晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

垣根涼介 『ヒートアイランド』

2012-01-06 | 日本人作家 か
垣根涼介の作品は、出版された順どおりに読んでるわけではなく、
本屋で見つけると手当たり次第に買っていく、といった状態。
まあつまりそれだけハズレの無いからこそ、なのですが、この
「信頼感」は、はじめに読んだ作品が面白かったかどうかが強く
影響してきますね。

それは「ワイルド・ソウル」だったのですが、もう度肝を抜かれ
ました。まだ書棚に並んでる数こそ少ないですが、きっとコンプ
リートすることでしょう。

『ヒートアイランド』は渋谷にたむろするストリートギャングを
束ねるアキとカオル。この2人の出会いは、カオルが街中で不良
たちに袋叩きにあってるところをアキが助けたとことから始まり、
ということでカオルはケンカの腕に自信があるわけではなく、雅
の中の頭脳的存在。一方アキは腕っぷしが強く負け知らず。

雅のアキとカオル以外の4人は、今でもそれぞれ渋谷でチームを
率いている猛者ですが、アキにケンカで負けて、おいしい商売の
話を持ちかけられて仲間入り。

そのおいしい商売とは、“パーティー”と称して腕自慢がエントリー
してトーナメント戦でファイトして、優勝者には賞金をあげるという
イベントで、定期的にバーを貸切にして行うのです。
そのほかにも「遠征」と称して、東京近郊でケンカの強そうなヤツに
大金を賭けて対戦を申し込むというもの。

そんな話と並行して、3人の男が、ヤクザの経営する闇カジノに
催眠ガスを仕込んで、ガスが店内に噴出したところで侵入、一億円
近くの金を盗み出します。
ホテルにふたたび集まった3人は盗んだ金を分配し、解散しようと
したときに中の1人「オヤジさん」と呼ばれる男が、もう高齢だし
抜けさせてくれと言います。残る2人も無理に引き止めることなく
素直に今までの貢献に感謝し、オヤジさんはタクシーで帰路へ。

その道中、ふと、車窓から一軒のバーが目に止まり、タクシーを
止めて、バーに寄ります。そこで若者が女性に絡んでいるところを
助けますが、帰り際、若者たちに待ち伏せされて殴り倒されて、
カバンを盗まれます。

ところが、そのカバンとは、カジノから盗んだ金の分配金3200
万円が入っていて、ふたりの若者は慌てふためきます。
で、この若者とは、じつは「雅」のアキとカオルの下につく4人の
うちのタケシとサトルだったのです。

金を強奪されたカジノを仕切っているヤクザは激怒、何が何でも
奪われた一億円を取り返そうと動き出します。
そして、オヤジさんが襲わたと聞いた仲間の2人も、奪われた金を
取り戻そうと動き出します。

アキとカオルは、夜中にボストンバッグに3千万円も持ってる男が
まっとうな職業であるはずはなく、その金もまともな稼ぎではない
ということで、なんとか持ち主(つまりオヤジさん)に返して、厄介
なトラブルに巻き込まれることを避けようとしますが・・・

背景の描写、流れるようなスピード感、どれをとっても素晴らしい
ですね。しかも、ストリートの不良とヤクザと殺しも厭わない窃盗団
が絡んできてノワール系になると思いきや、読了後の印象はサッパリ
としています。

こういったアウトロー的な若者を描く作品に共通するのは、彼らの名前
をカタカナで表記するというもの。ここに社会との繋がりの希薄さも
表れているのでしょうが、退廃的で刹那的な彼らの関係性の脆さのよう
なものも含まれているのでしょう。



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