今日の草履は、彩シリーズ27cm土踏まず付き〔四阡五百円〕
ブルー基調の葉っぱプリントをベースに、合わせは黄色です。
先回と近い配色になってしまいましたが、同じ「青系」でもこちらの草履は可愛らしく感じますね。男性用サイズ27cmでも、可愛いものは可愛いです。平生地はこちらになります。
男鹿市のご出身で、現在は仙北市内にお住まいというおばさま。ご友人との待ち合わせで西宮家へお越しでした。展示パネルの草履を眺め、土踏まずの盛り上がりを見つけると、『おやぁ、あたしは昔から偏平足だがら、こういうのを履けばイイべものぉ』。
偏平足の方とのおしゃべりは案外多いです。日常に大きな支障はないようですが、専門家の話によると高い所から飛び降りる行為はやめたほうがイイようですね。いわゆる土踏まずのアーチが緩衝材の役目をしますから、偏平足の方は足から背骨へのダメージが大きいという解説でした。
この話をおばさまにお教えすると、それまでの笑顔がすーっと引くのが分りました。
『もう50年も前になるぅ、親類の家サ泊まってるとき火事に遭って、夢中で二階がら飛び降りだもの。そしたら足は大丈夫だったのに背骨が折れでしまって、それがら5年間台無しにしたったぁ。それも偏平足が災いしたのがも知れねぇなぁ』。
今年70歳を迎えるというおばさまは、二十歳という最も若さが美しい時代をこの怪我のせいで台無しにしてしまったと言います。そしてさらに追い討ちをかけたのが主治医の言葉、『出産は無理だがら、結婚も諦めねばダメだなぁ』。
50年前の日本を推し測るに、子どもを産めない女性と結婚する男性はそうそういなかったでしょう。おばさまの波乱万丈の人生はなおも続きます。
『子どもはダメって分ってても一緒になってくれる人がいで、結婚できだったもの。それがら男の子ひとりにも恵まれだぁ』。
人の不幸も幸せも、いつどんな形で起こるか分らないものです。『なんと良がったねっ』と言うと、『それが旦那さん、若くして死んでしまったものぉ』。
さらにひとり息子さんは、事情があって一緒に暮らしていないとのこと。ここまで聞けば、確かにおばさまは幸が薄いと思ってしまいました、それが…。
『ひとりで死んで行ぐんだど思ってらば、一緒に暮らすべって言ってくれる人がいでなぁ。その人とふたりでこの土地サ来たもの。70歳過ぎでも仕事続けてる、イイ人だぁ』。
波乱万丈の人生を送ってきたおばさまも、齢70歳を迎えて穏やかな生活を手に入れたんですね。
おばさまと私が一致した意見は、『いろんたごどがあるどもよ、今生きてるのがすべてだなっ』。
26日と27日の二日間、病の叔母夫婦を主賓に総勢9人の身内で、体に負担がかからない距離の温泉へ一泊旅行してきます。
「今生きてるのがすべて」、残り少ない時間をかみしめる旅です。