できることを、できる人が、できるかたちで

京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

「つづりかたきょうしつ」その3

2011-03-02 21:14:24 | アート・文化

いきなりタイトルが「その3」になっていて、不思議と感じた方もおられるかと思います。ただこのテーマ、すでに過去2回、このブログの「追記」の形で書いていたので、その続きということで「その3」とさせていただき、独立してこれからも時々、書いておこうと思います。

過去2回「追記」で書いたときもそうだったのですが、このブログをよく見ておられるある方が、この「つづりかたきょうしつ」というテーマで書いている文章を、けっこう喜んで読んでおられるようです。これはたいへん、ありがたいことですね。

それで、前々からこれは思っていたことなのですが、各地で子どもの人権関連の市民運動ですとか、あるいは識字教室や子ども会、若者のサークル活動等々、学校の外での人権教育系の取り組みに関わっている人たち。こうした人たちを主な対象として、人権教育や子どもの人権関連の文献ですとか、人権関係の法や国際条約などをきちんと読み、それをふまえて自分たちの日々の活動や運動を位置づけなおすような文章を書く。あるいは、過去の活動や運動の記録・報告集などをきちんと読んで、それを参考にして、自分たちの今の活動の記録や報告を書いてみる。そんな感じで、「運動」に関わる人たちのための「読み書き教室」のような取り組みが、今、必要とされているのではないか・・・・。そんなことをこのところ、強く感じるようになっています。

研究者が研究者のために文献を読み、文章を書くトレーニングをする。そういう場は大学や学会などを中心に、いろいろあるでしょう。でも、たとえば市民運動の担い手の人たちが、自分たちの運動をよりよくするための「読み・書きの力」を磨く場というのは、案外「ある」ようで「ない」のかもしれません。

なにしろ、そういう運動のための「読み・書きの力」というのは、研究者にとって必要な「読み・書きの力」と重なる部分もありますが、やはりどこか「ずれ」があるのではないかな、と思ってしまうのです。たとえば国や自治体の行政だとか、国会や自治体の議会に対して、何か自分たちの運動の主張を訴えかけるような文章は、研究者が学会で自らの主張を展開するための文章と、どこか文章のスタイル、つまり「文体」が異なってくると思うのです。

おそらくそういう文体のちがいは、ひとつは「誰に自分の意見を伝え、わかるように書くのか?」という、「想定する読者のちがい」によって生まれてくるのではないかと思います。研究者相手に書くのか、行政職員や自治体議員を相手に書くのか、地元住民や支援者を相手に書くのか、自らの主張に反対する運動体にものを言うのか・・・・。それによって、文章の書き方は微妙に違ってくるでしょう。

また、それぞれの運動体の内部で、どういう議論を積み重ねていくのかによって、論理の構成や選ばれる言葉もちがってくるのではないでしょうか。それこそ、同じ団体のなかにもいろんなグループがあって、そのなかでの意見のすりあわせなどによって、ことばの使い方が変わってくることもあるでしょう。また、何か原案を検討する委員会などができた場合は、そこで意見をとりまとめする役の人と、そうでない人との間で、ある文書ができあがるまでにいろんなせめぎあいがあるでしょうしね。

あるいは、運動体の側から出す文章には、そこに当事者の熱意だとか願いだとかが強くこもっていて、そういう感情的なものを抑えて書く文章とはちがう何かが文体にもでるでしょう。そして、その運動体が出す文章には、その運動体を取り巻く社会情勢だとか、その運動体が背負ってきた歴史的な経過がいろんな形で詰まっているでしょうし・・・・。

このように考えていくならば、「研究者として文献を読み、書く」というのとは別に、子どもの人権や人権教育に関わる「運動」のメンバーとして文献を読み、書くというトレーニング。そういうことが、まさに「おとなのための学びの場」、運動にかかわるおとなのための「読み書き教室」として形成されることがあってもいいのかな・・・・。そんなことを今日、あらためて思いました。

もっとも、研究者が研究者を相手に読み、書く文章も、研究者間のいろんなせめぎあいのなかで生まれてくるものですし、行政の審議会や調査研究協力者会議などの文章も、それが出てくるまでのプロセスで、きっと内部でのさまざまなせめぎあいがあるのではないでしょうか。

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