表題に拝借したのは、松たか子の「夢のしずく」の歌詞。
もう10年前の歌なのだが、松たか子の歌の中で一番好きな歌だ。
愛よりも恋よりもはやく
あなたに出逢ったいたずらが
私のすべてを変えてゆく
二人おちてゆく…
その松たか子が出ている映画「ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~」をレイトショーで観てきた。
これがなかなか面白かった。
あまり期待をしていなかったのだが。
ネタバレあり
あらすじ: 戦後の混乱期、酒飲みで多額の借金をし浮気を繰り返す小説家・大谷(浅野忠信)の妻・佐知(松たか子)は、夫が踏み倒した酒代を肩代わりするため飲み屋で働くことに。生き生きと働く佐知の明るさが評判となって店は繁盛し、やがて彼女に好意を寄せる男も現れ佐知の心は揺れる。そんな中、大谷は親しくしていたバーの女と姿を消してしまい……。
(シネマトゥデイ)
大体、「だめんず」に惹かれる女って、いまいち共感ができない。
口では同情しているけれども、本心では「愛欲に溺れた代償」などと思ってしまう。
でも、この作品、なんか気になる。
モントリオール世界映画祭で最優秀監督賞も取ったしな。
どれどれ、観てみっか?
そんな気持ちで映画館に足を運んだのだが、大きく、良い方向に裏切られた。
酒乱(大谷はほとんどのシーンで酒が入っていた)、収入を全て使ってしまう、愛人を作る、嫉妬深い、ふらっと家を出て行ってしまう…こんな大谷を佐知は捨てられない。子供がいるから、夫婦だから、そんな腐れ縁的な理由からではなく、大谷を「愛」していたから。無償の愛・母性的な愛がそこにはあった。
お金がない。
だったら働く。
武蔵小金井から中野にある飲み屋「椿屋」まで、坊やを背負って電車出勤。
ワーキングマザーである。
肝っ玉すら感じる。
大谷が「死」へのベクトルを持つのならば、佐知は「生」へ直向だ。
私がこの作品に惹かれた理由はそこにある。
だめんずと一緒になったのなら、仕方がない。
惚れたのだもの。
悲観せずに前向きに考える佐知の姿に感動した。
その様子も「これみよがし」ではなく、静かに自主的に行うのも良い。
結局、大谷はそんな佐知に甘えていたのだと思う。
谷川岳で愛人・秋子と心中未遂をする大谷。
殺人罪で捕まってしまう。
どこまで駄目なんだろう。
「椿屋」に坊やを置いて、谷川署に向かう佐知。
その電車内での遣る瀬無い表情が切なかった。
愛人・秋子と谷川署の廊下ですれ違うシーンが印象的だった。
秋子役の広末涼子が松たか子にほくそえむのである。
妻に対する宣戦布告っぽく。
彼女の薄い唇が、そりゃあ憎たらしくて。
佐知以上に憤りを感じてしまった私。
そう、その広末涼子の濡れ場シーン!!
ちょっと引いたかも…。
お腹いっぱい。
あと、なんかヘンだよ、その頭。
戦後のパーマネントってあんなだったの?
