緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

理想のタッチを得る条件(その2)

2023-12-09 22:17:55 | ギター
今日は午後から千葉マンドリンクラブ部内発表会の練習のため、千葉某町まで行ってきた。
各パート1名でのアンサンブル練習であったが、これって結構楽しい。
自分の楽器の音が良く聴こえるし、他パートの音もよく聴こえてくる。
各パートの演奏や音の違いが明瞭に識別できるので、かなり音楽が身近に感じられるのである。
入りやテンポを間違うとすぐに分かるのもいい。
定期演奏会がオフのときはこういうアンサンブルにも参加するのもいいと思った(もちろん独奏も大事だが)。

さて寝る前に一筆。
「理想のタッチを得る条件」と題する記事を先日書いたが、その続き。
条件10項目を再掲する。

<理想のタッチを得る条件>

①自分によく合った最高のギターをもつこと。
②高めの足台とギターによく適したよい弦であること。
③よい助言者、優れた教育機器教材、鏡などを持つこと。
④身体全体が自然で正しい姿勢であること。
⑤右手の重心、弾く位置がノーマルなこと。
⑥pimaの各指が独立性を養えるトレーニングを積んでいること。
⑦p指はあらゆる種類のアポヤンドが可能なこと。
⑧各指の爪は短めで正しい手入れ法を知り、深めのタッチができること。
⑨imaは左端の先端で弦を巻き込むようにタッチが出来ること(回転運動が含まれること)。
⑩右手全体にムダな力が加わらなくて移動性に富むこと(瞬間にエネルギーは効果的に出される)。

⑧の「各指の爪は短めで正しい手入れ法を知り、深めのタッチができること。」
これは最近偶然、マンドリン合奏の曲でラスゲアードを多用する曲ですり減らした爪で独奏曲を弾いたら、意外にも音がまろやかで芯のある音が出たことに気が付き、以来、爪の長さを短めにして、タッチも指頭⇒爪の順で弦に接触するように意識して弾くようにしている。

思えばギターを始めた1970年代の半ばからずっと長い間、爪の長さはそれほど長くはなかったし、タッチも指頭⇒爪の順で弦に接触するように弾いていた。
ギターを始めた当初はもっぱらアポヤンド奏法がメインだった。
例えば、セゴビアから直接指導を受けた阿部保夫の教本「セゴビア奏法によるギター新教本」の最初の練習曲、アグアドとソルの初級練習曲は全ての音をアポヤンドで弾くよう指示している。



阿部保夫氏はこの教本の解説で、「指頭奏法を使っているプジョール先生の生徒も爪を伸ばしていた。私が渡伊して一番おどろいたことは、爪を伸ばしながら指頭としか思われないやわらかくきれいな音でひいていることだった」と述べている。
ここで言う「爪を伸ばす」とは、長い爪ではなく、完全な指頭ではない、やや短めの爪+指頭で弾いている、という意味ではないかと思う。

また、クラシックギターの音でセゴビアとともに最も美しい音を出すギタリストとして賞賛されたホセ・ルイス・ゴンサレスの教本「ホセ・ルイス・ゴンサレス テクニック・ノート」の最初の練習は③弦での音階をアポヤンドで弾くというものであった。



ホセ・ルイス・ゴンサレスは演奏会の始まる直前、演奏会場の控室で長時間にわたってこの③弦の音階練習をしていたというエピソードを聴いたことがある。(XジャパンのYOSHIKIさんも本番前の控室でハノンのような基礎練習を延々としていた場面をドキュメンタリーで見たことがある)。

この「短めの爪で深いタッチ」をアポヤンド奏法で、基礎練習を徹底して積み重ねることが「理想のタッチを得る」ための必要条件であり、美しい音を生む土台であると考えている。
セゴビアも深いタッチをしているのがYoutubeの動画で見ることができるが、驚くほど脱力し柔らかいタッチをしている。
余計な力が入っていなく、必要最大限の瞬発的なエネルギーでもってあのセゴビアトーンと呼ばれる音が生み出されているのであろう。

イエペスもソルの練習曲などの出版物でアポヤンドの指定をかなり行っている。
下はソルの練習曲ホ短調であるが旋律部は全てアポヤンドを指示している。



またソルの魔笛の主題による変奏曲の次の部分などもアポヤンドの指定だ。





セゴビアもイエペスも老齢になってからも音が衰退することはなかった。
これはアポヤンドを中心とした、深いタッチ、それも余計な力の一切入らない瞬間的なエネルギーを用いたタッチを若い時から徹底的に習得し土台としてきたからではないかと思う。
1980年代頃からアルアイレしか使わない奏者が激増したが、このような奏者が老齢期に入り、その音が昔と変わらず維持出来ているのだろうか。
(バルエコは、ラッセルは?)

今日の帰宅後に久しぶりにバリオスの大聖堂第1楽章を弾いてみた。旋律部は全てアポヤンドで弾いている。

久しぶりのバリオス、大聖堂第1楽章 旋律部をアポヤンドで弾く練習のための最適な曲 2023年12月9日
コメント