緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

立教大学マンドリンクラブ第50回定期演奏会を聴く

2016-12-11 01:28:20 | マンドリン合奏
今日(10日)、神奈川県川崎市教育文化会館で、立教大学マンドリンクラブ第50回定期演奏会が開催された。
とても寒い1日であった。
川崎というところはかなり都会だ。
川崎駅から歩いて20分程で会場に着く。
音響の悪い、暖房のボイラーの音の聴こえるホールで開催された。

立教大学マンドリンクラブの演奏会を聴くのは今日で3回目。
昨年冬の定期演奏会は私の母校の定期演奏会と重なったため、聴くことが出来なかった。
昨年は私の好きな曲である鈴木静一作曲、交響譚詩「火の山」を演奏したようだ。
会場で販売されていた昨年定期演奏会のCDを買って帰りの電車の中で聴いた。
上手いし、いい演奏だ。家についてもう一度聴く。

さて今日のプログラムは以下のとおり。

第Ⅰ部
・茜 作曲/丸本大悟
・ロシアより愛をこめて 作曲/L.バート 編曲/宮田俊一郎
・小組曲「降誕祭の夜」 作曲/A.アマディ

第Ⅱ部
・クラブオリジナル「前奏曲『夜風』」 作曲/廣岡智成
・交響詩「失われた都」 作曲/鈴木静一

第Ⅲ部
・白い恋人たち 作曲/F.レイ 編曲/田原靖彦
・マンドリンとピアノのための協奏曲第一番ホ短調より第一楽章”Marziale”  作曲/R.カラーチェ 編曲/吉野美菜
・荘厳序曲「1812年」 作曲/P.チャイコフスキー 編曲/小穴雄一

第Ⅰ部の曲はオープニングに相応しい明るい親しみ曲を選択している。
丸本大悟の曲は若い世代に人気があるようだが、私はあまり好きになれない。
「ロシアより愛をこめて」は007の映画の主題曲であるが、この映画は小学校、中学校時代にテレビで何度か見た。列車の中でジェイムズ・ボンドとロシアの諜報員との格闘シーンを思い出した。
007シリーズの中でも最高傑作ではないかと思う。
久しぶりにこの曲のメロディを聴いて遠い昔のことを思い出した。
A.アマディの曲は多くのマンドリンアンサンブルのコンサートで聴くことのできるおなじみの作曲家。
私も学生時代に、「東洋の印象 第二組曲」や「海の組曲」を演奏した。
「降誕祭の夜」という曲は初めて聴くが、立教大学の演奏は少しおとなしいように感じる。
第一部は1年生を除き60名ほどの人数であったが、特にマンドリンの音はもう少し大きくてもいいと感じた。

第Ⅱ部の第1曲は恒例の部員自らが作曲したオリジナル曲。
この曲はなかなか良かった。全体的に心地よい穏やかな曲であるが、途中、感傷的に感じさせる部分があった。
藤掛廣幸の「スタバート・マーテル」に出てくる徐々に音が下がっていくフレーズを彷彿させる旋律なのであるが、上手い曲づくりだと思った。
そして第2曲は、鈴木静一作曲、交響詩「失われた都」。鈴木静一の一番人気の曲である。
九州地方の北、大宰府の西、「水城」と呼ばれる地で、かつて日本が、蒙古などの襲撃を受けて戦場と化した過去に思いを馳せた曲である。
日本の過去の歴史や遺跡などからインスピレショーンを得て、作曲された曲としては他に、大幻想曲「幻の国 邪馬台」、交響詩「比羅夫ユーカラ」、劇楽「細川ガラシャ」などが有名で、立教大学の過去の定期演奏会でも頻繁に演奏されている。
その他、日本の土地の風景や四季の移り変わりなどの印象をもとに作曲された曲として、先の「失われた都」や「雪の造型」などがある。
「失われた都」は重々しいセロの旋律から始まる。
かつて悲惨な戦いが繰り広げられ、多くの死者を出した光景が浮かんでくる。
その後、ギターのピチカートから曲は徐々に激しさを増し、ギターのラスゲアードの伴奏のもとに奏されるこの曲の主題となる旋律は印象的で、魂が強く揺さぶられる。途中、挿入されるギターのアルペジオが印象的だ。



