ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

石油の需要が減り、精製設備能力過剰に

2010年02月16日 | 時事問題
朝日新聞 2010年2月16日8時43分
昭和シェル石油、精製能力削減へ 稼働率低下で1~2割
 石油元売り大手の昭和シェル石油は、原油の精製能力をグループ内で1~2割削減する方針を固めた。ガソリンや軽油などの販売が振るわず、設備の稼働率が下がって収益が悪化しているためだ。石油業界では、他社も精製能力の削減に踏み切り始めている。
 昭和シェルの2008年12月期の連結純損益は162億円の赤字。ガソリンや軽油、重油の需要が低迷し、販売量が減って利益を圧迫しており、09年12月期も2年連続の赤字になる見通しだ。

21世紀より石油精製能力は大過剰になり、精製能力を削って設備稼働率の向上に努めてきたが、最近はさらに稼働率も下がってきている。設備の廃業・整理に向かうだろう。原因はもちろん投機による原油価格高騰により、世界が脱石油へ向かっていることである。そして世界大不況により石油需要が大幅に減少したことだ。いずれ石油は枯渇するので、この傾向はファンダメンタルである。

読書ノート 矢野絢也著 「黒い手帳ー裁判全記録」 講談社

2010年02月16日 | 書評
創価学会と公明党による、元公明党委員長矢野絢也氏の日記奪取事件 第3回

 本書矢野絢也著 「黒い手帳ー裁判全記録」講談社(2009年7月刊)は同著者による「黒い手帳ー創価学会日本占領計画の全記録」講談社(2009年2月刊)と前編・後編の関係にある書である。そして本書は2009年3月の東京高裁の逆転判決を得て矢野氏と講談社側が勝訴(もちろん公明党OBは即控訴したが)した裁判の記録である。東京高裁の判決文は「控訴人ら(公明党OB3人)の要求を拒めば、『これらの多数の創価学会会員ないし公明党党員が被控訴人矢野およびその家族に対してどの様な危害を加えるかも知れない旨を暗示氏或いは明示的に述べて・・・このような発言内容に恐怖した被控訴人矢野が、やむなく控訴人らの要求に応じて本件手帖等を引き渡したことを認めることが出来る」というもので、地裁判決を根底から覆すものであった。本事件を複雑にしているの当時矢野氏と家族らは創価学会会員であり、宗教団体による心の呪縛の中にあったため、我々第三者が脅迫を受けるのとは随分心のスタンスが違っていることである。それを当事者間の「藪の中」で済まされない、創価学会側の露骨な言論弾圧の性格が見られるからである。なお矢野氏と家族は2008年5月創価学会を退会し、全面的な訴訟に入ったのである。本書に従って事件を簡単に振り返える。公平を期するには創価学会側の主張も聞かなければならないが、そこまで付き合っていられないので、あくまで矢野氏と講談社側から見た事件の見方で勘弁してください。カルト宗教団体の言い分を聞いているとこちらの頭がおかしくなるので精神衛生上省略したい。

 1995年にフランス下院が創価学会インターナショナル「SGIフランス」をカルト集団に指定し、報告書の中でカルト集団かどうか判断する基準として次の10項目を挙げている。この殆どの項目に創価学会は該当するのではないかと著者は言っている。
① 精神の不安定を与える
② 法外な金銭を要求する
③ 従来の生活環境からの隔絶
④ 肉体的損傷を与える
⑤ 子供の勧誘および教化
⑥ 反社会的な教え
⑦ 公共秩序の撹乱
⑧ 訴訟沙汰に持ち込み脅迫する 
⑨ 不法労働や詐欺、脱税など逸脱した経済活動
(つづく)

読書ノート 五十嵐敬喜・小川昭雄著 「道路をどうするか」 岩波新書

2010年02月16日 | 書評
道路利権集団による日本国食いつぶしを阻止する 第5回

猪瀬直樹著 「 道路の決着」小学館(2006年)

