ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

読書ノート 島田雅彦著 「徒然草inUSA」  新潮社新書

2010年02月27日 | 書評
自滅するアメリカ 堕落する日本 第1回

 この本はなかなか変な本である。著者がいうように「私は経済学者でも政治学者でもなく、歴史を多少かじった文学者に過ぎないが、アメリカ帝国の落日を内部から見つめる機会を得たので、ここに徒然なるままに私が考えたことを綴った」とあるが、たかが1年ほど米国に留学したに過ぎないのに、通りすがりの人間が「内部から見つめる機会」とはオーバーな物言いである。これも文学的表現と解釈してやり過ごそう。要約すればオバマ大統領の誕生によりアメリカ帝国主義がどう変容するのか、野次馬的興味で暇に任せてぶつぶつ言っているのである。この作者(小説家)には「徒然王子」という散文があるが、とくに「徒然草」との関係はない。あえて徒然草との共通点を探れば、自分の専門をでて興味の対象が多岐にわたることであろうか。本書は分りやすい内容で多方面にわたる。その分突っ込みが浅く、系統的に論じて実証する論文風でない事が惜しい。文学者らしく感性的に政治経済歴史を述べているのである。このような島田雅彦氏とはどんな人物か、彼のプロフィールから入ろう。
 1961年、東京に生まれる。父親は共産党機関紙「赤旗」の記者。神奈川県立川崎高等学校を経て、1984年に東京外国語大学外国語学部ロシア語学科卒業。冷戦の中で、アメリカに反発しソ連に強く引かれたためロシア語を専攻したという。近畿大学文芸学部助教授を経て、法政大学国際文化学部教授。
(つづく)


読書ノート 矢野絢也著 「黒い手帳-創価学会日本占領計画の全記録」 講談社

2010年02月27日 | 書評
創価学会の公明党支配とその政治目的の全貌 第3回

 日蓮正宗とその分派である創価学会の関係をまとめておこう。1930年に、牧口常三郎、戸田城聖らにより、日蓮正宗の教義と牧口の「価値論」を合体させた教義を奉ずる教育団体として創価教育学会が設立され、初代会長には牧口が就任したが、日蓮正宗では信徒団体として認めなかった。太平洋戦争終結後、第2代会長に就任した戸田は、創価教育学会の名称を創価学会と改称し、以後、日蓮正宗も格段に発展することとなった。とりわけ、1960年の第3代会長池田大作(現・名誉会長)の会長就任以降、大石寺には、従来の法華講(旧来の檀家)と創価学会信者の寄進により大客殿や正本堂などが建立されるなど、長らく双方の間には蜜月状態が続いた。1970年代後期の昭和52年路線の教義逸脱問題を経て、1991年11月28日に、日蓮正宗宗門は、当時の第67世法主日顕の名前で創価学会を破門処分にした。しかし宗務院録事にも創価学会の組織結成を許可した事実が記載されていないため、日蓮正宗と創価学会は一致派日蓮宗と立正佼成会の関係と同じで、正規の信徒団体とはいえないとも指摘されている。一方、正信会、創価学会との対立のなかから、法主個人への絶対帰依や権力の集中を指摘する主張が生まれてきた。1970年代以降「下からの近代化」を目指す動きの中で試行錯誤しながら教団体質の民主化を進めてきたのと対照的に、日蓮正宗は伝統的に管長一人に権力をより集中させており中央集権制を維持していることが挙げられる。創価学会は、1990年(平成2年。正式な破門は翌1991年)に日蓮正宗に破門されて以来、日蓮正宗からの攻撃に多くの時間と労力を費やしており、「仏敵を責めること」が重要であるという立場から、聖教新聞などの機関誌では連日のように日蓮正宗への誹謗中傷を繰り返しており、特に前法主日顕を含む高僧に対しては、とりわけ激しい中傷が繰り返されている。日蓮正宗も創価学会も戦闘的なことは教祖由来で、口での攻撃以外にも放火、暴力沙汰の訴訟が絶えない。
(つづく)


月次 自作漢詩 「春昼寝」

2010年02月27日 | 漢詩・自由詩
冬去煙中梅吐芳     冬去り煙中に 梅は芳を吐き

春回風暖入新陽     春回り風暖に 新陽に入る

酔顔水畔半牀夢     酔顔は水畔に 半牀の夢
   
吟屋蕭疎一帳香     吟屋蕭疎 一帳の香

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(韻:七陽 七言絶句仄起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)

CD 今日の一枚 シューベルト 「アルぺジョーネソナタ」 ほか

2010年02月27日 | 音楽
シューベルト 「アルぺジョーネソナタ」ほか
①シューベルト 「アルぺジョーネソナタ」D821
②シューマン 「チェロとピアノのための幻想曲」 作品73
③シューマン 「民謡風の五つの小曲」 作品102
チェロ:ミッシャ・マイスキー  ピアノ:マルタ・アルゲリッチ
DDD 1984 PHILIPS

アルぺジョーネとはギターに似たチェロでヴィオラダガンバの音色がするそうだ。シューベルト 「アルぺジョーネソナタ」は本来チェロが主役でピアノの活躍する場は殆どないが、アマゾネスのマルタ・アルゲリッチがどうチェロを支えるかが聴き所。1824年の作品。シューマンのチェロソナタ幻想曲は夜の憂愁漂う曲風である。