ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

米国 原子力発電推進へ舵きり

2010年02月03日 | 時事問題
朝日新聞 2010年2月2日12時23分
米、原発建設費の政府保証を3倍に 新設への動きか
 【ワシントン=勝田敏彦】米エネルギー省(DOE)のチュー長官は1日の会見で、エネルギー効率が高い次世代原子力発電所新設時の建設費について、政府の債務保証を3倍に増額する、と発表した。オバマ政権は原子力推進にかじを切っており、1979年のスリーマイル島の事故以来止まっていた米国の原発新設が、約30年ぶりに動き出す可能性が出てきた。
 オバマ大統領はこれまで、温暖化対策の面から原子力の必要性を認めつつ、放射性廃棄物の処分や核不拡散の技術が確立していないことを理由に、原発新設には比較的慎重な姿勢だった。温暖化対策法案の議会審議が難航するなか、原発推進派の多い野党・共和党議員を取り込む意図も背景にある。

原子力発電推進派=民主党 石油派=共和党という理解はあながち間違ってはいない。地球温暖化問題は、実は石油派と原発派の戦いでもある。さてオバマ大統領はどっち?

関空、神戸、伊丹空港 三つ巴の舌戦 橋下大阪府知事苦戦

2010年02月03日 | 時事問題
朝日新聞 2010年2月3日5時1分
橋下知事 支持率79% 伊丹空港廃止案は賛否割れる
 朝日新聞社は1月30、31両日、就任2年を迎える大阪府の橋下徹知事について、府民を対象に朝日放送と共同で世論調査(電話)を行った。知事の支持率は79%と高い水準で、不支持率は10%だった。一方、大阪(伊丹)空港の廃止と跡地の整備、関西空港のアクセス改善という知事の構想に対しては、賛成44%、反対41%と賛否が割れた。

朝日新聞 2010年2月2日23時50分
「関空の方が失策」兵庫県知事、橋下知事に真っ向反論
 兵庫県の井戸敏三知事は2日の定例記者会見で「関西空港は大きな失策」と述べ、大阪府の橋下徹知事が先月の記者会見で「神戸空港は失策」と批判したことに真っ向から反論した。 高い着陸料のために国際便が来てくれず、ハブ機能を維持できない状況になっている。その方が大きな失策だ」と指摘。神戸空港については「関空とのからみで(夜間の発着制限などの)制約をつけて利用させないようにしている」と述べ、利用低迷は関空が原因との考えを示した。

テレビ型パフォーマンス知事は数知れずあったが、弁護士の橋下知事は破廉恥、馬鹿タレント知事の多い中で結構がんばっているようだ。手法は小泉元首相なみの劇場型政治であるが。

「陸山会」政治資金規正法違反 幕引きへ 小沢氏らは不起訴

2010年02月03日 | 時事問題
朝日新聞 2010年2月3日3時4分
小沢氏、不起訴の方向 4億円不記載で検察検討
 小沢一郎・民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地取引事件で、検察当局は、政治資金規正法違反(虚偽記載)容疑で刑事告発された小沢氏については不起訴処分(嫌疑不十分)とする方向で検討していることがわかった。元秘書の衆院議員・石川知裕(ともひろ)容疑者(36)と、会計責任者だった公設第1秘書・大久保隆規(たかのり)容疑者(48)を4日に起訴する見通し。元秘書の池田光智容疑者(32)については関与の度合いを慎重に検討するとみられる。

小沢氏問題は政治資金規正法の範疇では不起訴が常識、汚職事件へ結びつける証拠不十分で一件落着。
今後は政治的恣意的捜査をして世間を騒がした検察に批判が集まるだろう。

読書ノート 佐々木毅著 「政治の精神」 岩波新書

2010年02月03日 | 書評
政治を支える精神を、政治家、国民、政党の軸から読み解く 第11回

第2章 政治をする精神 (3)

 アダムスミスは「道徳感情論」において、貧乏より豊かな生活を望む人間本性に基づいて経済活動、社会活動の源泉を導いたが、自分の中にいる第三者の目すなわち同感を求める感情が社会関係の根幹にあると云う理論によって社会秩序の原理、いわゆる権威の原理の源泉を説明した。アダムスミスの「道徳感情論」の要約は堂目卓生著 「アダム・スミス」中公新書を参照してください。ウエーバーは「権力感情」はそれ自身が高揚感を政治家に与えるといった。権力感情は個人的な自己陶酔の対象となり、権力のために権力を愛するという自己矛盾をもたらす。その例が追従者、虚栄心を生むのである。アクトン卿は「権力は絶対的に堕落する」と断言する。権力の腐敗・堕落を防ぐには本人が賢明である以外にはない。政治と倫理の問題は権力感情と密接に関連している。ウエーバーは心情倫理と責任倫理の絶妙なバランスが政治家を律するものという。心情倫理を押し付けられてはたまったものではない。ドイツのカント主義者の「国家理性論」とニーチェの「倫理的ニヒリズム」のせめぎあいは、倫理の偽善性や自己欺瞞性を繰り返し批判してきた。
(つづく)


読書ノート 山口二郎著 「政権交代論」  岩波新書

2010年02月03日 | 書評
健全な民主政治には、政権交代が常に必要だ 第13回

アメリカ・イギリスの政権交代 (5)

 戦後労働党のアトリー政権は「揺り籠から墓場まで」というスローガンで福祉国家の基礎を築き、NHSの医療無料化を実施した。この福祉国家路線は1950年ー1960年代の保守政権にも受け継がれた。これを保守労働党のコンセンサス政治といわれる。福祉国家が国民合意の国是ということである。1970年代は労働運動が勃発して国民生活は麻痺し、1979年サッチャー首相の保守政権が非効率的な政府機能を改め新自由主義政策を採用した。サッチャー首相の「小さな政府」とは、福祉にぶら下がっている非効率的な既得権者を一掃して、経済的活力のある効率的国家に変えようとする意思であった。しかしサッチャーによる健康保険制度の破壊、教育の荒廃や若者失業者の増加、犯罪の増加によって格差是正社会への期待が高まって、1997年労働党のブレア首相が登場した。ブレアはまず金融政策についてイングランド銀行の独立性を確保し、労働者の利益重視、地方分権、世襲議員の廃止などの政治改革が続いた。医療再生については医療予算を増加し先進国最低という地位を脱した(今や日本が最低となった)が、サッチャー路線からの具体的な政策転換はいまいちはっきりしないので、ブレアは労働党の仮面をかぶった新自由主義者というレッテルを貼る人もいる。その最たる失敗はブッシュⅡの戦争政策への全面的協力姿勢である。ブレアの指導力はたいしたものであるが、負の遺産は政権運営至上主義がもたらした党の集権化と統制の強化であった。政権を維持するために理念や理想が曖昧になり、党の生命力や特色がなくなった。政権にしがみつこうとして組織は弱体化し、政権交代が早まるというジレンマにおちいった。
(つづく)