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できることを、できる人が、できるかたちで

京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

知人が「公開質問状」を出しました。

2009-01-21 07:22:46 | ニュース

私の知人たちが昨日、下記のような「公開質問状」を大阪府知事・府教委に対して出しました。「公開質問状」ということなので、彼らの出した文書をここに掲載します。(なお、このブログにあうようにレイアウトは一部修正し、連絡先などを書いた「付記」は削除しました。)

一読した私の印象を言いますと、「実に立派な質問状」というか、大阪府知事や府教委が今、進めている教育改革の動きに対して、障害のある子どもたちと日々生活をともにする立場から、何が、どのようにおかしいと考えているのかを、実に要点をおさえて、的確にまとめた文書だと思います。

なお、この「公開質問状」を出すにあたって、下記の構成団体のみなさんは、マスメディアに対して記者会見も行ったと私は聞いています。

そこでマスメディアのみなさんに特に言いたいのですが、今後は、今の大阪府下ですすめられている教育改革について、大阪府教委あるいは府知事サイドから流れてくる情報をそのまま伝えるのではなく、このように「別の視点」もありうることを含めて、新聞・雑誌の記事やテレビのニュース番組などで伝えていただきたい。

そういう手間ひまをかけずに、府教委や府知事サイドから報道発表という形で流れたり、あるいは府知事の「ぶらさがり」取材で得られる情報を流すだけで満足していると、マスメディアは単なる「大阪府庁の広報機関」になりさがってしまいます。

そして、マスメディアが「大阪府庁の広報機関」にならないためにも、たとえ小さい声であっても、今の大阪府の教育改革の動きに対して「何か、おかしいのではないか?」という人々の声に耳を傾けるとともに、「何か、府知事や府教委サイドから出てくる情報には、おかしいところがあるのではないか?」と、マスメディアの側が常に「疑い」の目を持つこと。つまり、批判精神を常に維持するということが大事だと思います。

ついでにいうと、テレビが視聴率向上のために「絵になる」ことばかりおいかけて、連日、府知事が何か言っていることをそのまま流しているようなニュース番組を作ってばかりいると、そこから批判精神が弱ってくるように思います。なにしろ、今までも何度かこのブログで書いてきましたが、私の印象では、マスメディアは今、大阪府の行政改革や教育改革への支持を動員するために、うまく利用されている節が濃厚ですから。

それとともに、おそらく、個々にはいろんな折衝などを行っているのだと思うのですが、例えば教職員組合や公務員労組、民間企業の労組、解放運動など人権にかかわる運動などが、大阪府の行政改革や教育改革の動きに対して、具体的にどんな働きかけをしたり、異議申し立てをしたりしているのか。その動きをもっと社会的に、誰の目にも明らかなように、オープンにしていく必要があるのではないでしょうか。でなければ、マスメディアを自らの施策への支持とりつけのために駆使している側には、なかなか対抗できないように思いますので。せめて、インターネット空間上での取り組みだけでも活発にしないと・・・・。

最後に、今回、質問状を出されたみなさん、これからも粘り強く、日々の活動を続けてください。と同時に、今後も大阪府下の教育改革の動向を見ながら、気づいたことを積極的に情報発信しつづけてください。

<以下、公開質問状の文面>

2009年1月20日
大阪府知事 橋下 徹 様

「共に学び、共に生きる教育」日本一の大阪に! ネットワーク
(構成団体) 知的障害者を普通高校へ北河内連絡会
「障がい」のある子どもの教育を考える北摂連絡会
障害者の自立と完全参加をめざす大阪連絡会議
高校問題を考える大阪連絡会 等 122団体
代表:鈴木 留美子

障害のある子も、ない子も「共に学び、共に生きる教育」をもっと充実発展させるための公開質問状

 橋下知事は就任以来教育に大きな関心を持たれ、発言されてきました。次々に打ち出される施策やプランを読むうちに、私たちは次第に不安を感じるようになりました。成果主義・競争主義に立った教育の中に、障害者もきちんと入っているのだろうか?知事のお考えの中には障害児・者は最初からイメージされていないのではないかという疑問です。このままでは能力主義の教育が推し進められ、大阪の進めてきた「共に学び、共に生きる教育」が否定されていくのではないかと思うのです。実際、府民討論会(2008年10月26日)の場で知事が明確に否定されたにもかかわらず、「全国学力テストから障害児を排除している実態」が私たちの耳に届いています。
これまで多くの府民の要望にこたえ、大阪府と大阪府教育委員会は障害のある子もない子も、地域の公立学校で共に学びあい、育ちあう教育に誠実に取り組まれてきました。私たちは、大阪が全国に先駆けて取り組んできた「共に学び、共に生きる教育」は、これからの社会や時代を創造するための教育の原点であり、かつ目標となるべきものと考えております。障害児が「明日も行きたい!」と思える学校は、だれにとっても学ぶことが楽しく、暮らしやすい学校です。そんな学校こそが「学力日本一」を超えた真の「日本一」、いや「世界一」の魅力ある公立学校ではないでしょうか。
私たちはこの「共に学び、共に生きる教育」をさらに充実発展させていくことこそが、「大阪の教育日本一」を実現する大きな柱になると確信しています。

