緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

2015Nコンブロック大会を聴く

2015-09-06 00:04:39 | 合唱
今日の午後、埼玉県の大宮ソニックシティ・大ホールにて2015年度NHK全国学校音楽コンクール(Nコン)関東甲信越ブロック大会高等学校の部があり、運よく入場整理券が手に入ったので聴きに行った。
今年の課題曲は、穂村弘作詞、松本望作曲「メイプルシロップ」であった。
この曲は今年の3月の終わりにNコンホームページで披露された時に何度か聴かせてもらった。そしてその感想を記事にしたことがあった。
初めて聴いた時は詩の内容と曲とが合っていないように感じた。今日久しぶりに参加14校の演奏を改めて聴いて、この曲に合わせて詩を表現することはとても難しいと感じた。

第2次世界大戦の大きな痛手から立ち直り、目覚ましい発展と平和を築き上げた日本。
つい最近までは食べる物が無くて飢え死にすることなどは考えられなかった。しかしその豊かな生活も軋みをたててゆっくりと崩れてきている。
日本は数年前の大震災で大きな痛手を受けたが、経済的にもバブルの崩壊やリーマンショックを経てかつての経済活況は色あせてきている。
かつてものづくり大国と言われた日本。今やそのイメージは薄い。ものづくりは中国へシフトした。今、日本にあるものの殆どは中国製である。
生産拠点を自ら中国などに移した日本のものづくりは空洞化し、多くの人が働き口を失った。
終身雇用制、年功序列は過去のものとなり、固定費の変動費化、すなわち非正規雇用を大量に生みださざるを得なくなり、格差社会をもたらした。
かつて言われた1億総中流時代はもう今の時代にない。たらこおにぎりのような誰でも食べれたものも、食べれなくなる時代が来るかもしれない。

イスラム国や中東、一部のアフリカ諸国など、世界各地で戦争や内戦が頻発している。
祖国を捨てて他国へ難民として逃れようとする人々。まだ豊かな日本から見ると、夢にも出てこないような出来事かもしれない。
しかしその日本も物凄い勢いで軍備を拡張したり核実験をする近隣国からの脅威を感じるようになった。
戦後70年にわたり平和を築きあげ、戦争をしないと誓い、武力行使をしなかった日本。
しかし目前に迫った脅威から身を守るために銃を持ち、怯える日々が来るかもしれない。
武力を持つことに関心を示す人が増えてきたことは否めない。
子猫の名前を考える余裕などなくなるような日々がくるというのか。

人の生き血を吸った蚊が青空を飛んでいる姿は見たことがない。
人の命を奪った人間が青空のもとを堂々と生きるような時代がやってくるのか。
あと1世紀も経てば地球はどうなるのか。核戦争、原子力汚染、温暖化、資源や食料の枯渇、惑星そのものの存亡の危機がやってくるかもしれない。

ホットケーキにメイプルシロップ。このフレーズは4回挿入される。
子供が家庭で母親が焼いてくれた手作りのホットケーキに、天然のメイプルシロップをたっぷりとかけてほおばる。
平和な家庭の中でどこでも見かける光景。
作者はこの平和な暮らしがいつまでも続くようにと願ってこの詩を書いたのかもしれない。

さて今日の生演奏を聴いて、最も印象に残ったのは、課題曲では演奏順位5番目の山梨県の高校、自由曲では演奏順位14番目の長野県の高校であった。
山梨県の高校は人数が二十数名と少なかったが、課題曲の歌声からは強い直球のような気持ちが伝わってきた。
部員が集まらないのだろう。男声が少ないので女声合唱として参加していた。
長野県の高校も人数が少なかったが、自由曲の西村朗作曲「くろ髪の」は今日の全ての自由曲の中では最も難曲であり、ピアノ伴奏も超絶技巧を要するものであったが、日本的情緒漂うこの独特の曲を随所で強いパワーを感じさせてくれ、聴き応えのあるものであった。

全体的な感想としては、課題曲の音色がモノトーンで変化に乏しかったこと。大きな声量を出している高校が多かったが、感情的表現が少なく、単調な印象を持った。
大きな声量を強調する学校が多かったが、あまりそこに重要性を置かなくてもよいのではないか。
私の今日の席は後ろから2列目であったが、それでもその声量の強さがいいものに感じなかった。
音の大きさよりも、スポットでも感情的強さを感じさせてくれる演奏の方がインパクトがある。
感情的表現の強さと声量の大きさに相関関係はないと思う。
またもっと表現の多彩さが欲しいと思った。指導者の理想とする音色に過度に合わせようとすると、何かが犠牲にされるように感じる。高校生には高校生らしい自然な歌声や感情的な表出があるはずで、そのようなものを自然に引き出すような演奏が少なかったように感じる。

審査のことは殆ど感心がないが、審査員は毎年合唱関係者だけで同じ顔触れなのだろうか。
審査に合唱関係者だけでなく他分野の音楽家を入れても良いのではないか。
同じ顔ぶれだと選ばれる学校も毎年同じような傾向になるのではないか。



【追記(20150907)】

Nコンのホームページを見たら、一昨日聴いた生演奏の動画が放映されていたので、早速聴いてみました。
課題曲を改めて聴き比べてみたが、やはり山梨県の高校の演奏が一番聴き応えがありました。
この高校、いい学校ですね。
いろいろな学校の歌い手の表情や目を見ていると、指導者と歌い手との関係、部員の親密度、歌に対する気持ち、元々持っている生徒達の根源的なものがおぼろげながら感じられます。
それを見るのも楽しいものです。



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