緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

第55回(2012年度)東京国際ギターコンクールを聴く

2012-12-16 22:30:30 | ギター
こんにちは。
今朝ベランダに出てみると、さぞ寒いと思ったら生暖かく拍子抜けしました。
今までとても寒かったので急に暖かくなるとかえって不快ですね。
さて今日は東京上野の東京文化会館小ホールで第55回東京国際ギターコンクール本選がありました。
会場に入りプログラムを見ると、本選出場者は外国人5名、日本人1名でした。
その6名は以下のとおり。

1.Marko Topchii(ウクライナ)
2.小暮 浩史(日本)
3.Flrian Larousse(フランス)
4.Tariq Harb(カナダ)
5.Andrey Parfinovich(ロシア)
6.Sanel Redzic(ボスニア)

全体的な感想として、昨年度よりも演奏者のレベルが高かったこと、自由曲の選曲がおなじみの曲が多く、つまらなかったことです。
さて結果ですが、下記のとおり(カッコ内は私がつけた順位)

1.Marko Topchii(ウクライナ):失格(第3位)
2.小暮 浩史(日本):第5位(第4位)
3.Flrian Larousse(フランス):第3位(第1位)
4.Tariq Harb(カナダ):第2位(第6位)
5.Andrey Parfinovich(ロシア):第4位(第5位)
6.Sanel Redzic(ボスニア):第1位(第2位)

1番手のMarko Topchiiさんは課題曲を全て弾かなかったため失格となった。終楽章を途中までしか弾いていなかった。これは致命的ですね。譜面を見ながら弾いていたのでありえないミスではあるが、どうしたのか。
2番手の小暮浩史さんは、音が明瞭で聴きやすいが、音楽解釈の深みが今一つのように感じた。速度がやや遅く単調な感じも受けた。
3番手のFlrian Larousseさんは、昨年度で素晴らしい演奏だったのに、極度の緊張か曲をど忘れして惜しくも2位だった方。第3位と発表された時、「え、なんで」というような声が2、3聴かれた。音がとても美しくかつ強いアクセントを持っており、音の表現の幅や繊細さを表現できる人で私は一番聴き応えがありました。ただ、自由曲の選曲が同時代のスペインもの(トゥリーナのソナタとアルベニスのセビリア)にしたのがまずかったと思う。この選曲を見たときまず高得点を得るのは難しいと思った。
こういう誰もが何度も聴いている曲は技巧が完璧でかつ余程聴き手を惹き込ませる演奏をしないと高い評価を得るのは難しいのではないか。ミスもかなりあり本調子ではなかったようだ。しかし課題曲(無名碑に捧げる哀歌/小川崇)の演奏は良かった。特に終楽章は作者の嘆きのような気持ちを上手く表現していた。
4番手のTariq Harbさんは、こう言っては悪いのですが、私は間違いなく最下位だと思っていましたので、第2位と聴いたとき「え?」と思ってしまいました。ミスも多く、課題曲は曲の切れ目の譜面めくりで集中力が途切れ、表現も表層的だったと思う。
5番手のAndrey Parfinovichさんは、テクニックはトップクラスですが表現が単調、音も変化がなく、自由曲の選曲もおなじみの曲でおもしろみに欠けていた。
6番手のSanel Redzicは、課題曲、自由曲の「想い出の音楽」が素晴らしかった。自由曲は長大な曲であるが選曲で成功したと思う。
課題曲は冒頭の透明な高音がクールに打つように響き渡り、後半部のグリッサンドと不協和音の掛け合いは死者との交流が聴こえるように感じた。最後の嘆きような叫びは作者の気持ちが表れているようで印象的だ。
自由曲の「想い出の音楽」は無調をベースにしているが、随所にイ短調の古典的フレーズが挿入される長大な曲で、このような難曲を最後まで緊張感を持続して弾いたことが評価されたと思う。特に無調とイ短調の古典的形式との曲想の対比の表現が素晴らしかったように思う。

自由曲に現代曲を選ぶ傾向が年々少なくなってきているように思うが、スペインものやバリオスやソルのおなじみの曲などは、国際コンクールで選んで欲しくないですね。
自分としては現代曲をもっと聴いてみたい。
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