角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

モノは大切に…。

2009年02月09日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔四阡円〕
金色基調の菊花プリントをベースに、合わせはエンジです。拡大写真ではベースの金に赤も見えますが、出来上がった草履を少し遠めに見ると、まるで「金色草履」なんですね。このたびの東京仕入れに目指したのは、ひとつにこの金色草履を編むための布地だったんです。「神々しい草履」、なんだか拝みたくなりますね。
平生地はこちらです。



八日ぶりの実演再開、これだけ日が開くといつもの実演がちょっと新鮮に思えますね。明日あたりから当地では冬祭りが相次ぎます。そのせいもあるんでしょうか、真冬の平日にしてはお客様の姿が多く感じられました。晴れとまでは言えないにしても、気温も高めでこの時季としては散策日和でしょう。

東京からお越しのご夫婦旅、そろそろご定年といった年代でしょうか。始めにご主人が入って見え、『あ~、草履だぁ』。続いて奥様もお見えになってしばし眺めてお出ででした。間もなくご主人は米蔵の中へ、奥様はその後もしばらく私と草履談義に花を咲かせていました。

やがて奥様も米蔵に入って行くと、間もなくご主人ひとりが実演席へ戻ってみえました。おもむろに試し履き草履で履き心地を確認すると、『26cmは出てるだけかな?』。
関心をお示しなのは奥様のほうでしたから、ご主人がご自分用をお求めになるのはちょっと意外でした。その理由は、間もなくお戻りになった奥様の言葉で知ることになります。

『お父さん、ビニールで出来たイ草風のスリッパを履いてるんだけど、ほつれたところを自分で直して履いてるの。あたしの分は我慢して、今日はお父さんのだけねっ』。
おそらく奥様がご主人のあとを追ったのは、好きな草履を選ばせてあげるためだったんでしょう。配色選びをするご主人の笑顔がとっても良かったです。

奥様からそのお話を聞いて、おもわずご主人へ『モノ持ちがイイですねっ』とお声をかけました。スリッパを修理してまで履く男性、私は尊敬しますよ。
世の中使い捨てばかりが流行る時代、手をかければまだまだ使えるモノさえ棄てられます。スリッパひとつとは言え、修理するのはゴミを減らす工夫にもなりますしね。

年末のこと、除雪機の調子が悪くて知人の業者に修理を頼んだところ、『この機械だと、部品はもう手に入らねぇんシよぉ』と言われました。古いのは充分認識しているとは言え、メーカーの部品替えは「モノを大切に…」の心に反しているといつも思います。
でもこちらの知人、互換性のある部品を探し当て、元通り使えるように仕上げてくれました。

「モノを大切に…」の心は、その人の“やる気”が大きいように思います。

コメント
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