緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

久しぶりの日本酒(2)

2015-09-22 00:18:53 | グルメ
シルバーウィークも半分を過ぎた。
こういう大型連休の時に、普段飲まない酒を楽しむことにしている。
飲む酒は日本酒だ。
日本酒といってもスーパーや駅の売店で売っているような、大手酒造メーカーが大量生産した酒ではなく、値段が安くても小さな酒蔵が手作りで作った本格的な酒である。
今年のゴールデンウィークの時は、福島県郡山市の「穏」という酒を飲んだ。

自分にとっていい酒とは、多少たくさん飲んでも酔いが進まないところにある。
大量生産される酒は飲み過ぎると必ず悪酔いする。
夜中に気分が悪くなり目が覚めたりして始末が悪い。
しかしおいしく、いい酒は量が入っても悪酔いしない。
日本酒の銘柄の味の区別ができるほど舌が肥えているわけではないが、いい酒は余計な味が無く、スッキリしている。そしてほのかに米の味がする。
日本酒を本当においしいと初めて思ったのは、随分昔だが、写真撮影のために訪れた長野県の上高地の帰りに、松本駅で買った酒だ。
何という銘柄だったか覚えていないが、陶器製の銚子と徳利のついたもので、家に帰った直後に早速飲んでみたら、これが実にスッキリしていて米の味がしたのである。
これが日本酒の味に目覚めた最初である。
日本酒は飲み屋で家族や仲間と料理やつまみと一緒に飲むのが一般的だが、純粋に味を楽しむのであれば、静かなところで、つまみなどは最小限にとどめて一人で飲むのがいい。

連休中の今日も、ちょっとしたささやかな幸福感を味わうために、日本酒を買いに行った。
いい日本酒を飲むためには、いい酒を置いている店に行くのが一番だと思った。
インターネットで検索すると東京表参道にある酒店が目についた。全国から厳選した日本酒の銘柄を置いているらしい。
日本酒1本買いにいくくらいなら、わざわざ交通費をかけて東京まで出ることはなく、通信販売で済ませればよいのだが、日本酒を買いに行く目的以外にももう一つ東京に行きたい理由があった。

先日、ある図書館に立ち寄ったら、片隅に、ある作家の著作本が何冊か置いてあった。
全く聞いたことのない作家であったが、数冊の著作から1冊選んでページをパラパラめくっていたら、直観ではあるが読みたいと思ったのである。
しかし何せマイナーな作家なので、インターネットで検索してもあまり出てこない。
この作家の代表作が東京の某市にある古書店で販売されているのを知ると、一刻も早く読みたいと思い、直接この店に行って買うことにしたのである。
この作家の本の感想については、いつか紹介したい。

今日は朝から快晴だった。
いつもは車で20分ほどの駅近くにあるコインパーク(田舎なので1日止めて300円)に車を置き、電車に乗り換えるのであるが、今日はいつになく歩いて最寄の駅まで行くことにした。
最寄りの駅と言っても歩いて25分の距離。陸の孤島のようなところに住んでいるので、バスなどは無い。
歩きたいと思ったのは普段全くいうほど歩かなくなってしまったからだ。
通勤は車だし、仕事はデスクワークなので体を動かすことはない。休日は東京方面に出かける際に、先に述べたように20分ほどかけて乗換なしの駅まで車で行く。
車を持つようになってから歩かなくなってしまった。
しかし車を持つ前までは自分で言うのもなんであるが健脚であった。
重たい撮影機材を担いで山登りをしたり、同じように撮影機材を担いで1日中歩いても全く平気だった。
私は腕は細い方であるが、足のふくらはぎやももの筋肉は昔はちょっと自慢であった。
しかし今は無残にも昔のような筋肉は面影もなく、たるんでしまっている。

自分が歩くことに向いていると初めて感じたのは大学1年生の時だったであろうか。
冬休みに、1日千件、歩いて通信教育用の封書を配達するアルバイトをやっていた時、仕事を終え、札幌中島公園駅近くの事務所についたら、雇い主が「ほうりゅう(漢字は忘れました)」というススキノにあるラーメン屋の回数券をくれたのである。
そのラーメン屋に立ち寄り、もらった回数券で食べたらおいしかったこと!。
ラーメンを食べて満足した私は吹雪の中を札幌駅に向かって歩いた。もちろん金の無い貧乏学生なので地下鉄なんかは利用しない。
吹雪の中を歩いているうちに何だかとても気持ち良かったのある。歩くことがとても楽しかった。この時の光景や気持ちは今でも覚えている。