私たちは以上のように考え、知事の協力も得ながら「共に学び、共に生きる教育」を未来に生かし、伸ばしたいという思いから、以下の通り質問いたします。誠実にお答えいただきたくお願い申し上げます。
なお、回答は文書にて2月20日までにいただけますようお願い申し上げます。

質問事項

1.障害児・者を一般の学校教育や生活の場から切り離して、「分ける」ことをどのようにお考えでしょうか?
●障害者の「完全参加と平等」を唱えた国際障害者年から30年近くたつ現在も、特に「重度」といわれる障害児・者は、生活の場を施設や福祉的就労に限られがちで、社会参加の道を固く閉ざされています。その根底にあるのが、そもそも学校教育の場で、いまだに多くの障害児が、一般の子どもたちから切り離された「支援学校」(養護学校)、「支援学級」(養護学級)で学んでいることです。今後、どんなに重い障害があっても、地域で自立して生きられる社会を実現するには、まず障害児・者を「分ける」発想を変えなければならないと私たちは考えますが、知事の考えをお聞かせください。

2.障害児が地域の学校へ就学することをどのようにお考えでしょうか?
●大阪の教育現場では、重い障害のある子どもも校区の学校で受け入れ、障害のない子どもたちとともに学ぶ環境づくりが積極的に進められてきました。障害児が「支援学校」に就学すると、校区の学校に就学する場合の10倍の費用がかかることをご存知でしょうか。
●「支援学校」を地域のリソースセンターなどに縮小し、すべての子どもを地域の小・中・高等学校で受け入れるほうがより公平であり、対費用効果も優れていると思われませんでしょうか。また、政府が批准に向けて動いている、2006年12月に国連で採択された「障害者権利条約」が言うインクルーシヴ教育(誰も障害を理由として排除されない教育)の趣旨に適うものだと思われませんでしょうか。
●地域の小・中・高校で障害児が学びやすい環境を整えるよりも「支援学校」をより充実発展させる方がよいとお考えなら、その根拠をお示しください。

3.「学力テスト日本一」になるために障害児が排除されている実態を把握されていますか?
●全国学力テストを実施する際、障害児のみに参加の意思を聞いたり、障害児の点数を合計得点からはずしたりするなど、障害児を排除している例が、府内の学校でも見られます。各市町村が学力テストの結果を較べ、点数を競い合うことになれば、ますます障害児の排除が進むことになると思いますが、どのようにお考えでしょうか。

4.能力主義、競争主義、成果主義の教育から、子どもたちが目を輝かせて取り組む学習が生まれるでしょうか?
●習熟度別クラスや、百マス計算などの一斉反復学習、学習塾の講師を入れると言われている「夜スペ大阪版」の「まなび舎」事業では、障害のある子どもたちはどこに行けばよいのでしょうか。例えば3学級を4つの習熟度別クラスに分けた場合、障害児は「最下位」のクラスに入るのでしょうか、支援学級に入るのでしょうか。これでは障害児のみを分離する特殊教育に舞い戻ってしまうのではないでしょうか。
●(障害児だけではなく)子どもたちの間にますます格差が広がり、格差が固定されるのではないでしょうか。
●能力主義や競争主義の教育からは、子どもたちが目を輝かせて取り組む楽しい授業、学びあう授業、お互いにちがいを認め合い支えあう集団づくりは生まれないと私たちは考えます。とりわけ競争や成果主義になじまない障害児は、集団自体から排除される恐れがあります。知事はどのようにお考えでしょうか。

5.子どもたちが地域社会で、たくましく心豊かな人間に育つためには、何が必要でしょうか?
●障害児がともに学ぶ学級では、クラスの雰囲気がやさしくなることを、私たちは過去の経験から実感しています。それは、障害の有無を越えて日常的にふれあう中で、社会には多様な人々がいることや、困ったときにはあたりまえに手を差し伸べる支えあいの関係を自然と学ぶからです。「共に学び、共に生きる教育」を進めることが、点数だけでは計れない真の学びを保障し、子どもたちの豊かな人間性を育むことになると私たちは考えていますが、知事はどうお考えでしょうか?

6.大阪の「共に学び、共に生きる教育」は現状で十分な領域に達しているとお考えでしょうか?
●多くの障害児が地域の学校であたりまえに学んでいることでは、大阪は“日本一”であるといわれています。そのことについて、これまで府と府教委が取り組まれてきた努力に対して、私たちは感謝しております。しかし、まだまだ課題はたくさんあると思います。今後、障害のある子もない子も、すべての子どもたちにとっての「共に学び、共に生きる教育」を充実発展させていくために、不十分な点や課題はどんなことだと思われますか? あわせて今後の方向性も明示ください。 

7.府と府教委が出されている施策やプランには、障害児は含まれていますか?
●真の「教育改革」は、障害児はもちろん、すべての子どもにとっての改革であることが大前提であると、私たちは考えています。もし障害児は別枠とお考えなら、その根拠をお示しください。

(付記は略)

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