晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

山本一力 『道三堀のさくら』

2017-03-24 | 日本人作家 や
タイトルの「道三堀」とは、今の東京駅丸の内中央口
から皇居方面に向かいますと国道1号線、日比谷通り
にぶつかります。その交差点が「和田倉門」といいま
して、和田倉門から大手町を横切って日本橋川に合流
するあたりの「呉服橋」まで、距離的にはさほど長く
ない運河なのですが、この運河、江戸幕府が開かれる
前、つまり家康が江戸城に入城してすぐに掘られた、
江戸の中でも初期のお堀なのです。

家康の入城当時の地形に関係がありまして、現在の
日比谷あたりは「日比谷入江」といいまして、つまり
ガッツリ海でして、日比谷公園や霞が関から内堀通り
の向こう側は今の皇居ですから、つまり江戸城は今風
に言えば「ベイエリア」だったわけですね。
昔は海から船でそのまま城まで物資の運搬ができた
わけですが、この水路を掘った表向きは「行徳(千葉県
市川市)の塩を城に運ぶ水路のため」でしたが、実際は
攻め込まれたときに、日比谷入江を敵軍に封鎖される
と困るわけでして、その迂回路の役割で、江戸城のお堀
から大川(隅田川)の河口に出られる水路を掘ったんですね。

というのも、まだ家康は豊臣秀吉の部下の一人だった
わけでして、いつなんどき攻められるか分からなかった
のですね。

その後、日比谷は埋め立てられて、江戸湾から船で御城の
内堀まで行ける水路のうちの一本となります。

さて、ここからがこの本のストーリーとなりますが、
主人公の龍太郎の仕事は「水売り」です。
大川の東、本所深川エリアは埋立地で、井戸を掘っても
海水しか出ず、住民は真水を買っていたのですが、
その真水を運搬するのが「水売り」。

江戸の水は「神田上水」と「玉川上水」がありまして、
江戸中にこの上水道が張り巡らされて、その余った水
の排水口が、道三堀にかかる「銭瓶橋」にあり、この
水を船に積んだ樽に入れて、運ぶわけですね。

で、水を桶に移してそれを天秤棒で担いでお得意先を
まわったりするのですが、その水の重さが50キロ超と
いいますから、かなりヘビーな肉体労働です。
そのかわり給金は当時の町人でもトップクラス。

ある利権を巡って、龍太郎の所属する組合とよその
組合とで争いごとが起こったりします。

そんな中、龍太郎は、水売りの得意先のひとつ、深川
の蕎麦屋「しのだ」の娘おあきと恋仲。
ある日、日本橋の鰹節問屋の番頭が「しのだ」に来て、
深川に蕎麦屋を新規オープンしますんでよろしくと
挨拶に。

その蕎麦屋、間口が通常の三軒分もあり、客席数も
多く、日本橋の老舗鰹節問屋が経営するということ
で深川界隈の蕎麦屋は戦々恐々。

ところが、いろいろありまして、鰹節問屋は蕎麦屋
の経営を断念します。
そこで、予定地だった店に、浄水場を作る計画を
立てます。龍太郎もアドバイザーとして協力します。
が、このことでおあきと龍太郎はすれ違うことに・・・

あれは何年前だったでしょうかね、飲み水をペット
ボトルで売るということが当時けっこうなニュース
になったような記憶があります。
「こんな水が豊富な日本でヨーロッパの真似せんでも」
みたいな感じで。

江戸時代の下町では普通に水を買ってたというのが
面白いですね。



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