横道に反れたが今日は車通勤するまでは何千回と歩いた駅までの道を、乾いた陽の日差しを浴びながら久しぶりに歩いた。
線路沿いに流れる小川と平行する小さな道、夜は街頭も無く真っ暗で女性は歩けないが、秋になると虫の鳴き声が盛んに聴こえる道を歩く。
日差しを遮るものが無いので夏は駅までの間に汗だくになるし、雨風の強い時は傘をさしていても全身びしょぬれになるその道を歩いた。

数時間かけて目当て古書店に着いた。初めて行くので道に迷った。私には良くあること。全然違う道を歩いていた。
その古書店は古いビルの中にあったが、本の数は相当のものであった。神田にある古書店よりも蔵書数は多いと思った。
古書店の中には立派な店構えで整然と高価そうな古書を棚に並べた敷居の高い店もあるが、その古書店は階段にも本が乱雑に積み重ねてあるような店だった。
一応、ここの一角は新書・文庫類、別の一角は歴史ものだとか、札がかかっているが、新書コーナーの奥に日本文学や海外の文学全集が置かれているという無整理ぶりに好感を感じた。
古書店独特の古い紙のにおいがたちこめている。この雰囲気がとても好きだ。
古いビルなのでトイレもまさに昭和時代のもの。こういう古いビルも好きだ。
そういえば札幌の某中古レコード屋もこういう古い雑居ビルの中にあり、昭和の古い時代にタイムスリップしたような感覚を感じたことがある。

この古い古書店で目当ての本を買って、次の目的地である表参道の酒店に向かう。
表参道駅についたら凄い人の数だ。5連休ともあって普段の休日より出かける人が多いのであろう。
今度は迷わず目当ての酒店のあるビルに到着した。
意外に小さなショップだった。冷蔵庫の中の日本酒に目をやる。意外に品数は少なかったが、ビンが高級そうなものは避け、シンプルで地味だがなんか存在感を感じる銘柄の日本酒を選ぶ。
佐賀県と栃木県の酒に絞る。
ちょっと迷ったが1本しか在庫の無かった栃木県の日本酒を選んだ。値段は税込み1,600円台だった。
銘柄は「大那」という。栃木県那須産の米を使った純米吟醸である。菊の里酒造というメーカーの酒だ。
このショップに若い女性が結構たくさん来ていた。おしゃれな雰囲気の店だからであろう。
私のような田舎者が来るような店ではないと思った。そそくさと会計を済ませて店を後にした。

まだ3時過ぎなので、帰りは神保町に立ち寄る。
何故か餃子が食べたくなり、餃子専門店に立ち寄る。野菜餃子で遅い昼食をとる。
近くの老舗中古レコード店に入って、ピアノの中古レコードを物色する。
値段が高いので結局買わなかった。以前、札幌の狸小路で300円で買ったバルトークのレコードが2,000円で売られていた。

そのあとで秋葉原に立ち寄りヨドバシカメラに向かった。随分久しぶりにプラモデルを作りたいと思ったからだ。
久しぶりといっても中学校時代以来のことだ。しかしプラモデルを作りたいという気持ちは数年前から起き始めていた。
作りたいのはトレーラーのプラモデル。毎日の車通勤で必ず目にする、あの40フィートもある貨車をけん引した、大型トラックのことである。実はこの乗り物が大好きなのだ。
もし自分が20代だったとしたら、今の仕事を止め、この長距離トレーラーの運転手になっていたと思う。
体力に自信があり、運転することが好きであれば、基本的に独り仕事なので、これほど気楽な仕事はない。
プラモデルと言えば父親が40代の頃に熱狂していたことがあった。
手先の器用な父は、模型作りが余程好きだったと見えて、平日でも夜中まで興じていた。
そしてそのことでいつも母から文句を言われていた。
いつのことかある日、母から「もう止めて下さい!」と言われたのである。父は黙ってその言いつけに従ったが、父の唯一と言える楽しみが奪われたのを目にして、今思うと父が不憫に思われた。

ヨドバシカメラには目当てのトレーラーは無く、空振りに終わったがいつか見つけて完成させたい。

帰りは例の暗い川沿いの小道を、秋の虫の大合唱を聴きながら歩いて帰路についた。
帰宅してから「大那」を飲んだ。
やはりスッキリした雑味のない、ほのかに米の香りのするいい酒だった。
この酒を飲みながら、こんな贅沢を感じられることに今の自分は恵まれているのだな、と思った。

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