晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

葉室麟 『秋月記』

2017-11-03 | 日本人作家 は
時代小説、歴史小説では、史実にせよ創作にせよ「御家騒動」
がよく出てきます。もちろん現代でも会社内ですとか政治の
世界でも派閥抗争なんてのがありますから、もうこれは人間
の本質といいますか、やめられないんでしょうね。

『秋月記』の作品舞台となっている九州筑前の秋月藩は実在
した藩。ですが、正式には(福岡藩の支藩)という状態。
場所は洪水被害のあった朝倉市のあたり。被害の大きかった
川かはわかりませんが、文中では川に木造ではなく石の橋を
作るという話が出てきます。

が、石の橋を作るなんて予算は秋月藩にはありません。じつ
は借金まみれ。ところが宮崎織部という家老は「前藩主の夢」
だとかいって石橋の建設を進めます。

現藩主も宮崎のいいなり、周りにはイエスマンしかいない、
もうやりたい放題。

間小四郎という軽輩の若侍は、幼いころは犬に吠えられたら
身動きがとれなくなるような臆病者でしたが、ある(事件)
をきっかけに「強くならねば」と決心します。
道場で修業し剣の腕も上達し、学問も優秀だったので小四郎
は江戸に行くことに。

帰国した小四郎は、藩内が変な雰囲気になっているのを訝し
く思います。本藩(福岡藩)から来た姫野という宮崎家老
お気に入りの家臣が、ゴタゴタの張本人らしいのです。

石橋工事の失敗で、藩内の小四郎ら若侍たちは、直訴して
宮崎家老を辞めさそうとしますが、その話し合いをしてい
るときに、件の姫野が訪ねてきたのです。
なんと、姫野は秋月の藩主に直訴してもしょうがないから
自分の口利きで本藩に直訴してはどうか、と提案します。

小四郎は、福岡藩の中老に姫野の書状を渡すと、家老から
藩主に話が伝わり、宮崎織部らは失職します。が、じつは
これは本藩の巧妙な作戦で、秋月藩は独立行政のあった
支藩から本藩に乗っ取られたかたちに。

小四郎ら宮崎織部一派追い出しの功労者は出世しますが、
なにやらスッキリとしません。そのうち「もしかしたら
宮崎家老は悪くなかったのかも」と思うようになり、
蟄居している織部に会いに行きます。そこで小四郎は
織部から「やっと気づいたか、馬鹿め」と言われ、姫野
の正体も教えられるのです・・・

結局、本藩にいいように使われて自分たちの藩の乗っ取り
を手助けしてしまった小四郎たち。ですが宮崎家老に代わ
って今度は自分らが秋月藩を取り戻さなければなりません。
小四郎は、悪者の役目は自分が被る覚悟で動きますが、
やがてかつての仲間たちは離れていき・・・

そういえば「蜩ノ記」の寸評で「登場人物がみんないい人」
みたいのがありましたけど、このささくれ立った世の中で、
そういう作品があっても別にいいですよね。

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