緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

全日本合唱コンクール 高等学校部門Aグループを聴いた

2011-10-29 21:54:49 | 合唱
こんばんは。
今日は年に1回開催される全日本合唱コンクール(朝日新聞、全日本合唱
連盟主催)の高等学校の部 Aグループの演奏を聴きにいきました。
今年の開催地が東京であることに気付いたのが今週になってからで、チケッ
トを手に入れたのも前日の夜、仕事から帰ってきた夜10時ごろでした。
朝5時半に起き、開催地の東京、府中の森芸術劇場どりーむホールに着いた
のが9時過ぎでした。
幸いとても天気がよく、日中は暑いくらいでした。
チケットを手に入れるのも抽選で大変だということで、1席も空席が無い
くらい大勢の人が詰め掛けていると思いきや、ホールに入ってみると空席
がたくさんあり、拍子抜けしました。
この調子じゃBグループも空席がたくさんあるのでは、と思ってしまいま
すね。
実のところBグループの演奏を聴きたかった。







合唱コンクールをホールで生で聴くのは初めてです。席は前の方を選びました。
やはり歌っている演奏者たちの表情を見たいし、出来るだけ歌声の裏にある
気持ちも感じ取りたかったからです。
いよいよ開演し、最初の長野県の高校の演奏を聴いて、ホールでの生演奏は
テレビなどの映像を見るのと比べて全然違うと思いました。
特に残響が聴こえることと、演奏者のエネルギーがより身近に感じられるこ
とです。

今回聴いたAグループは演奏人数が8人以上32人以下で、Bグループや
Nコンに比べて少ない人数で演奏されます。
今年は13の高校が参加しました。
全国大会に出場するほどの学校だから上限の32人で出場する高校が殆ど
だと思ったら以外に20数人の学校も結構ありました。
私が聴いた印象では人数の少ない学校の方がかえって質の高い、演奏者一人
ひとりの気持ちやエネルギーが感じられましたね。

さて13の高校全ての演奏を聴き終えて、私が素晴らしい演奏、いい演奏だと
感じた高校は次の2校でした。

①兵庫県立神戸高等学校(女声25名)
 課題曲:けれども大地は......
 自由曲:無伴奏女声合唱のための「炎の挽歌」からⅢ 妻への挽歌
 私の結果予想:金賞(1位)
 審査結果:金賞(東京都教育委員会賞:2位)

②鹿児島県立松陽高等学校(女声20名)
 課題曲:私のいのちは
 自由曲:無伴奏女声合唱のための「万葉恋歌」から1、4、5
 私の結果予想:金賞
 審査結果:銀賞

①の神戸高校の演奏は素晴らしかったです。プログラムの学校紹介で、
自由曲について、妻との「美しい思い出、激しい嘆き、遺児への想い
などさまざまな感情を重ね、言葉にならない深い悲しみを表現できる
よう心を一つに歌います」と書いてあったが、そのとおりの演奏を聴か
せてくれた。
25名と少ない人数ながら、歌声から聴こえてくる気持ちや感情のエ
ネルギーは凄かったです。
この曲を聴いている途中で、ホールの舞台を見る視界が急に鮮明になり、
私も含めて聴いている人たちの様子が静かに張り詰めてしーんとして
いる現象が起きました。
おそらく歌い手の強い気持ちが聴き手の心の奥に伝わり共振している
瞬間だったのではないでしょうか。
これと同じ現象を過去のコンクールでも1度だけ感じたことがあります。
合唱ではないのですが、クラシックギターの国際コンクールで、課題曲
である吉松隆作曲の「風色ベクトル」という曲で、ある演奏者が中間に
でてくるあるフレーズを弾いていたとき、やはり奏者周辺への視界が
急に鮮明になって、聴き手の全てがしーんと聴き入っている気配を感じ
ました。不思議な体験だったのですが、今でもそのシーンは鮮明に覚えて
います。
この神戸高校、審査結果をホールの後ろの方で聞いていて、人数も少なく
地味ですが、なかなか好感のもてる高校だと感じました。
高い実力があるのに、驕ったり、前に出ようとしない。その謙虚な姿勢に
好感を持った。

②の松陽高校も人数が出場校中最も少ないのにもかかわらず、非常に
感情表現の幅の広い演奏で、全員が一つのものに向かって高い集中力
を見せていた。
自由曲は難曲であったが、聴き応えがありました。合唱曲を全員の
想いで一つのものに作り上げていく、その素晴らしさを強く感じさせ
てくれた貴重な演奏であった。
また特筆すべきは、女声の最低音がしっかりと聴こえたこと。
女声でしっかりとした最低音を出すことは並大抵のことではないですね。
最近は女声合唱でも、1~数名の男声を演奏メンバーに入れて、女声の
低音の弱さを補完する傾向が目立ってきたが、女声の低音と男声の低音は
本質的に違うものであり、女声合唱に男声の低音が聴こえることに少し
違和感を感じるのは私だけであろうか。

今回の審査結果も先日のNコンと同様、私の感じたものと異なる結果
となった部分もありますが、審査結果はあまり気にしないようにして
います。
審査終了後の講評で、今大会の審査員として招待されたスウェーデン
の合唱指揮者の方が、審査の難しさについて、バナナとオレンジのど
ちらが素晴らしいかを決めることに例えて、感想を述べておりました
が、なるほどだな、と思いました。

審査員によって全く逆の評価になることがあるのも当然のこと、それは
合唱だけでなく、ギターのコンクールでもあります。

あまり審査のことは考えずに、曲や歌を通して歌い手と聴き手の間に
深く気持ちが共振し合えるような演奏を目指してもらいたいと真に願って
います。

審査結果が終わった後、Bグループの演奏を聴きたい衝動にかられなが
らも、会場を後にした。
まだ日が暮れるまで時間があり、東京に出てきたこともあり、上野の
東京文化会館音楽資料室に寄って、過去のNコンのCDを聴いてきました。
平成11、12年度は聴くのが3度目ですが、今回平成9年度を初めて
聴きました。
上位の賞をとっていなくても素晴らしい演奏はあるものです。
こういう隠れた名演を埋もれたままにしておかず、もっと多くの人に聴い
てもらいたいという気持ちになっている。
今度、この隠れた名演を紹介したいと考えています。
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