晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

ケイト・モートン 『リヴァトン館』

2013-06-06 | 海外作家 マ

ここ最近、本を買うといえばもっぱら文庫で、移動の途中や寝ながら
読んでたのですが、久しぶりにガッツリぶ厚いハードカバーを読んで、
軽く疲れました。

この『リヴァトン館』という作品は、2006年に作者の母国オーストラリア
で発売されてベストセラーに、翌年イギリスでもベストセラーとなり、
なんと2008年には図書館貸し出しランキングでハリー・ポッターに次いで
2位だったそうです。

ちなみに内容はというと、ハリー・ポッターのようなファンタジーではなく、
けっこう正統派なサスペンス。

老人介護施設に入所している98歳のおばあさん、グレイス。彼女のもとに、
手紙が届きます。送り主はアメリカの映画監督のアーシュラ・ライアン。
グレースがかつて女中として働いていたロンドン郊外のアシュベリー卿の
住む「リヴァトン館」で起こった悲劇を映画化したい、というもの。

その”悲劇”の生き証人はグレイスただ一人。しかし、もう思い出したく
はない、あの出来事は墓に持っていく、と誓っていたのですが、ふと気が
変わり、アーシュラに会うことに。

グレイスは、娘のルースの付き添いで、映画スタジオへ向かいます。そこ
には、「リヴァトン館」のセットが組まれています。
そこで、アーシュラは、映画の主要キャストであるアシュベリー卿の2人の
娘、ハンナとエメリンについて聞きますが、話している途中にグレイスは気分
が悪くなり、帰ります。ルースは、そもそも母が外出することに反対していて、
だからいわんこっちゃない、と連れてきたことを後悔します。
が、グレイスはというと、心は過去に戻っていたのでした・・・

グレイスの孫で作家のマーカス(ルースの息子)は、妻を亡くして傷心の旅
に出かけています。たまに絵葉書がとどく程度でどこにいるか分かりません。
グレイスは1924年に起きた悲劇までの経緯を回想し、語りながら録音しはじめ
ます。
そしてそのテープを、届くかどうかわからりませんがマーカスに送ろうと決めます。

1914年、グレイスは14歳でリヴァトン館のメイドとして働きはじめます。
じつは、グレイスの生まれる前、母親がリヴァトン館で女中をしていて、
当主の妻、レディ・ヴァイオレットから「お母さんは元気?」と聞かれ、
執事のハミルトンやコック長のタウンゼンド、そしてメイドの先輩ナンシー
も母のことをよく知っています。
どうやら、母を知る人たちはみんな母を優秀なメイドだったと褒めますが、
では、子育てをしながらでもメイドは務まるのに、なぜ母は妊娠したから
といって暇を出されたのか。このことはグレイスは聞いたことがありません。

リヴァトン館の住人は、当主のアシュベリー卿とその妻レディ・ヴァイオレット
のふたりだけですが、息子の長男ジョナサン少佐と次男フレデリックはそれぞれ
結婚して他所に家庭を持って暮らしていて、たまにリヴァトン館に帰ってきます。
次期当主のジョナサン少佐には子どもはおらず、フレデリックには息子デイヴィッド
、そしてハンナとエメリンの2人の娘がいます。

ハートフォード家は戦争の功績でアシュベリー卿の爵位をいただき、ジョナサンは
軍に入って少佐になりますが、フレデリックは事業で一旗あげようとしています。

さて、グレイスがメイドとなって最初の夏、ジョナサン夫婦とフレデリック一家が
リヴァトン館に来ます。
そうして、はじめてグレイスはハンナとエメリンに出会うのです。

ちょうどこの時代、ヨーロッパ大陸で戦争が勃発し、イギリスが参戦するかが話題
となっていて、ジョナサンはすぐにでも戦地に赴きたい様子。ですがフレデリック
は、戦闘機の生産工場を作る計画。

その冬、戦争はまだ続き、ジョナサンは戦地へ、そしてデイヴィッドもいつの間に
か軍に志願していたのです。
クリスマス休暇でフレデリックの3人の子どもたちがリヴァトン館に来たとき、デイヴィ
ッドは、友人のロビー・ハンターを連れてきます。
このハンターという男が、1924年に起きたリヴァトン館の悲劇の主人公その人です。

のちに第一次世界大戦と呼ばれる長い戦争はようやく終わりますが、ジョナサン少佐、
デイヴィッドは戦死してしまい、リヴァトン館の従僕は生きて帰ってきましたが重い
後遺症に苦しみます。
ジョナサンが亡くなったことでアシュベリー卿はフレデリックになりますが、事業は
苦しく、アメリカの銀行家の手を借りなければなりません。
その銀行家、シミオン・ラクストンの息子、テディと、ハンナがなんと結婚することに
なるのです・・・

グレイスはハンナとは”メイドとお嬢様”という関係以上に深くなり、やがてハンナの
専属の女中に。思えば、ハンナのためにいろいろ尽くしてきたからこそ、あの悲劇が
生まれてしまったのか・・・

真相は最後のほうで明らかになりますが、グレイスの回想の中でちょくちょく小出しに
伏線が忍ばせてあって、例えていうならジグソーパズルのような、完成系の絵ははじめに
分かっていて、はじめに外枠、それから風景だったり人物のピースが出来上がっていく、
そんな楽しみ。

読んでいる最中、20世紀前半のイギリスにタイムスリップしてしまったかのような
描写は素晴らしいですね。

コメント
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