晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

宇江佐真理 『無事、これ名馬』

2015-09-12 | 日本人作家 あ
宇江佐真理の初めて読んだ作品は短編で、それから長編も
読むようになったのですが、「短編の名手」と評価の高い
作家の作品は、まあ長編も面白いわけで、逆に「短編は
面白いけど長編はちょっと」なんていう作品にはいまだ
お目にかかったことはありません。

さて、そんなわけで、この作品は長編です。

江戸町火消「は組」の頭、吉蔵の家に、侍の子供が
訪ねてきます。
その子、村椿太郎左衛門は突然、吉蔵に「弟子にして
ください」と言うではありませんか。

吉蔵にはお栄という一人娘がいて、その連れ合いは
由五郎、これもまた火消し。
お栄には好き合ってた男がいたのですが、その相手は
吉蔵の甥、つまりお栄の従兄にあたる金次郎。

金次郎もまた火消しで、金次郎の父、吉蔵の姉の夫
つまり義兄、金八も火消し。

吉蔵はお栄と金次郎が一緒になることに反対し、
無理やり別れさせます。いとこ同士だからというのも
ありましたが、金次郎は別の娘とのあいだに子どもが
できたのです。

そういうわけで、金次郎は火消しのことで吉蔵の家に
ちょくちょく来るのですが、お栄はまだ金次郎のことが
心に引っかかってます。金次郎もそんなお栄の心を
知ってか知らずか思わせぶりなことを言ったりします。

さて、吉蔵に弟子入り志願してきた太郎左衛門ですが、
相変わらず泣き虫は直りません。
そこで、太郎左衛門の道場で紅白試合があり、見に来て
ほしいと吉蔵に頼むのですが・・・

はたして太郎左衛門は立派に生まれ変わることができるのか。

吉蔵をはじめとした火消しの矜持もまたかっこいいですね。
この当時の消火方法は、火元の家の隣の家を急いでぶっ壊して
燃え拡がるのを防ぐ、というもの。
町屋はすべてが木造住宅だったので、晴れの日が続いて乾燥
して、風の強い日だと、あっという間に燃え拡がってしまいます。
「明暦の大火」などは江戸じゅうを焼き尽くしてしまうほどでした。

しかも、料理の煮炊き、夜の灯りはすべて火だったわけですから、
ちょっとした不始末でたちまち火事で、じっさいに暮らしてた人たち
からすれば「江戸の華」なんて呑気なもんじゃなかったですよね。



コメント
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