角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

連れ出す口実。

2009年02月27日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ22cm土踏まず付き〔四阡円〕
紫基調の桜花プリントをベースに、合わせは紫です。ベースは昨日の「今日の草履」と色違いですね、綺麗で優しい配色と思います。
「おまかせシリーズ紫系」にお届けしたい今日の草履、平生地はこちらです。




すっかり春の陽気になりました。風も穏やかに青空が広がれば、外のほうが暖かい時間帯さえあります。人が歩かない場所に積もった雪も、はっきりと融けていくのが分ります。これから一度や二度の降雪はあるでしょうが、まず当地も「春」と呼んでイイでしょう。

東京からお越しの母娘ペアさん、お母さんは70歳代でしょうか。娘さんが草履を気に入ってくださり『お母さんも好きな色選んでっ』と言うと、『あたしはイイからあなた買いなさい』とお母さん。お二方ともその口調から優しいお人柄が分りました。

娘さんが、『お母さんも履いたほうがイイわよぉ、いつも足の具合を気にしてるんだからぁ』。私がお母さんに、『足が悪いって言っても、こうして旅に出られるくらいだから大したことはないんでしょ?』とお訊ねすると、『もう歳だから出不精になっちゃってねぇ』。
すかさず娘さんが私に、『こうして旅行するのも、お母さんを連れ出す口実なんですぅ』。

2008年5月25日のブログにも、こんなお話を書いています。子どもというのは、親が年老いていく姿を決して嬉しく思いません。そんなことは願っても無理と知りつつ、いつまでも元気でうるさい親を望んでいるんじゃないですかね。
このときの娘さんも今日の娘さんも、母親に「旅」を提供することで元気のきっかけを掴んで欲しかったんでしょう。

不治の病と闘っている私の叔母、気丈に感じるときもあれば、すっかり弱音を吐くときもあります。先日実演をお休みしたのは、大学病院へ検査に連れて行くためでした。車中で約束したのは、ゴールデンウィークが過ぎて一段落したら、近くの温泉へ叔父と共に遊びに連れて行くことです。

叔母を温泉へ「連れ出す口実」、それはもはや必要ではありません。

コメント
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