 道路公団民営化では本四公団に1兆3400億円の税金を投入するものの、基本的には新会社で自力返済を可能とする解決に至った。そして2005年10月1日五つの民営高速道路会社がスタートした。道路は日本の政治のタブーいや政冶そのものであった。まして道路公団が解体民営化されると考えた政治家がいただろうか。道路公団民営化委員会は徹底した情報公開で公開請求した資料に基づいて官政談合摘発し内田道路公団副総裁を逮捕させた。保有・債務返済機構には40兆円の債務が引き継がれ、分割民営化新会社は機構へリース料金を支払うことになる。「民営化への基本的枠組み」では機構は独立行政法人とし道路財産を保有し、会社に貸し付ける。リース料金を徴収して債務を返済する。機構は民営化後45年で解散するというもので、機構の職員は90名程度となった。また全国料金プール制はなくなり、東名の上がりは本四連絡橋には回さないことが基本である。1月20日には「民営化への基本的枠組み」に従った「民営化法案骨子」が政府より発表された。6月2日ついに道路公団民営化法は国会を通過した。

 今世界では100年に一度といわれるほどの金融危機が襲っている。この経済縮小の嵐のなかで、大きな影響を受けることなく、むしろ景気対策と称してより大規模に事業が進んでいるのが日本の公共事業である。公共事業と一体化した自民党の一党支配では日本の公共事業の見直しは一向に進んでいない。ダムや河川では一部欺瞞的見直し(停止中の計画の追認)が行われているようだが、全国の道路建設には未だブレーキがかからない。小泉内閣の「道路公団民営化」の際も、道路族は法案のの骨抜きに成功し、道路建設をこれまで以上に行える体制を確認して民営化に賛成したといわれている。これでは何のための民営化だったのかわからない。借金は国へあずけ、財源には政府保証をつけて、必要な道路(計画どうり全部必要といえばそれで済む)を自由自在に作れる体制を確認したに過ぎない。そして道路特定財源分は使いきろうと、道路以外のハコモノや都市再開発にまで金を使っているのである。これでは道路特定財源の余った金は一般財源へという閣議申し合わせは有名無実となっている。欧米では既に数十年前に道路特定財源化は廃止されている。日本の政官業の道路利権集団だけが国是とばかりに道路特定財源にしがみついているだ。2008年の福田政権の時の「ガソリン国会」では、「道路特定財源延長法案」と「暫定税率の維持関連法案」は衆議院2/3条項を使って成立した。これまで5年間の期限付き法案をなんと10年間に延長しようとするひどい法律であった。小泉政権の遺産である劇毒薬の効果に酔いしれた利権集団の動きである。小泉政権以来、阿部・福田・麻生と三代続いたお坊ちゃま内閣は、2009年から道路特定財源を一般財源化するという閣議決定を今日にいたるまで実現していない。「道路族恐るべし」である。かれらには公約という言葉はないも同然である。これでは政権交代に期待する以外にはない。
(つづく)

月次 自作漢詩 「春寒無奈」

2010年02月16日 | 漢詩・自由詩
闘草懶伸春未回     闘草伸るを懶って 春未だ回らず

江村二月峭寒催     江村二月 峭寒催す

啼鶯無奈微聞雁     啼鶯奈んとする無く 雁を聞くこと微く
  
雪岸南枝始破梅     雪岸の南枝 始めて梅を破る

●●●○○●◎
○○●●●○◎
○○○●○○●
●●○○●●◎
(韻:十灰 七言絶句仄起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)

CD 今日の一枚 シューベルト 「弦楽四重奏曲全集ー4」

2010年02月16日 | 音楽
シューベルト 「弦楽四重奏曲全集ー4」
①「弦楽四重奏曲 死と乙女」D.810
②「メヌエット」D.86
③「 メヌエットとドイチェ」D.89
ライプツッヒ弦楽四重奏団
DDD 1995 MDG

「死と乙女」はシューベルトの弦楽四重奏曲中の傑作で、自身の病に重ねた死の予感に貫かれた、暗い重い曲想である。「メヌエットとドイチェ」は愛らしい曲が10個集められたシューベルト初期の家族と仲間のための小曲集。