世界の中心で吉熊が叫ぶ

体長15センチの「吉熊くん」と同居する独身OLの日常生活

伊吹のお山

2015年02月10日 22時55分44秒 | Weblog
嶽本野ばら先生の「通り魔」が地元の書店に置いてあり、それを見て嬉しくなった。おお、ここでも売っているのかと。



伊吹山を望む大垣出身の井吹満。



伊吹山及び大垣の場所。


満は、男の出入りが激しいスナック「アサコ」を経営する母との二人暮らし。
コミュ障で、友達もおらず、人目を避けて何時も一人で伊吹山を眺めていた。
高校を中退した満は、縫製工場で裁断の仕事にありつくが、気になっていた同僚(篠田さん)の自宅を覗いていることを警察に通報され、ノートパソコンと通帳だけを持って上京する。
過酷な労働、蒲田での不安定なネカフェ生活を送っていたが、やがて金に困って池袋で通り魔事件を起こす。


通り魔事件を起こすとき、

「何時だって僕は何時、壊れても仕方ない状況に追い詰められていたけれども、踏み留まっていた。踏み留まれていた。根性がしっかりとして、品行方正だったからではない。強かったからでは決してない。僕は弱い人間だと思う。ちゃんと弁え、自覚している。でも、伊吹のお山がお前はお前であればいいのだと何時も諭してくれていたから、僕はそのように拗ねた感情を持たずとも良かったのです。」



上京後も心の支えにしていた「伊吹のお山」だが、通り魔事件を起こす今その時の満の心には、残念ながら浮上してしてこなかった。それだけ追い詰められていたのだろう。やがて、ドミノ倒しのように読者をクライマックスまで引きずり込む。その手腕は相当だと思う。淡々とした文体と切羽詰っていく状況のコントラストが不気味なほどに鮮やかだった。


読了後、あまりにもショッキングで感想を書くのを躊躇うほどだったのだが、今、読み返して、ようやく物語の奥を咀嚼できるようになるまで回復できた。
世情を深く取材し、伏線を張り、主人公を置く。そしてそこに生命を吹き込む。それらの作業を通して、作者が命を削って本作品を書いているのが伝わってきた。嶽本先生が命を削ってでも訴えかけたかった主題がダイレクトに伝わってきた。

きっと誰にでも「伊吹のお山」のような心の支えってあるのだと思う。どのような過酷な状況に置かれていても信じられる、そして自分を全肯定してくれる心の拠り所といったようなもの。
それぞれの「伊吹のお山」のような存在をかき消すぐらい強烈な社会の歪み、脆弱性があるから、今も同じような事件は後を絶たないのかもしれない。
じゃあ、社会だけが悪いのか?と聞かれても、必ずしもそうだとは言い切れない。
善良な青年を犯罪に走らせた背景はとても複雑で、何が悪いとは一言では言い切れない難しさがある。
そういった部分も読了後の後味の悪さの要因だった。



帰宅後、一気に二度目の読了。
そして「純愛」を読み進める。





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神様は時々・・・

2015年02月10日 21時55分44秒 | Weblog
今週末、経営管理室で開催される飲み会の幹事を引き受けているのだが、どうやら経理部も同日同場所で飲み会を計画しているらしい。まさかのバッティング。
経理部の幹事のS田さんに確認するとやはりそうだと言う。
二人で「ええ~!!偶然ですね」と爆笑してしまった。
数ある居酒屋なのに、どうして同じ店を選んでしまうのか・・・。

今日は経営管理メンバーの話で「変なおじさん」の話題が浮上し、笑いが止まらなくて大変困った。
笑いながらも手を止められない私。
予算作成で個人的に戦場なう。


定時後、非常階段で一服。
集中力を充電しながら、空の色に吸い込まれそうになる。
漆黒の上部から藍色の中間部、そして仄かに広がるオレンジ色、そのグラデーションが静かな美しさをたたえていた。
アクセントはきらきらとまたたく宵の明星。
この時期限定の空の景色。
・・・神様は時々、美しいものを見せてくれる。



そして残業突入。


明日はビクビクしながら取得した有給休暇だ。
渡部潤一先生の講演会に行く。楽しみ☆
頭の片隅で会議費の予算がちらつくけど・・・。