、全面的に創価学会と争う事を決意され、矢野氏と家族は2008年5月創価学会を退会し全面的な訴訟に入ったのである。その意味で本書が元公明党委員長・顧問矢野潤也氏の創価学会との全面戦争の宣告書である。

 創価学会というと日蓮宗の一派という認識しかなかったが、本書と最近の自公連立政権の動きから見ると、とんでもないカルト宗教団体の恐れがなきにしもあらずである。カルト宗教(フランスではセクトという)といえば、あのオーム真理教の暴挙を忘れない。怪しげな金儲け新興宗教ならよくある話だが、それが教祖個人崇拝から入信者の全生活と全財産を奪い、教団の金権体質が強化され、金の力でさまざまな施設や活動を行い、そして世直し教義のために政界に打って出ようとし、人材を集めて各権力部署への浸透をはかり(警察、自衛隊、医療、政治家への接近)、都合の悪いこと(訴訟など)がおきればもみ消しや相手を抹消する暴力行為(弁護士家族殺害、裁判官舎サリン散布)にでて、世の中を恐怖させるために無差別テロ(地下鉄サリン事件)をおこして自滅した宗教集団であった。程度の違いと規模の大きさこそあれ、創価学会のやっていることはオーム真理教のやったことをはるかに知能犯的に大規模にやっているに過ぎない。仏教というものには何かいかがわしい権力願望と癒着が付きまとう。奈良時代に始まった真言・天台密教も祈祷まじないのインチキ宗教であり、鎮護国家という国家乗っ取り計画の実行であった。それは見事に成功し貴族は頭が痛いといっては坊主の加持祈祷をうけ、荘園などを寄付して寺の財政的基盤を提供した。それが日本の闇という中世を形成したのだ。奈良時代には天皇までなろうとした坊主が輩出した。そして鎌倉時代になって宗教の対象が庶民の救済ということになって浄土真宗などの大衆宗教が誕生した。ところが日蓮という僧が鎌倉幕府という国家権力の乗っ取りを試みた。日蓮と日蓮正宗についておさらいをしておこう。日蓮も「カルト」だという人もいるのだから。
(つづく)

読書ノート 五十嵐敬喜・小川昭雄著 「道路をどうするか」 岩波新書

2010年02月25日 | 書評
道路利権集団による日本国食いつぶしを阻止するには 第14回 

6)利権の壁を乗越えるには (1)

 2008年1月16日の産経新聞世論調査では、「道路の暴走」を止めるべきだという結果が66%と賛成派29%を上回った。欧州では道路特定財源の一般財源化はかなり昔に行われた。イギリスでは1937年に、ドイツでは1960年に、フランスでは1981年に一般財源化の法改正を行った。そして欧州ではガソリン価格は日本に較べてかなり高いのは(200円/リットル以上)、ガソリン税比率が高くそれが社会福祉や教育などに廻されている伝統があるからだ。日本のガソリン税率はガソリン価格の約45%であるが欧州では70%近くを占める。また通行料は欧米では無料であるが、日本では年間2兆5000億円も払っている。そのガソリン税と通行料金がすべて道路建設に廻され、福祉や教育に行き渡らないだけでなく小泉改革では毎年3%の削減が義務付けられているため、医療費・健康保険や年金を含め社会のセーフティーネットはもうズタズタになった。戦後50年以上道路は建設され続けているにも関らず、まだ35%は建設中だという。これは国土交通省の怠慢で計画が未達成ということではなく、計画の目標をその都度引き上げて、達成度を押さえ込んでいるからだ。あたかも馬の面の先のニンジンのようにいくら走っても追いつけない仕組みである。未来永劫高速道路を作り続けようとする政官業の利権集団の鉄のトライアングルを打ち破るにはどうしたらいいのだろうか。そこで著者は改革のための8つの提案をおこなった。

1) 欧米諸国が昔に実行したように、道路特定財源を一般財源化して国民のためにバランスの取れた財務構成とする。
2) 道路行政の中央集権主義にブレーキをかけるため、地方負担制を廃止し、補助金制度も廃止する。
3) 財源移動による地方分権を確立する。都道府県道・市町村道は地方の管轄とする。
4) 国土交通省の道路局などの職務は政権の指示によって計画原案を作成する。また地方の出先機関が行っている新設から修理までの業務は中止する。
5) 計画の閣議決定は廃止し、国会での審議と議決を必要とする。道路計画は「国家環境政策法」を作って、勧告と承認を得るものとする。国幹会議や審議会は全て解体する。
6) 官僚の天下りは全面的に禁止する。
7)高速道路の計画建設はいったん全て凍結する。再評価は特別委員会を設けておこなう。
8)道路問題緊急調査委員会を設置し、債務返済機構が抱えている40兆円の債務返済を確実に実行する。
(つづく)

月次 自作漢詩 「遊偕楽園」

2010年02月25日 | 漢詩・自由詩
浪砕常州東海濱     浪砕ける常州 東海の濱

尋香水戸阜園春     香を尋ぬ水戸 阜園の春

騒人偕楽梅千樹     騒人偕楽しむ 梅千樹
   
湖上波心月半輪     湖上の波心に 月半輪

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(韻:十一真 七言絶句仄起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)

CD 今日の一枚 シューベルト 「ピアノと弦楽のための室内音楽全集-4」

2010年02月25日 | 音楽
シューベルト 「ピアノと弦楽のための室内音楽全集-4」
アリオントリオ+クラウディオ・ヴェレス(ヴィオラ)、アンドラーシュ・シンシア(ダブルバス)
①「ピアノ三重奏曲」 D.929
②「ヴァイオリンとピアノのためのロンド ロ短調」 D.895
③「ピアノ四重奏曲のためのアダージョとロンド」 D.487
DDD 1989 BIS

私としてはシューベルトのピアノと弦楽重奏曲の音は好きになれない。暗くて活動的でないと思うからだ。ヴァイオリンソナタはいいと思うのだけれど。