だいぶ遅咲きで本を読む楽しさをおぼえてから、いつの
間にか時代小説を率先して読むようになったのですが、
藤沢周平さんの作品は「なんか暗い」という先入観とい
うか偏見があったので、今にして思えば「読まず嫌い」
だったと思うのが「海鳴り」「蝉しぐれ」を読んで、暗
いというのは「味わい深い」のだな、若いうちにはこの
深さは判らんだろうなあと思ったものですが、今回読ん
だ作品の解説に「藤沢周平の初期は暗い一方の作風」と
あって「はぁ」となりました。
さて、この作品は短編集で、主人公の共通点は「剣士」。
といっても、門弟を百や二百を抱える道場主や不敗を誇
る達人といった人ではなく、強いがゆえに、秘伝の技を
知ってるがゆえに無益な争いに巻き込まれてしまう、と
いったもの。
「剣客商売」でも「好むと好まざるにかかわらず」相手
の申し出を受けなければならない、そんな世界を描いて
いますが、現代の平和な日常にいる身からすると「まあ
大変だったんだろうなあ」とのん気な感想。
藩内に新しくできた道場からたびたび試合の申し出があ
りますが断り続ける絃之助。ところがある夜に雰囲気で
関係を持ってしまった女性がじつはその道場主の女房だ
と・・・という「邪剣竜尾返し」。
極端な怖がりで妻からも馬鹿にされているような侍が、
あることから藩の若殿の身辺警護を任され・・・という
「臆病剣松風」。
藩のゴタゴタに巻き込まれて父が暗殺された志野。と
ころが、自分の許嫁が父が殺された夜に非番で近くに
いたらしいというのですが、もしや許嫁が藩に伝わる
代々隠密を請け負う家なのでは・・・という「暗殺剣
虎ノ眼」。
悪政の根源とされる殿の愛妾を斬ってしまった藩士の
三左エ門。が、沙汰は想像以上に軽く、数年後には元
の家禄に戻ります。近習頭取という殿の傍仕えとい
う役に就いたのですが、殿は「お前の顔など見たくも
ない」と・・・という「必死剣鳥刺し」。
同僚を斬って牢獄にいた狭間が脱走し、かつて同じ
剣道場で修業した宗蔵に狭間を捕まえてこいとの命
令が。ふたりの実力は拮抗していたのですが、師匠
は宗蔵に秘伝を教え、それから狭間は師匠と宗蔵に
恨みを抱くように・・・という「隠し剣鬼ノ爪」。
近ごろ結婚した同僚の奥さんが美人だったので、そ
の妹もさざかし美人だろうと思って結婚してみたら
十人並みで、ふてくされて夜遊びの毎日な俊之助。
藩内で不明瞭な金の流れがあって、その内偵に抜擢
される俊之助ですが、とうとう相手の尻尾を掴みか
けたらバレてあろうことか決闘を申し込まれます。
ところがそれを知った俊之助の妻の邦江が「夫では
なく自分と勝負を」と・・・という「女人剣さざ波」。
兄が亡くなって、あろうことか夜な夜な義弟の寝室に
来る義姉。義弟には許嫁がいるのですが、義姉は「喪
に服している」といって実家に戻ろうとせず、義弟は
誘いを拒み切れません。が、そのうち「あいつは義姉
と・・・」などという噂が広まって・・・という「悲
運剣芦刈り」。
家督を息子に譲って隠居した小関十太夫。が、息子
が果し合いに敗れます。果し合いの相手というのが、
十太夫と長年のライバル関係の伊部帯刀の倅。
おそらく相手も生きてはいまいと思った十太夫でした
が、伊部の倅は死んでいません。聞けば相手は助太刀
を呼んでいたという卑怯な振る舞いで、これに怒った
十太夫は帯刀の家に乗り込み・・・という「宿命剣鬼
走り」。
どれもあらすじを書いただけでは「暗い、じつに暗い」
と思われるでしょうが、中にはラストに暗い隙間から
