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京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

本当にこの内容の報告書でいいのかしら、外部監察チーム??

2013-02-14 15:03:13 | ニュース
http://www.asahi.com/national/update/0214/OSK201302130176.html?tr=pc

(朝日新聞デジタル:桜宮高体罰問題、大阪市教委外部監察チーム報告書全文:2013年2月14日)

大阪市の高校での「体罰」が背景要因にある子どもの自殺について、弁護士による外部監察チームがまとめた報告書の内容が、この朝日新聞デジタルの記事でわかります。
ただ、これ、どこをどう読んでも、亡くなった子どもの自殺に至る事実経過と背景要因をていねいに検証した報告書という感じがしません。
むしろ、遺書などをてがかりに、顧問が亡くなった子どもに加えた暴力が「公務員の懲戒免職処分事由」に該当するかどうかという、その一点にしぼって事実経過を調べた報告書だという印象が強いです。
もちろん、他の自治体での報告書の例からいえば、この内容・このレベルのものすらまとめてこなかったところもあるので、一歩前に進んだといえる面もあります。
しかし、ケースはちがえども、大津市の第三者委員会の報告書のあのボリューム、内容を知る身としては、やはり「スカスカ」と言わざるを得ないのが実情です。
たとえば、亡くなった子どもの周囲に居た部員たちの様子とか、その子たちからは今回の事件がどう見えていたのか、とか。そういったことは今後、在校生、特に同じ部活に居た子どもたちへのケアという観点から、きわめて重要な調査課題になるはずです。
また、顧問の過去の体罰については、学校内で、さらには市教委としてどのように扱われてきたのかとか。このことは、今後、同様の被害にあった子どもへの対応について、学校や市教委のあり方を問い直し、適切な救済システムをつくっていく上で重要なことのはずです。
あるいは、この顧問が高校スポーツ界でかなり実績を残してきた人であるならば、そのことをスポーツ界関係者はどう見ていたのか。スポーツ推薦入学のシステムや学校に対する社会的な評価と、この部活の実績との関係はどうだったのか、とか。
こうした背景要因にあたる事情は、この報告書からはあんまり見えてきません。
むしろ、あくまでも、この当該顧問を徹底的に「悪」として描きだし、そこにすべてをひっかぶせて、懲戒免職で一応決着をつけよう、そんな意図のうかがえる報告書です。
それこそ、やったことは当然、ダメだと言わざるをえないとしても、この顧問が子どもに暴力をふるいながら部活指導に励むようになった経過、そして、それが長年続いてきた経過、というものがあると思うのです。ですが、そこについては、外部監察チームは関心の対象外、ということなのでしょうか。もしも「我々はあくまでも公務員の懲戒処分事由についての検証をするチームなので・・・」と外部監察チームが言うのであれば、早急に別の再発防止策をつくるために事実経過を検証するチームが必要だと思います。
私としては、本当に再発防止や在校生へのケアに努める意志が大阪市教委、さらに市長にあるのなら、むしろこの報告書にはあがってこない背景要因の部分に向き合うことが重要だと思うのです。
今後、それができなければ、対外的には「これで決着付けた」と市長や市教委が言うとしても、きっと在校生やその保護者、あるいは他の教職員も、そして市民も、「これでほんとうにいいの?」という思いが芽生えるだけで、納得しない、釈然としない思いばかりが残ると思うのですが。