最後まで違和感ありありだった。
谷川署。
網越しで、
「心中された女房は、いったいどうしたらいいの?」
という佐知の問いかけに、
「勝手なようだが、今は責めないでくれないか」
という大谷。
なんて勝手なのだろうか。
でもそんな大谷をも見捨てられない佐知。
愛って不思議だ。
恋愛を現役引退している私にはよく分からないのだが、愛が深いと嫉妬という感情も起こらないのだろうか。
最後、道端で桜桃を食べるこの夫婦。
種とか飛ばしあっちゃってる。
奇異なんだが、とても素敵なシーンだった。
ハッピーエンドでもなさそうなんだが、かといって暗くない。
春の日にたまにある薄曇の日っていう感じの終わり方だった。
愛よりも恋よりもはやく
あなたに出逢ったいたずらが
私のすべてを変えてゆく
二人おちてゆく…
男女の愛を考えるとき、決まって私の脳内に流れる歌。
今宵、映画館から駅に向かう途中、この歌を口ずさまずにはいられなかった。
ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~(予告) 松たか子 浅野忠信 妻夫木聡
もう10年前の歌なのだが、松たか子の歌の中で一番好きな歌だ。
愛よりも恋よりもはやく
あなたに出逢ったいたずらが
私のすべてを変えてゆく
二人おちてゆく…
その松たか子が出ている映画「ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~」をレイトショーで観てきた。
これがなかなか面白かった。
あまり期待をしていなかったのだが。
ネタバレあり
あらすじ: 戦後の混乱期、酒飲みで多額の借金をし浮気を繰り返す小説家・大谷(浅野忠信)の妻・佐知(松たか子)は、夫が踏み倒した酒代を肩代わりするため飲み屋で働くことに。生き生きと働く佐知の明るさが評判となって店は繁盛し、やがて彼女に好意を寄せる男も現れ佐知の心は揺れる。そんな中、大谷は親しくしていたバーの女と姿を消してしまい……。
(シネマトゥデイ)
大体、「だめんず」に惹かれる女って、いまいち共感ができない。
口では同情しているけれども、本心では「愛欲に溺れた代償」などと思ってしまう。
でも、この作品、なんか気になる。
モントリオール世界映画祭で最優秀監督賞も取ったしな。
どれどれ、観てみっか?
そんな気持ちで映画館に足を運んだのだが、大きく、良い方向に裏切られた。
酒乱(大谷はほとんどのシーンで酒が入っていた)、収入を全て使ってしまう、愛人を作る、嫉妬深い、ふらっと家を出て行ってしまう…こんな大谷を佐知は捨てられない。子供がいるから、夫婦だから、そんな腐れ縁的な理由からではなく、大谷を「愛」していたから。無償の愛・母性的な愛がそこにはあった。
お金がない。
だったら働く。
武蔵小金井から中野にある飲み屋「椿屋」まで、坊やを背負って電車出勤。
ワーキングマザーである。
肝っ玉すら感じる。
大谷が「死」へのベクトルを持つのならば、佐知は「生」へ直向だ。
私がこの作品に惹かれた理由はそこにある。
だめんずと一緒になったのなら、仕方がない。
惚れたのだもの。
悲観せずに前向きに考える佐知の姿に感動した。
その様子も「これみよがし」ではなく、静かに自主的に行うのも良い。
結局、大谷はそんな佐知に甘えていたのだと思う。
谷川岳で愛人・秋子と心中未遂をする大谷。
殺人罪で捕まってしまう。
どこまで駄目なんだろう。
「椿屋」に坊やを置いて、谷川署に向かう佐知。
その電車内での遣る瀬無い表情が切なかった。
愛人・秋子と谷川署の廊下ですれ違うシーンが印象的だった。
秋子役の広末涼子が松たか子にほくそえむのである。
妻に対する宣戦布告っぽく。
彼女の薄い唇が、そりゃあ憎たらしくて。
佐知以上に憤りを感じてしまった私。
そう、その広末涼子の濡れ場シーン!!
ちょっと引いたかも…。
お腹いっぱい。
あと、なんかヘンだよ、その頭。
戦後のパーマネントってあんなだったの?
最後まで違和感ありありだった。
谷川署。
網越しで、
「心中された女房は、いったいどうしたらいいの?」
という佐知の問いかけに、
「勝手なようだが、今は責めないでくれないか」
という大谷。
なんて勝手なのだろうか。
でもそんな大谷をも見捨てられない佐知。
愛って不思議だ。
恋愛を現役引退している私にはよく分からないのだが、愛が深いと嫉妬という感情も起こらないのだろうか。
最後、道端で桜桃を食べるこの夫婦。
種とか飛ばしあっちゃってる。
奇異なんだが、とても素敵なシーンだった。
ハッピーエンドでもなさそうなんだが、かといって暗くない。
春の日にたまにある薄曇の日っていう感じの終わり方だった。
愛よりも恋よりもはやく
あなたに出逢ったいたずらが
私のすべてを変えてゆく
二人おちてゆく…
男女の愛を考えるとき、決まって私の脳内に流れる歌。
今宵、映画館から駅に向かう途中、この歌を口ずさまずにはいられなかった。
ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~(予告) 松たか子 浅野忠信 妻夫木聡