一筋の光が見えてくる作品もあります。
間にか時代小説を率先して読むようになったのですが、
藤沢周平さんの作品は「なんか暗い」という先入観とい
うか偏見があったので、今にして思えば「読まず嫌い」
だったと思うのが「海鳴り」「蝉しぐれ」を読んで、暗
いというのは「味わい深い」のだな、若いうちにはこの
深さは判らんだろうなあと思ったものですが、今回読ん
だ作品の解説に「藤沢周平の初期は暗い一方の作風」と
あって「はぁ」となりました。
さて、この作品は短編集で、主人公の共通点は「剣士」。
といっても、門弟を百や二百を抱える道場主や不敗を誇
る達人といった人ではなく、強いがゆえに、秘伝の技を
知ってるがゆえに無益な争いに巻き込まれてしまう、と
いったもの。
「剣客商売」でも「好むと好まざるにかかわらず」相手
の申し出を受けなければならない、そんな世界を描いて
いますが、現代の平和な日常にいる身からすると「まあ
大変だったんだろうなあ」とのん気な感想。
藩内に新しくできた道場からたびたび試合の申し出があ
りますが断り続ける絃之助。ところがある夜に雰囲気で
関係を持ってしまった女性がじつはその道場主の女房だ
と・・・という「邪剣竜尾返し」。
極端な怖がりで妻からも馬鹿にされているような侍が、
あることから藩の若殿の身辺警護を任され・・・という
「臆病剣松風」。
藩のゴタゴタに巻き込まれて父が暗殺された志野。と
ころが、自分の許嫁が父が殺された夜に非番で近くに
いたらしいというのですが、もしや許嫁が藩に伝わる
代々隠密を請け負う家なのでは・・・という「暗殺剣
虎ノ眼」。
悪政の根源とされる殿の愛妾を斬ってしまった藩士の
三左エ門。が、沙汰は想像以上に軽く、数年後には元
の家禄に戻ります。近習頭取という殿の傍仕えとい
う役に就いたのですが、殿は「お前の顔など見たくも
ない」と・・・という「必死剣鳥刺し」。
同僚を斬って牢獄にいた狭間が脱走し、かつて同じ
剣道場で修業した宗蔵に狭間を捕まえてこいとの命
令が。ふたりの実力は拮抗していたのですが、師匠
は宗蔵に秘伝を教え、それから狭間は師匠と宗蔵に
恨みを抱くように・・・という「隠し剣鬼ノ爪」。
近ごろ結婚した同僚の奥さんが美人だったので、そ
の妹もさざかし美人だろうと思って結婚してみたら
十人並みで、ふてくされて夜遊びの毎日な俊之助。
藩内で不明瞭な金の流れがあって、その内偵に抜擢
される俊之助ですが、とうとう相手の尻尾を掴みか
けたらバレてあろうことか決闘を申し込まれます。
ところがそれを知った俊之助の妻の邦江が「夫では
なく自分と勝負を」と・・・という「女人剣さざ波」。
兄が亡くなって、あろうことか夜な夜な義弟の寝室に
来る義姉。義弟には許嫁がいるのですが、義姉は「喪
に服している」といって実家に戻ろうとせず、義弟は
誘いを拒み切れません。が、そのうち「あいつは義姉
と・・・」などという噂が広まって・・・という「悲
運剣芦刈り」。
家督を息子に譲って隠居した小関十太夫。が、息子
が果し合いに敗れます。果し合いの相手というのが、
十太夫と長年のライバル関係の伊部帯刀の倅。
おそらく相手も生きてはいまいと思った十太夫でした
が、伊部の倅は死んでいません。聞けば相手は助太刀
を呼んでいたという卑怯な振る舞いで、これに怒った
十太夫は帯刀の家に乗り込み・・・という「宿命剣鬼
走り」。
どれもあらすじを書いただけでは「暗い、じつに暗い」
と思われるでしょうが、中にはラストに暗い隙間から
一筋の光が見えてくる作品もあります。