暗い重いフレーズが続いた後、東洋的な雰囲気を持つマンドリンソロが奏でられる。
その後東洋から北の地方を思わせるような2拍子の曲に移る。曲はさまざまな曲想、リズムに変化する。
しかし鈴木静一の曲は変化に富んでいて、その流れが絶妙で、常にストーリーを感じさせてくれる。
その後の中盤は難しいパッセージが続く。ここを上手く乗り切らないと聴く側が曲に対しとまどいや、理解できない感じを与えてしまう。
そしてこの次に激しい心食いこんで来るような悲しい旋律が奏でられる。
ここの部分のパーカションが強すぎると曲を壊してしまう。難しいコントロールの要求される部分である。
立教大学はこの部分のパーカッションを抑制気味にし、上手くコントロールしていた。
そして再び重く暗い曲が続くが、再び主題に戻る。



激しいかき鳴らしが続くが、今日の立教大学の演奏はややおとなしい感じがした。
コーダは壮大な激しいラスゲアードの連続であるが、もっと炸裂するようなパワーを感じさせて欲しかった。
ギターはもっと激しく思いっきりストロークしてもいいのでは。
少なくても私の学生時代はそのように演奏していた。燃え尽きるといっていい。
今日この演奏を聴いて世代の差を感じた。時代が変われば、演奏解釈も考え方、気持ちの入れ方が変わるのは常にあることだ。

第Ⅲ部第2曲目のカラーチェのコンチェルトはピアノとマンドリンオーケストラのための協奏曲であるが、マンドリン用に編曲されたもの。
コンサートミストレスがソロを演奏したが、自ら編曲したようだ。
単音だけでなく、重音、和音が頻繁に出てくる難曲だ。
音は金属弦特有のメタリックな音ではなく、落ち着いたいい音だ。
難しいパッセージのいくつかで音が鳴りきっていないところがあったが、概ねいい演奏だっと思う。
そして今日の演奏会の最後の曲は、チャイコフスキーの荘厳序曲「1812年」。
立教大学マンドリンクラブの定期演奏会の終曲は、クラシックの名曲の編曲物にするのが恒例らしい。
この曲は難曲で、演奏難易度がとても高いと感じた。
部員たちは相当練習してきたのであろうが、今日の演奏会ではこの曲に対し一番思い入れを持っていることが伝わってきた。
第Ⅲ部は総勢80名での演奏だった。

大学のマンドリンクラブの多くが、部員の確保が厳しい現状の中、立教大学は現役部員だけでも70名以上もの人数を有しており、恵まれていると思った。
フルート奏者を常任にしているところがこのクラブの強みだと思う。
管楽器やパーカッションが必要な曲は、賛助を頼むのが普通であるが、この賛助も誠実な人でないとせっかくマンドリンクラブのメンバーが一生懸命曲を仕上げても、賛助の不出来で失敗することがある。
私の学生時代にこのような惜しむべき経験がある。
しかし今日の立教大学にしても先日聴いた中央大学にしても賛助の方のレベルが高く、このことが演奏会の成否を左右していることを痛感する。
今日の演奏で最も良かった曲は、交響詩「失われた都」であるが、自分としてはもっとパワーと炸裂するようなエネルギーの強さを感じさせて欲しかった。
あと、音楽が本当に好きな奏者の演奏は、必ず聴き手の心に伝わってくるものだ。
聴き手が真に音楽が好きであれば、そこに何とも表現し難いが、強い共有を感じることができる。
生の演奏会の醍醐味がそこにある。
学生は当然アマチュアであり、聴き手はプロのような洗練された演奏を期待していない。
むしろ学生特有の、学生時代にしか出せない、何か完全燃焼するような激しさを感じさせて欲しいと思う。
マンドリンオーケストラ曲を心底好きになって欲しいし、その気持ちが全てである。それ以外のものは必要であっても重要性は低い。
聴き手はその気持ちを感じ取りに演奏会に行くのである。


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