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京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

「なんじゃこれ?」の続き

2012-04-07 23:00:33 | ニュース

すでに「堺からのアピール」のブログ(http://blog.livedoor.jp/woodgate1313-sakaiappeal/archives/4957476.html)で紹介されていますが、4月5日付けで橋下市長に提出された特別顧問らの調査チームの報告書については、私、中身を読んでみて、内容に「???」と疑問のつくことばかりです。なお、報告書それ自体については、こちらの大阪市ホームページから見ることができますので、お知らせしておきます。

http://www.city.osaka.lg.jp/jinji/page/0000161367.html

これを読んで率直に思ったことを、「堺からのアピール」ブログに出ている話と重複しますが、以下のとおり書いておきます。

(1)この最終報告書が、わざわざ関市長時代の改革の不徹底から書き出すことで、平松市長期にあらためて「労組と市当局との癒着が温存された」もしくは「復活した」という印象を出そうとしているかのように受け止めました。と同時に、今、進められている大阪市職員や労組へのさまざまな攻撃が、関市長時代に行われた攻撃の延長線上に位置づくものだということを、あらためて実感してしまいました。そしてこのようなことを書くと、特別顧問の弁護士らのチームの後ろに、そういう関市長時代あるいはそれ以降に市職員や労組を攻撃してきた人たちの意向がありそうだ、ということを、逆に浮かび上がらせてしまうように感じました。

(2)次に、この報告書を読むと、労組への市当局からの「ヤミ便宜供与」や「ヤミ専従」、あるいは「人事介入」の問題などが大きく取り上げられるような形になっています。でも、多くの人が、例の市職員や労組の政治活動に関するアンケートのことを知っていますし、それに回答するようにという市長の指示が出たこと、そのアンケートの結果が特別顧問らの調査チームにわたる予定だったことは知っています。そして、そのようなアンケートに対して弁護士会などからの批判声明が出たり、府の労働委員会からも「思想調査だ」「不当労働行為の疑いがある」として、調査続行を控えるように勧告されたことも、多くの人が知っています。このような報告書の内容は、やはり、自分たちの調査目的が「頓挫した」ということを物語っているのではないかな、と思います。ちなみに、報告書19ページには、「もちろん、労働組合が政治活動を行うことは否定されないが、ここでもまた、ルールに違反した選挙活動があれば問題となる」という指摘もあります。とすれば、そもそもの調査自体に無理があったのではないか・・・・と思いました。

(3)その「ヤミ便宜供与」とする内容を報告書から見ても、どこの倉庫や空き室にどういう形で労組のモノが置いてあったというようなものが中心。それは確かに問題かもしれないが、「だからどうなの?」という代物。「こんなことを調べに、市役所内の各部署をまわったのですか、調査チームのみなさま、本当にごくろうさま」と、あきれていうしかない話です。「ヤミ専従」についても、よく読めば、主な話は職場レベルで、労組の役員が日々の活動と勤務とを両立させやすいようなシフトを組むとか、そういうレベルの話ですよね。全く勤務してないならさておき、一応、仕事してますからねぇ・・・・。「それって、どこがダメなんですかね?」という印象を持つ人もいるのではないでしょうか。この部分は、ほんとうに「しょぼいな」という代物です。

(4)新聞等のマスメディアでは大きく騒がれましたが、副市長や区長など市の幹部級職員が中心となっての選挙応援などの動きですが、これについても、報告書の41~42ページで、一方で市職員としての中立性を欠くという言い方をしていますが、同時に「一方で、これまでの調査では地公法や公選法において規制される政治活動に明確に該当するような行為があったとは評価できない」ということも書いています。また、秘書部が前市長のスケジュール把握・調整を「候補者としての調整」(39ページ)というような形で書いてますが、現職市長が市長選に出ている以上「これって仕事ですよね、秘書部の?」というしかないです。さらに、37ページあたりの大阪都構想へのQ&A作成が「選挙支援」みたいな書き方になってますが、大阪市民から市役所へ「都構想ってどういうものなの?」と問い合わせがあれば、それに一定、対応するのも市役所の仕事だと考えれば、すべてが「選挙支援か?」といえば、そうでもないでしょう。要するに、大阪市役所が幹部級以下、前市長の支援を選挙時にしていたというイメージをできるだけ強く打ちだしたい、そういう動機があることを、報告書のこのあたりの内容からうかがい知ることができました。

(4)例のねつ造リスト問題に関して、この調査チームの報告書の65ページには、「杉村議員も半信半疑であったようであるが、最終的にはテレビ放送・市会での質疑への進んでいったようである。杉村議員の年齢及び経験から考えれば、自らテレビ局を動かすことは難しいものと思われ、どこかの段階で、幹事長クラスのサポートがあったものと考えられる」と書いています。ここを本当はもっと深く追及すべきではなかったのかと思うのですが、そこはこの報告書、追及をしていません。もしも大阪維新の会の市議団が、市の非常勤職員から提出されたリストを「ねつ造」の疑いありと考えながらも、そこを慎重に検討することなく、テレビ局を動かしたり、市議会でそのリストをもとに質問したりしたのであれば、そちらのほうが大問題です。

(5)そして、この報告書の65ページ下から最後の66ページにかけて「提言」がでていますが、この6項目の提言の内容が、正直なところ、あれだけ大騒ぎした調査のわりには、実に陳腐。「しょぼい」というしかありません。「労使癒着」や「官民癒着」の是正、議員の口利きの排除、行政行為と政治活動の区分けのルール化、随意契約のチェックなどが主な提言ですが、「これって、あんな大がかりな調査なしには言えなかったことなの?」と思います。

(6)また、この報告書では、職員の処分に関して、66ページの提言部分で次のように言います。「今回の報告を踏まえ、処分に値する職員がいるかどうかについては、より丁寧な事情聴取を行う必要があるが、現時点においては、大阪市職員人材センターで待機している6名の職員の行為は一部不適切な行為はあったものの、違法とまでは言えないものと考えられることから、今後の処遇について早急に検討されたい。」だとしたら、この6名、早いこと人材待機センターにいる状態を解消しなければいけないのではないでしょうか、橋下市長? また、この提言が市長部局だけでなく市教委所属の教職員にもあてはまるのであれば、「より丁寧な事情聴取」ということには、たとえば卒業式などの国旗国歌問題での被処分教職員にも該当しますよね? 自分の呼び寄せた特別顧問がこのように調査結果をふまえておっしゃってるわけですから、橋下市長、ちゃんと言うこときかないといけないのでは?

ということで、「なんじゃこれ?」の続き、終わります。

なお、昨日のニュースやツイッター上で流れた話では、特別顧問らのチームがあずかっていた例の市職員へのアンケートのデータが一応、破棄されたようです。ただ、これもバックアップのデータなどがこのチーム関係者のパソコンやCDなどのなかに残っていないか、検証が必要ではないかと思われます。今後、この特別顧問らの調査がどのように行われてきたのか、その検証もあわせて行った方がよさそうな気がします、いろんな意味で。

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