ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

医療問題:岐路に立つ薬事行政 独法PMDAは安全審査に全力を尽くせ

2010年02月11日 | 時事問題
JMM 第50回(2010年2月10日)「岐路に立つ薬事行政 PMDAは改革されるのか?」  東京大学医科学研究所 上昌広 より

 我国の薬事行政は薬害の歴史といっても過言ではない。サリドマイド、キノホルム、薬害エイズ、薬害肝炎など社会を揺さぶった事件をきっかけに厚労省の組織は新設・変更されてきた経緯があり、2004年3つの組織を合併して独立行政法人「医薬品医療機器総合機構」PMDAが発足した。このPMDAが医薬品と医療機器の審査を行っている。ところが厚労官僚はこのPMDAを自分らの手の内に戻すべく、「日本版FDA]という美名のもとPMDA潰しの暗躍を始めたのである。これを察した舛添元厚労大臣と民主党の仙谷氏が反対し、日本版FDA(アメリカ食品薬品安全機構)の構想は立ち消えとなった。PMDA515人の職員のうち、119人が厚労現役官僚の出向で、幹部41人中33名が出向組みで占められている。アンケート意識調査によると、専門職員はプロパーといわれ、キャリアー官僚の出向組みが支配するPMDA組織への不満を募らせているそうだ。この調査結果を公表するについても厚労官僚は陰に御用学者を使って反対したようだが、雑誌「選択」や週間ダイヤモンドの報道によって、この策動も封じ込められた。ドラッグラグを解消し、製薬メーカーの新薬開発のインセンティヴを増すため、新薬の価格を下げない「薬価維持特例」が昨年末の予算編成で認められた。これにたいしても厚労官僚は「薬価維持特例」を申請するメーカーに対して巨額の費用がかかる治験データを要求するなど、骨抜きを図っているが、中医協は患者と医療者、メディアの力で厚労省に変更を迫っている。今年4月以降に仙谷大臣は独法の仕分けが行われる予定で、PNDAや厚労省薬事組織は当然その対象に挙げられている。舛添大臣が任命し民主党政権でも信頼されている近藤理事長が、PMDA内で本気で薬害対策を行う文化を創るべく努力している。厚労官僚は患者の命よりも自分達の権益と組織の維持に汲々としており、そのちぐはぐな愚行がメディアの力で国民の前に曝露されてきた。


現場を知らない厚労官僚の間違った施策を改めるには、当事者と医療者、そしてメディアの協力が必要だ。

ホームレス自立支援センター入所者  若者が急増化

2010年02月11日 | 時事問題
朝日新聞 2010年2月11日4時0分
20~30代ホームレス急増 大阪は施設入所者の3割超
 大阪、東京などにあるホームレスのための自立支援センターで、20~30代の入所者の割合が急増している。大阪は全体の3分の1に達し、東京も4分の1近くが若年層となっている。リーマン・ショック前後の雇用情勢の悪化が、若年ホームレスを生み出していることをうかがわせる。
 市内5カ所に自立支援センターがある大阪市。支援の中身を検討するため、いったん希望者全員が入る自立支援センター「舞洲(まいしま)1」の年代別データによると、30代以下の割合は入所者500人では、33.2%と急上昇した。
 東京都内の5カ所の自立支援センターの30代以下の割合は、入所者計1154人でみると、23.9%に上昇。

どうして日本ではこれが暴動にならないのか。自己責任に転嫁したり、行動を起こすことに躊躇する必要はない。1960年代の安保闘争、成田闘争のように、若者のエネルギーでこの国を改めてほしい。平成維新がおきても不思議でないような社会不安に対して無気力ではどうにもならないよ!

柔道 谷亮子 復帰へ

2010年02月11日 | 時事問題
朝日新聞 2010年2月11日7時1分
谷亮子が11月復帰へ 世界選手権選考会の講道館杯
 柔道の女子48キロ級でシドニー、アテネ両五輪を連覇した谷亮子(34)=トヨタ自動車=が、11月の講道館杯全日本体重別選手権での戦列復帰を目指していることが分かった。10日、全日本柔道連盟の上村春樹会長が明かした。同大会は、2011年世界選手権(フランス)の代表選考(各階級2人)に向けての、第1次選考会となっている。

谷亮子に国内大会で勝っても、世界大会に出られないことが2回もあった。協会はアプリオリに谷を出場させるつもりなら、次を担う人は育たない。協会は谷に勝った人を世界大会に出場させることを約束すべきである。

読書ノート 蓮池薫著 「半島へふたたび」 新潮社

2010年02月11日 | 書評
北朝鮮拉致被害者の蓮池薫さんが翻訳者として自立するまで 第2回

 蓮池薫さんのプロフィールは簡単ではあるが本書末尾より抜粋すると、1978年中央大学法学部3年在学中に拉致され、24年間、北朝鮮での生活を余儀なくされる。2002年10月15日帰国後、新潟産業大学で韓国語の非常勤講師・嘱託職員として勤務するかたわら、中央大学に復学。2005年に初訳書『孤将』を刊行。翻訳者としての仕事をこなしながら勉学に励み、2008年3月に卒業。現在、新潟産業大学専任講師。翻訳書は「孤将」のほか、「ハル 哲学する犬」、「私たちの幸せな時間」、「もう一人の夫が欲しい」、など多数ある。著書には本書のほか「蓮池流韓国語入門」などがある。本書の紀行文は「孤将」の著者金薫氏、「私たちの幸せな時間」の著者孔枝泳女史、「もう一人の夫が欲しい」の著者の朴ヒョンウ氏の3人に面会するための訪韓旅行である。この訪韓旅行については私は何の興味もないので紹介しない。

 拉致被害者としてしか見られない蓮池さんに、このような文筆家としての再出発を知ってほしいという希望が新潮社の企画であろう。ではあるが、拉致事件はまだ全面解決したわけではない。私は拉致問題を、原田武夫著 「北朝鮮外交の真実」 筑摩書房(2005年4月)、若宮清著 「真相」 飛鳥新社(2004年7月)の本で読んだ。若宮氏は拉致被害者奪還交渉の舞台裏をかなり、真実味ある文章で公表した。その内容を一部紹介して拉致被害者救出交渉の概要とする。
(つづく)

読書ノート 佐々木毅著 「政治の精神」 岩波新書

2010年02月11日 | 書評
政治を支える精神を、政治家、国民、政党の軸から読み解く 第19回

第4章 政党政治の精神 (3)

 自民党の奇人小泉首相は自民党のみならず、政党政治一般への不信感から出発した。「政治主導」の担い手であった政党は力をなくして、不透明な反動勢力と見たようだ。「首相公選論」(アメリカの大統領制、地方自治体首長公選制)がでたのもこのような認識からであった。小泉氏の政治的資源は党内よりも世論支持率にあった。政治主導を「政治家主導」に置き換えると、政党主導よりはわかりやすいとみたようだ。政治家主導を更に「首相主導」と読み替えると更にわかりやすい。郵政民営化法案では首相と与党が対立するという構図も出て、一気に世論に訴えて選挙をおこなうという手に自民党は驚きうろたえた。その小泉後遺症が阿部・福田・麻生首相のトラウマになっているのだ。
(つづく)