晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

ケイト・モートン 『秘密』

2022-10-22 | 海外作家 マ

悲しい知らせ。毎年秋のお楽しみ、千葉県の一部で栽培されてる希少品種の「紅小町(べにこまち)」というサツマイモがありまして、例年ですと9月の下旬には道の駅で販売開始になるのですが、今年は生育不良で収穫がなんと11月になるんだそうな。

なんだか今年の生サンマも細長くて食べるのが可哀想になるくらい。異常気象ですかね。まあ秋の果物系は普通に出回ってますけどね。

以上、地球の気候変動に警鐘を鳴らす。

さて、ケイト・モートン。オーストラリアの作家で、デビュー作「リヴァトン館」が大ヒット、今までの作品は全世界40カ国以上で出版され累計発行部数は1000万部を超えてるそうです。この作品はオーストラリアのなんとかという文学賞を受賞。この前の作品の「忘れられた花園」、そしてこの『秘密』は日本の翻訳ミステリー大賞と翻訳ミステリー読者賞を受賞されています。

 

1961年、イングランド東部のサフォークにある農家。私道のはずれにあるポツンと一軒家「グリーンエイカーズ」敷地内にあるツリーハウスに、ニコルソン家の長女、ローレルが寝ています。そこにある男が家に近づいてきます。この男にローレルは気づきますが、どうみても百科事典かなにかのセールスマン。家の中にいた母が玄関のドアを開けると、母はとっさにそばにいたローレルの弟を背後に投げるように置きます。するとその男は「やあ、ドロシー、久しぶりだね」と母の名前を呼びます。すると母はケーキを切ろうと手に持っていたナイフで男を刺します。その一部始終をローレルはツリーハウスから見ていて・・・

話は2011年。女優になったローレルはある病院にいます。そこに妹のローズが来ます。もうふたりの妹アイリスとダフネ、弟のジュリーはまだ来ていません。ローズから母の様態がだいぶ悪くなったことを聞かされ、ベッド脇に座ったローレルは置いてあったアルバムを見ていると、一枚の写真がはらりと落ちます。ローズに聞くと、家の掃除をしていたらたまたま出てきたそうで、若い女性がふたり写ってます。なんでも芝居の台本に挟まっていたそうで、これを聞いたローレルは母が若い頃に芝居をやっていたことに驚きます。その台本には「真の友は闇を照らす一条の光、ヴィヴィアン」と書いてあったとローズが言います。その名前を耳にしたローレルは脳裏によぎり「ヴィヴィアンって誰なの?」と聞いたところでアイリスが入ってきます。じつはその時、眠っていたと思っていた母がはっと息を呑んで苦しい表情をしたのを3人の娘たちは見ていませんでした。

1961年、母が男を刺して男が動かなくなり、警察が来ますが、母はショック状態からか何も答えません。そこにローレルが「私、あの男を見ました」と言い、男が弟につかみかかろうとしたところを母と揉み合いになったと説明しますが、男が母の名前を口にしたことは言うのを忘れていました。男はピクニック場荒らしの容疑者と外見も年齢も似ていたのでおそらくそいつだろうということで、新聞にはピクニック場荒らしのホームレスがニコルソンの家を襲って正当防衛で刺されて死んだことになっていました。その後、ローレルは俳優養成学校のオーディションに合格し、ロンドンへ旅立ちます。

再び2011年。姉妹たちが実家に帰り、食事をして話をしていると、ローレルは頭が痛いといって先に休ませてもらいます。ローレルは物置に入ってトランクを開けます。そこには1961年の母が刺した男のことが書かれた新聞記事の切り抜きが入っていて、その記事の後半部分に「ジェンキンズは1938年ヴィヴィアン・ロングマイアと結婚したが、1941年、ノッティングヒル大空襲でヴィヴィアン・ジェンキンズは死亡」とあり、病室でヴィヴィアンの名前を聞いたときに脳裏をよぎったのはこれと思い出します。しかしこのヴィヴィアンと母の知り合いと思われるヴィヴィアンは別人の可能性も。

そして話は1938年、ドロシー・スミザムが一家で海へ旅行に行ったときに、青年カメラマンのジミーと出会います。ふたりは恋仲となりますが、ジミーは仕事でロンドンに行くことが決まります。

さて、1961年に死んだジェンキンズは名前をヘンリーといい、小説家でした。母ドロシーはジェンキンズときっと親密な間柄でふたりの間に何かがあってドロシーは彼のもとから消えてずっと探し求めていたのだろうとローレルは考えますが、その証拠はありません。

ここで話は1940年のロンドン。ドロシーはジミーを追ってロンドンへやって来て、お屋敷で気難しい老婦人の世話係をして暮らしています。ジミーは戦場カメラマンとしてロンドンには不在。ドロシーは向かいの家に住む同い年くらいのものすごい美人を気にかけています。向かいの家の主人は作家のヘンリー・ジェンキンズで、美人の女性は彼の妻でヴィヴィアン。ドロシーはどうにかしてヴィヴィアンと知り合いになりたくて、彼女が国防婦人会の活動に参加していることを知ります。

2011年。ローレルは母の病院にお見舞いに。いくらか元気な母に戦争中はなにをしてたか尋ねると「国防婦人会のメンバーだったのよ」と答えます。これはローレルは初めて聞きます。そして例の写真を見せて「お母さんといっしょにいるのはお友達?」と聞くと「ヴィヴィアンは戦争中に死んだの」と答えます。すると母は「大変なことをしてしまった」とつぶやきます。ローレルはそれであの男が来たのかと思いますが、何をしたのか聞こうとしたら看護師が入ってきます。

はたして、ローレルの母ドロシーは戦時中のロンドンでヘンリーとヴィヴィアンのジェンキンズ夫妻となにはあったのか。ヘンリーから身を隠すようになった出来事とは。

時代が現代(2011年)と過去(1940、41年)と交錯し、ローレルがいろいろ調べて、戦時中のロンドンで起きた出来事が明るみになっていって、そして実は・・・というところで驚いてなぜか涙があふれてきてしまいました。ミステリーというにはちょっと弱い気もしますが、まあ「謎解き」という部分では広義の意味でミステリーではあるでしょう。

個人的に今まで読んだ海外の作品でベスト5に入ります。

コメント
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