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京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

大阪府子ども条例とPT案

2008-06-01 18:19:13 | アート・文化

http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200805300110.html

昨日の朝日新聞朝刊の記事では、やはり大阪府の国際児童文学館や府立青少年会館等の5施設が廃止の方向になったとか。父の入院・手術がらみで、まだ実家のゴタゴタはいろいろ続いているが、やはり、この問題については、少しコメントしておかざるをえない。

さて、大阪府には「子ども条例」というものがある。2007年3月に制定されたばかりのものである。この条例の趣旨について、大阪府民や府議会関係者、それから、府庁職員、そして府知事自体が、どれだけ理解しているのだろうか。

たとえば、大阪府子ども条例には、次のような文章が「前文」に登場する。

「子どもは、社会における様々な活動に参加し、年齢の異なる多様な人々と交流しながら、学んだり遊んだりすることを通じて、豊かな心、個性や創造性をはぐくむことができる。また、主体的に参加することによって、自分の思いや意見を表明し、同時に他者の思いや意見を受け止めることができる。」

あるいは、第三条の基本理念には、次のような言葉も登場する。

「子どもの尊厳を守り、健やかな成長を支えるに当たっては、子どもが社会における様々な活動に参加する中で、健やかに成長することを認識し、子どもに対する参加の機会の提供に努めなければならない。」

そして、第四条に定める府の責務では、次のように述べられている。

「府は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、子ども施策を策定し、国、市町村、保護者、学校等、事業者及び府民と協力して、これを実施する責務を有する。」

この大阪府子ども条例の中身を素直に読めば、まずそもそも、たとえば府立青少年会館などの青少年活動施設、国際児童文学館のような子どもの文化施設というのは、こういう子ども条例の理念に沿った活動を行う施設ではないのか、という思いに至る。

それから、大阪府は、子どもの参加の機会の提供という観点から、こうした青少年活動施設・文化施設を、府民や事業者、府下の市町村、国などの協力を得ながら、積極的にそれを維持・運営していく責務があると考えるのが自然なのではないのか。

大阪府の財政状況が厳しいこと、それをなんとかしなければならない問題であることもわかる。しかし、こうした条例があって、子どもの参加機会の提供ということが府の責務でもある以上は、まずは「どうすればその運営にかかるコストを削減しつつ、積極的に子どものための公共施設を維持していくことができるか?」ということを追求すべきであって、「廃止」すればいいというものではない。

逆に、こうした子どものための公共施設を「廃止」したあと、どのように大阪府は子ども条例の趣旨に沿って、子どもの参加の機会を提供していくつもりなのか。そのことについて、大阪府はどういう展望を持っているのか。そこを逆に、私としては問いたい。別の朝日新聞の記事で報じられたように、大阪府下の市町村に府が子ども施策関係の助成金を「一括補助金」として配分すればそれでいい、というようなことは、この子ども条例にはどこにも書いていないからである。

さらに、このことは、子どものための公共施設の「廃止」問題だけでなく、前にこのブログに書いた学校における子どもの権利擁護関係の事業、渡日生徒に対する支援事業や、その他ありとあらゆる大阪府の子ども施策のなかで、いま、PT案によって廃止・縮小されようとしている各種事業の「すべて」に共通することでもある。

そして、これも大阪府の子ども条例の趣旨に沿っていうならば、子ども施策を総合的・計画的に推進するためのプランづくりに際して、第10条で、「大阪府子ども施策審議会の意見を聴く」とか、「子どもを含めた府民の意見を反映させるための適切な措置を講ずる」と書いている。だとするならば、PT案の実施が本決まりになりそうな今の時点で、今までの大阪府の子ども施策は全面的な見直しを迫られているわけであるから、大阪府知事は、まず子ども施策審議会を開催し、「この財政危機の状況下における子ども施策の全般的なあり方」について諮問し、答申を得なければいけないのではないのか。また、その答申をふまえた新たな大阪府の子ども施策の原案については、子どもを含む府民への意見聴取の機会を十分に作って、その意見をふまえた修正を行わなければいけないのではないだろうか。少なくとも、私としては、そのように考える。

今日は最後に、マスコミ関係者の方、大阪府議会や府下各自治体の議会関係者、そして、大阪府下で子ども施策に携わる仕事に従事している公務員の方(それは大阪府行政、大阪市を含む府下市町村のいずれにおいても)や学校教員の方、子どもに関する市民活動や民間企業などでの取り組みに関わっている方、子どもに関する研究活動などに従事されている方、すべてにお願いしたい。

もしもこの私のブログの記事を見ることがあれば、「ぜひとも、この大阪府子ども条例を読み直して、PT案の問題点を子ども条例との対応の観点からも検討していただきたい」ということ。そして、子ども条例との対応面で、PT案に何か問題があることに気づかれたら、積極的に府知事に伝えていただきたい、ということ。

このことを、あらためてお願いしておきたい。

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